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予告されてもタダでは起きない

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自身の家の持つ財産の出所を知らないものは一定数いる。一子相伝を重んじていたり、口伝でしかそれを伝えてこなかったものが不慮の事故によりそれを不可能にしてしまった例がわかりやすいだろう。
ミレイユの場合もそうである。

その日突如として怪盗聖女からの予告状が届いた。

………………………………………………………………………
 ミレイユ・カオーサ様
 
 現在あなた様所有となっている、
《紫宝の首飾り》は、神の供物。
一時的に神からお借りしたに過ぎぬこと、
 お忘れでしょうか?
 返却期限はとうに過ぎております。
 つきましては、来たる7日後×月××日
《紫宝の首飾り》を返していただくことといたします。

 くれぐれも無駄な抵抗はせぬ様に。

 
 神の御使《怪盗聖女》より
………………………………………………………………………

青天の霹靂である。
 
ミレイユは、やけに達筆な予告状を凝視し、何度も読み返す。そうして、ようやくその予告状から顔を上げる。
その顔色は血の気を失い真っ白に近い。

「こんなの聞いてなかったんですけど……」

もはや、ミレイユには苦難の道しか残されていない。



貴族制が廃止されてまだ数年しか経っていない。元より貴族には両地経営しているものや国の政治にかかわるものが多く、依然として社会的地位は高い。
ミレイユの父が交通事故に巻き込まれたのは貴族制が廃止されてから一年ばかりの頃だった。
女は地位を継げないと言われていたものが覆され、一人娘であったミレイユが領地を継げる見込みになったのだ。それまでも結婚してから夫の仕事をささえられるようにと勉強してきていたが、それだけでは到底足りない。そのような事態になった友人はミレイユの他にも何人かいて、一緒に頑張りましょうと励まし合った。

奇しくも学生生活最後の年だ。

ミレイユの年にもなると婚約者がいる女性は沢山いた。女が領地を継ぐことを是としなかった貴族社会の法のためだ。しかし自分が領地を継げる見込みがたった事で、婚約者の浮気及び自身に対する態度うんぬん清濁飲み込んで涙を飲んで婿取りをしようとしていた女性陣はこれ幸いと不誠実な行いをしていた婚約者を見放した。

世は婚約破棄の大盤振る舞いである。

元より婚約者などいなかったミレイユは、学べるうちにと勉学に没頭し父の手伝いをした。そうして一年程だった頃には朧げながら仕事内容がわかってきた様な全くわからなくなった様な段階にいた。これはまぁ言うなれば初歩の初歩がようやくわかったあたりだ。
もっと頑張らないとな、と決意を新たにした矢先に父の訃報がもたらされた。
つまり、なにが言いたいかと言うと、ミレイユはまったくなんにも分かってない。ひよっこのまま父の跡を継いだのだ。今だって父のいた頃から支えてくれていた執事に教えを乞うて、ようやくよちよち歩きさながら領地経営をしているだけなのだ。
代々家に伝わっていた首飾りが神から借りたものだなんて、想像したこともない。
家の一番堅固な作りのガラス張りのショーケースに納められたそれは、ミレイユにとってはわかりやすい【高価なもの】の象徴であった。
それは奥の間で大事に飾られ、先祖代々受け継がれてきたものだという話を聞いたとこがある程度だ。

ミレイユの父は隠し事など何もない善良な人であったので、首飾りが借物としっていたら必ず返していたはずだ。何代か前からその情報は誰にも知られていなかった可能性が高い。

上手く世代交代が行われることの方がまれなのだ。

しかしミレイユにとって幸運だったことは、聖女による供物の回収の一番初めに選ばれたことである。
まだミレイユ以外、誰一人(聖女以外は)この首飾りが七日後に回収されることを知らない。
これはきっとチャンスだ。神は私を見捨てたわけではなかったのだ。

ミレイユの行動は早かった。
あと七日しか時間がない。

足早に書斎に行くと、屋敷中全ての本をひっくり返す勢いで目を通した。なにごとかと様子を見にきたメイドには食事は書斎に持ってきて欲しいと頼む。
ベルを鳴らして家一番の古株であり、一番年配の執事を呼び、この家のなりたちやらを書いた本がどれか教えてもらうと、血眼になって宝石の名称を探す。紫宝の首飾りなんて大層な名称も、もしかして神から授かったがためについたものだったのかもしれない。
早々に分かったことといえば、もう八代前には首飾りは当家にとっての家宝としてありがたく飾られていると言うことだけだ。
もっとわかりやすく神との約束の話とか盟約の話とかやんごとなきお方にお借りしたとかそのような話がかかれていないかと思い、日記にまで目を通し始めると地獄のような政略結婚ストーリーが描かれていることが多い。
思いがけず人間関係と権力の闇をのぞいてしまったミレイユは疲労困憊のままよたよたと学校へ向かう馬車へ乗るのであった。

軽快な足取りでいつもの道をゆく馬車の揺れが心地よくて、あやうく爆睡したまま目が覚めないところだったが、学園の前にいるけたたましい鳴き声の犬のおかげで目を覚ました。ミレイユの身体が疲れた休みたいと軋んでいる。
目の下の隈は化粧で隠せないほどは濃くない。
顔色の悪さを隠そうとぐりぐりと塗りたくった故に今日のミレイユはかなりしっかりメイクとなっている。そのためいつもより気合いの入った顔に見える逆転現象が起こっていた。
 
今日のミレイユのミッションは、授業にあらず。
いや、授業も大事だけど、それよりも優先されることがある。
 
朝一が勝負だとばかりに、教室へ足を踏み入れたミレイユは入り口からぐるりと教室の中を見渡した。
そこまで早い時間でもない。あらかたの生徒はすでに教室にいる時間だ。仲の良い友人同士で固まって各々楽しそうにしている。

ミレイユは、教室の窓際、真ん中あたりの席に座る男子生徒を見つけると、気合を入れて足早に近づいた。
ミレイユの友人達はこちらにくるとばかり思っていたミレイユが別の方向へ勢いよく歩をすすめるのを見て驚いている。

隣の席の友達となにやら雑談しているところ申し訳ないが、ミレイユはやらなければならないことがある。恥も外聞もない。学生のうちならなんとなく大目に見てもらえることを既にミレイユは身を持って知っている。
本当に、学生の今の時期でよかった。

「ジェット少し話があるんだけど、今いい?」

クラスメイトではあるが関わり合いのない男だ。
ミレイユはどちらかといえば女子のみで固まっているタイプなので、クラスの約半数ぐらいの男子と話したことさえない。内向的と言うよりもなんかめんどくさいからではあるが、他人から見たミレイユは大人しく内向的で男と話すことなどめったにない。まぁいわゆる内気な女子であった。

「え? 俺?」

対して今ミレイユが話しかけたのは常に彼女がいるタイプの……チャラ男である。
ジェットは驚き、自分を指差して固まっている。話しかけられることにまったく理由がわからないのだろう。それもそのはず、話がしたいのはミレイユの方だ。
真剣そのものの表情から思慕とか恋慕とか仲良くなりたぁ~い♡ のような要件ではないことは伝わったかもしれない。いや、でも今日はいつもよりしっかりメイクをしている。めちゃくちゃ気合い入れて話しかけてきた女にも見えるかもしれない。
ジェットの狐の様な目は、きゅっと目尻が釣り上がり、ミレイユを探る様に見てくる。琥珀色の瞳の中には疑問が渦巻いている。そりゃ、急に話しかけてきてなんの用だなんて誰でも思う疑問に違いない。いや、断り文句考えられてる可能性もある。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

ミレイユは、問おうとして周りからの痛いほどの視線に気付き、口を閉じた。
《ちょっといい感じの質屋を教えてくれないか》など聞ける雰囲気ではない。しかも内容がちょっとアレだ。

「えーと、放課後……ちょっとだけ時間もらいたいんだけど……あー、10分か20分、いや、そんなにかからないから……」

もごもごといえばあら不思議めちゃくちゃ告白したい女みたいな誘い方になってしまう。いや、違うんですよ、告白とかしないんで、ただただ紹介してほしいだけなんです。いわばお仕事。
ミレイユはこれ以上どういえばいいのかわからずに、目をうろうろさせる。

「そう? じゃぁ、エジールと一緒にカフェでも行く?」

にこ、と胡散臭そうに微笑んだジェットの提案に、ミレイユはすぐさま首を縦に振った。

「そうね、そうね⁉︎ 二人だけで行くと面倒だもんね? じゃぁ、それで……いいかな?」

エジールというのはジェットの隣に座っている彼の友人の名前で、こちらはふわふわとした麦の穂の様な髪がかわいらしい……チャラ男である。
チャラ男の友達はチャラ男なのである。

「え? まぁ別に何の予定もないし……」

いきなり話を振られたエジールは驚きながらも、是を告げた。

「じゃぁ、授業終わりにまた声掛けるわね」

しきりに瞬きするエジールに軽く頷いてからミレイユは、要件はそれだけだとばかりに二人から離れた。
とりあえず話を聞く約束が出来てよかった。そして告白だと誤解されないで良かった……!
友人たちに、なんだったのと聞かれたが、領地経営に関わる話で聞きたいことがあるだけだと言うと皆、やっぱり、そうよねーなどと恋愛ごとじゃないことをすぐに納得してくれた。
何だかそれはそれで釈然としないけど……?
これまでのミレイユの恋愛への姿勢がそうさせたんだろう。
ミレイユの今日の学校でのミッションはほぼほぼ終わった。


ジェットとエジールがいい店があるからと連れてきてくれてのは学園からもほど近く、いい感じに寂れていて、それでいてどこか気品のある店だった。
こんな店があったなんて知らなかった。知る人ぞ知る穴場という感じでもあり、近隣住民に愛される店という感じもある。
ついつい友達と来た様にケーキセットを頼もうとメニューを広げてしまったが、全てのケーキに目を通した後で、泣く泣く紅茶だけを頼んだ。季節限定のケーキなんか果物がたくさんのっていて美味しそうだったし、定番のケーキだって……いや、今日はがまんしよう。

「この店ケーキが美味しいんだけど、頼まないの?」

エジールに追撃されたが、ミレイユは屈しない。

「今日はちょっと気分じゃないので……また今度にします」

「そう? 残念だけど、また今度、ね」

意味深に微笑まれたので、ミレイユも微笑み返す。

「…えぇ、また今度」

ミレイユはなにもまたこの二人とこの店に来る約束をしたわけではない。なんならすでに頭の中では友人のエミリーを誘う算段をつけている。エミリーは甘いものに目がないからきっと断らないだろう。この店のこと知ってるかな? エミリーが幸せそうにケーキを頬張る様が見えるようだ。
おっと、今日は遊びに来たのではない。ぐぬ、と唇を閉じて意識を切り替える。
そうしてミレイユは学校では口に出来なかった質屋の話をする。

「質屋? キミの家ってそんなレベルで金なかったのか……」
ミレイユの言葉をきいて驚いて目を丸くしたのはエジールだ。
ミレイユとしてはジェットに話を聞いているつもりなのだが、なぜかエジールがぐいぐいきて話が進まない。
何のために質屋が必要かなどエジールに話す謂れがない。違うと言ったらじゃぁなんで質屋? と言われるため、肯定するしかない。
確かにうちはあまり羽ぶりがいいとは言えないが、困窮しているというほどでも無い。
貧乏に見えんのか? え? と凄みたい気持ちを抑える。ミレイユは領主なので。淑女なので、えぇ、うん。偉いね。
添え物として黙って座っていればいいのに……ついついミレイユは生ぬるい目をエジールに向けてしまう。
エジールはフワフワの髪とでっかい目が相まって、年より若く見える。年上の女性ならば庇護欲とかいうのをそそられるのかもしれない。この可愛らしい感じで女をたっぷり弄んでるんだろう。かわいさは罪なんだな、と感じる。

「なんだ、そのぐらいなら喜んで。かわいいクラスメイトの頼みだしね」

一体どんなお願いをされると思っていたのか、ジェットは肩の力を抜いて湯気の上ったコーヒーを一口飲んだ。
ジェットのウインクでもしそうなお茶目な様子は、ミレイユを気遣ってくれているの、かもしれない。
いや、素なのかな。全然わからない。
しかしさすが数々の女性と付き合ってきただけある。さりげなく女を褒めるのが上手だ。ミレイユとてかわいいとかキレイとか言われると口元がじんわりニヤけてしまう。お愛想でも嬉しいのは嬉しい。

「質屋といってもそれぞれ取り扱いの品がちがうんだよね。ちなみにだけど、何を取り扱ってるところがいいとかある?」

手慣れた様子のジェットの親の仕事は、金貸しだ。ジェットの親御さんの金貸しは良心的で有名である。
まぁ、質屋みたいなものだが少し違う。でもまぁ同じ業界なので、詳しいのは当たり前だ。
つまりミレイユのお願いは《ちゃんとした質屋を紹介して欲しい》ということだ。世の中には、ヤバい質屋もたくさんあるという。焦って自分で探してヤバい質屋に当たってしまっては目も当てられない。
幸いというか何と言うか、ミレイユは今まで関わり合いになったことがなかったため、まったく質屋のことを知らない。

「あー宝石……、宝飾品を扱ってるところかな」

頭に思い描くのは当然我が家の紫宝の首飾りだ。大きな紫のアメジストの周りにピンクのダイヤモンドが縁取られている。凝った意匠ではないが目を惹く不思議な力があるように思える。

「ふぅん、長期? 短期?」

「一週間ぐらいの間で借りたお金は返す予定なんだけど……」

「じゃあ短期か」

するすると必要な質問に答えていく。最後に、ふぅ、と息をついたジェットが、「俺の家の仕事は知ってるんだよな?」と言うので、それはもちろんと頷く。

「金が必要なら俺の家で借りるという手もあるぞ」

優しさなのか、商魂逞しいのかわからない提案をされるが首を振る。

「ありがとう、質屋を紹介してもらえるだけありがたいわ」

そのあとは自分でどうにかやる。
知り合いから借りてしまうと後々禍根になったりするので、良くない。し、面倒だ。

「オレの家だって、言ってもらえればいくらか貸してあげられると思う」

などと隣でエジールが現実味のない話をしている。勿論何の繋がりもないエジールの家から金を借りることは不可能であろうことは想像に難くない。
慰めてるつもりなのか、あほなのか判断できないが、ミレイユに同情しているらしい。悪いやつではないんだろうたぶん。
ついついまた生ぬるい目で見てしまったのを察知したエジールがわたわたと手を動かす。

「あっ無理だって思ってる? そこはほら、えーと、俺とミレイユが婚約するとか! したら……貸して貰える……ょ……」

最後の方は尻すぼみになってしまっているではないか。言って自分で照れたのか、耳が真っ赤になっている。さすがに顔には出ていないが、バレバレだ。
意外なことに嘘のつけないタイプの人らしい。チャラ男には珍しい。

「ありがとう、気持ちだけもらっておくわ」

ミレイユは、俯いてしまったエジールを見て微笑ましい気持ちになった。

「や、ほんとに……困ったことがあったら言ってくれ、出来るだけ力になるから……」

エジールはなおもぼそぼそ言っている。
親しくもないクラスメイトに対して優し過ぎないか? チャラ男だと思っていたが、ただ女子供に優しいだけなのかも、と思う。
……しかしミレイユとの婚約なんて何とも思ってないのによく口にするな。何とも思っていないからかな。
ミレイユは、軽く口元にだけ微笑みを浮かべたまま、手元のちょうどいい温度になった紅茶をグビグビ飲んだ。ちょっと緩い。
ミレイユなりに緊張して喉がカラカラになっている。

ミレイユの目論見はお金だけではない。
怪盗聖女がくる日に、首飾りを警護してもらうためでもある。ミレイユの家よりもいろんな宝飾品を扱う質屋の方が遥かに警護の質がいい。今のミレイユの家には堅固な警備を敷く金がないため、ちょうどいい。
それに万が一のことがあった時は、ミレイユはそのまお金をもらうことが出来る……
ただただ宝石を神に返すだけでなくまとまったお金を得ることも出来るというわけだ。
ふひ、なんと一石二鳥な作戦だろう! 
ミレイユちゃん天才!
転んでもタダでは起きない強い精神と強欲さを兼ね備えた淑女! なにがなんでも損したくないそんな精神的強さを持ってるー!

ミレイユの周りを想像上の小さな天使がファンファーレを鳴らす。

ミレイユは自画自賛が上手い。自分の機嫌は自分で取る。それが大人だ。

念のため、教えてもらった質屋のことを調べる。
なんの後ろ暗いところもない、かなりのクリーン経営だ。人気店らしく、日によっては待たなければならないこともあるらしい。
手順と作法などを調べつつ、経営状態まで確認する。ミレイユの持ち込むものはかなりの値が張るはず。大体の相場を調べ、件の質屋がその相場まるまる損益になってもびくともしない収益を持っていることにひと安心した。
自分のせいで潰れたなんてことにはならなさそうだ。


前日に行くとなんとなく怪しいかな、と思い、ミレイユは予告日の3日前に首飾りを質に入れた。さすがにちょっとしんみりした気持ちになってしまう。
目玉が飛び出そうなほどの大金をなに食わぬ顔で借りた。
一週間後までには必ず返しに来るので、首飾りは絶対に売りに出さないでくださいね、と何度も言う。ジェットが紹介してくれた店だ。期日等はしっかりしているはずだ。
あの予告状がニセモノである可能性だってある。いや、本来ならニセモノだ、お遊びだと思うのが普通だろう。
ミレイユは直感的にあれが嘘ではないと感じた。ミレイユは自分の直感に素直に従ったまでだ。
ミレイユの直感は割とよく当たる。

予告の日がきた。
ミレイユに出来ることはもうない。
真実借りていただけならば、神があれを取り戻したいというのなら、仕方がないことだ。

次の日の朝早く、ミレイユに質屋から連絡が入った。
手紙には「首飾りがなくなった」とある。
そうしてミレイユの部屋の机の上には「紫宝の首飾りはお約束通り返していただきました」という紙が入っていた。

「……」

差出人は怪盗聖女。
なるほど。なるほど、なるほど。
今頃質屋さん驚いてるだろうな。質屋さんには非がないのになんだか悪いことをしてしまったな。でもそれが質屋の仕事だ。大事なものを預かってお金を貸し付けて、利息で儲ける。
返済できない場合には質に取ったものを売って利益を上げる。ボロい商売だ。

ミレイユは連絡を受けて質屋に赴き、さも悲しげに、首飾りが盗まれた話を聞いた。
ないものは仕方ありませんね……元はと言えば家宝を質に入れたのがいけなかったんです。ご迷惑おかけしました。
ちなみにお金は……? え? このままでいいんですか? でも品物がないのに……そんな……ありがとうございます。

転んでもタダでは起きない工夫は必要だ。
ミレイユは、実質的な損失が少なくて安堵した。

そのあと怪盗聖女は次々に予告状を出していき、世に知られるようになった。

ミレイユが利用した質屋の契約書には、質に入れた物品が怪盗聖女に奪われた場合の免責事項と、金銭の返却の事項が追加されたという。

副産物として質屋を紹介してくれた縁でよく話すようになったチャラ男くんたちとなんだかんだ親睦を深めたりしましたがそれはまた別のおはなし。
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