【完結】地獄の釜は閉めたまま

染西 乱

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15.エピローグ2

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「なんや、急に……」

美知子は怪訝そうに孝之介を眺め見ている。
身長に差があるため、美知子の首は上向きに反らされている。

「いや、そんなに言うんやったら好きな男おるんちゃうかと思って」

なーんて、いってみたものの、孝之介の目から見て、美知子が誰かに仮想していたということはない。
他の女がやるように、誰かを目で追ったりだとかやたらと特定の男の名前がやたらと話題に上ると言うこともなかった。孝之介の道場に在籍している一番のモテ男にも特になんの感情も抱いていなかった。むしろモテるからってなんか気取ってる感じがイヤだ、とまで言っていた。

美知子の一番の遊び相手はいつも自分である。

「あー、そやな、おった。おったけど、どう見ても脈なしやからな諦めんねん」

孝之介は予想外の美知子の答えを聞いて一瞬意味が理解できなかった。

なんや、好きなやつおったんかぃ! 
孝之介は衝撃を受けた。

1番近くにいたと言うのにまったく気づいていなかった自分の観察眼のなさに呆れる。
なんだよ、好きな男が、いるのか。

いや、いたのか。

諦めないといけないような男だったのか。

おっさんはイヤ、と言っていたため、孝之介は平野郷の中で年齢の近い男を思い浮かべる。

その中で美知子と接点がありそうな男といえば…

「え、おっ、あー、……まぁ、小太郎は昔から真依ねぇのことしか見えてへんから仕方ないわ」

小太郎は孝之介の二つ年上の男だ。
今は確か、髪結の見習いを始めたとか言う話を聞いた。なぜ急に髪結に興味を待ったのは知らないが、なにもせずにぷらぷらとしているよりは幾分かマシだろう。

「違うわ。なんで色ボケの小太郎なんかを好きになんねん」

色ボケと言われているが、小太郎は小さい頃から、姉ある真依のことが大好きで大好きでたまらず、四六時中麻衣の話をしている。
一歩間違えば怖いやつなのだ。

違うと言われてあぁよかった、と孝之介はほっとする。

「ほな、弥彦か?」

「弥彦ぉ? 弥彦は商売女んところに通ってるらしいな。身請けするとかなんとかあほみたいなこと言うて博打で失敗してえらいことになってるらしいやん」弥。好きになるわけないやろ。地に足ついてない夢みがち男なんかほんまに嫌やわ」 

噂というのはかくも的確なものなのか。
弥彦はうちの道場にも金を貸してくれ、と頭を下げに来ていたので確かな話だ。

美知子はげろーとか言いながらバッサリと孝之介の言葉を否定してくる。

結婚する前から商売女に入れ上げてるのはさすがにナシか……
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