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「そうなの?」
レーシーはいつもの顔を忘れてしまったようなロクの顔を茶化すわけにもいかずに念押しで問いかける。
「……」
ロクは黙ったまま何にも言わずにじっと貝になりましたとばかりに目を伏せている。
好きなら好きと早くいってくれればよかったのに。どうしてそうまでして私への好意を隠すのかよくわからない。
ロクが黙っているところを見ると、クララの付いたその場ごまかしの嘘というわけではなさそうだし……
「黙秘?」
クララがきゃはきゃは笑っている。
その笑い声を聞くとレーシーは昔昔のクララと一緒になってえげつないことをやっていた記憶がよみがえってくる。
燃え盛る森の赤いほのおの揺らめきときゃらきゃら笑うクララの楽しそうな声はもはやセットだ。
柵の内側でかわいそうにぶひぶひ逃げ惑う豚と羊と、それを追いかけて楽しそうに一匹ずつ息の根を止めていく小さな少女二人の素敵な笑顔と血にまみれ薄汚れたワンピース。二人とも赤茶色に変色した服に頓着しない。
しかし腐敗した生き物の臭いはかなり不愉快だった。周りの森に棲んでいる獰猛な生き物たちも血の臭いと死体の臭いに寄ってきてしまう。
するとどうするのが一番早い解決法か?
完全に黒歴史である。
まぁ昔は好奇心が旺盛だったし?
あまり人間とかかわってこなかったせいで、ちょーっとばかし人間離れした思想を持っていただけであって。ちゃんと大人になって魔女として一人前になるころには人間に対する考えかたも学んで落ち着きを持った生活をしている。が、恋愛方向に対しレーシーの考えは少しまだ変わっているといえる。
「うーん、じゃぁその件については心臓の件が片付いてから話をすることにするわ」
「え!?」
いろいろと追及されると思っていたのか、レーシーの言葉にロクが驚いた声を上げた。
「えー? 今じゃなくていいのぉ?」
クララはロクが困っているのを見たいだけだろう。
その顔はもう淑女然とした仮面を取り払って、意地の悪いにやにや笑いを浮かべている。
「いろいろ詰めたいところもあるし」
レーシーは後で話したいことリストをささっと頭の中で思い浮かべる。魔女にとって恋愛も契約、きちんと話を詰めてから始めたいのだ。
「うん、だからロク、話はあとでね」
レーシーはにっこりと満面の笑みを浮かべてロクに微笑みかけた。
「どういうことだよ!?」
好きな女の美しいまでの完ぺきな笑みに見ほれつつもその内容がちょっとばかし想像と違っていたためロクは顔を赤らめながらも話を聞こうと試みた。
「だって、今は心臓をどうするか、っていう建設的な議論がしたいっていうか……好きとか好きじゃないとかいう話はあとでいいじゃない。私とロクのことなんだし……時間なんかいくらでもあるじゃない」
それこそレーシーとロクはまだまだ魔女としてひよっこ。これから目のくらむような長い生が残っている。
ちら、とロクを見ればもう顔の赤面は収まっている。
いつもの何を考えているのかよくわからないロクに戻っている。
「……未来視では物事が起こる時期なんかはわからないんだったよな?」
ロクはレーシーの「好きについての詰め」に関しては考えないことにしたらしい。
クララが昔、というからにはかなり昔からロクはレーシーのことが好きだったらしいしもう少しぐらい話し合いの時期がずれても支障なさそうだ。
「そう、だからまぁこの先のいつか、って感じで大雑把なのが余計にうっとうしいの」
ッチと舌打ちを決めたクララが「未来視ってほーんと役に立たないクソ魔法」と言って自分の魔法をあしざまに罵っている。
「あーそのことなんだけど、俺にちょっと考えがある」
「考え?」
「ふぅん、いいわよ、聞かせてみなさいよ」
特に妙案を思いついていたわけでもないレーシーとクララは、ロクの言う考えに乗ることにした。
レーシーはいつもの顔を忘れてしまったようなロクの顔を茶化すわけにもいかずに念押しで問いかける。
「……」
ロクは黙ったまま何にも言わずにじっと貝になりましたとばかりに目を伏せている。
好きなら好きと早くいってくれればよかったのに。どうしてそうまでして私への好意を隠すのかよくわからない。
ロクが黙っているところを見ると、クララの付いたその場ごまかしの嘘というわけではなさそうだし……
「黙秘?」
クララがきゃはきゃは笑っている。
その笑い声を聞くとレーシーは昔昔のクララと一緒になってえげつないことをやっていた記憶がよみがえってくる。
燃え盛る森の赤いほのおの揺らめきときゃらきゃら笑うクララの楽しそうな声はもはやセットだ。
柵の内側でかわいそうにぶひぶひ逃げ惑う豚と羊と、それを追いかけて楽しそうに一匹ずつ息の根を止めていく小さな少女二人の素敵な笑顔と血にまみれ薄汚れたワンピース。二人とも赤茶色に変色した服に頓着しない。
しかし腐敗した生き物の臭いはかなり不愉快だった。周りの森に棲んでいる獰猛な生き物たちも血の臭いと死体の臭いに寄ってきてしまう。
するとどうするのが一番早い解決法か?
完全に黒歴史である。
まぁ昔は好奇心が旺盛だったし?
あまり人間とかかわってこなかったせいで、ちょーっとばかし人間離れした思想を持っていただけであって。ちゃんと大人になって魔女として一人前になるころには人間に対する考えかたも学んで落ち着きを持った生活をしている。が、恋愛方向に対しレーシーの考えは少しまだ変わっているといえる。
「うーん、じゃぁその件については心臓の件が片付いてから話をすることにするわ」
「え!?」
いろいろと追及されると思っていたのか、レーシーの言葉にロクが驚いた声を上げた。
「えー? 今じゃなくていいのぉ?」
クララはロクが困っているのを見たいだけだろう。
その顔はもう淑女然とした仮面を取り払って、意地の悪いにやにや笑いを浮かべている。
「いろいろ詰めたいところもあるし」
レーシーは後で話したいことリストをささっと頭の中で思い浮かべる。魔女にとって恋愛も契約、きちんと話を詰めてから始めたいのだ。
「うん、だからロク、話はあとでね」
レーシーはにっこりと満面の笑みを浮かべてロクに微笑みかけた。
「どういうことだよ!?」
好きな女の美しいまでの完ぺきな笑みに見ほれつつもその内容がちょっとばかし想像と違っていたためロクは顔を赤らめながらも話を聞こうと試みた。
「だって、今は心臓をどうするか、っていう建設的な議論がしたいっていうか……好きとか好きじゃないとかいう話はあとでいいじゃない。私とロクのことなんだし……時間なんかいくらでもあるじゃない」
それこそレーシーとロクはまだまだ魔女としてひよっこ。これから目のくらむような長い生が残っている。
ちら、とロクを見ればもう顔の赤面は収まっている。
いつもの何を考えているのかよくわからないロクに戻っている。
「……未来視では物事が起こる時期なんかはわからないんだったよな?」
ロクはレーシーの「好きについての詰め」に関しては考えないことにしたらしい。
クララが昔、というからにはかなり昔からロクはレーシーのことが好きだったらしいしもう少しぐらい話し合いの時期がずれても支障なさそうだ。
「そう、だからまぁこの先のいつか、って感じで大雑把なのが余計にうっとうしいの」
ッチと舌打ちを決めたクララが「未来視ってほーんと役に立たないクソ魔法」と言って自分の魔法をあしざまに罵っている。
「あーそのことなんだけど、俺にちょっと考えがある」
「考え?」
「ふぅん、いいわよ、聞かせてみなさいよ」
特に妙案を思いついていたわけでもないレーシーとクララは、ロクの言う考えに乗ることにした。
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