【完結】《怪盗聖女》は供物を捧げる

染西 乱

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アリアの生家が肉屋と言っても買取ばかりではもうけが少ない。
ではどうやってもうけを出しているのかといえば、自ら獲物を狩ってきて売りさばいているのだ。

明日はほとんどの人が休みの日のため、買取が少なくなることが予想される。
くわえて、休みの日には買い物客は増加することからなにかメインとなる商品が必要だった。

森に入る道は教会のすぐ近くにある。

教会に近づくにつれて、どこかそわそわしたような落ち着かない様子の女の子の姿が増えてくる。
その子達は自分にできる一番のおしゃれをして、目いっぱいかわいい格好をしてきているのがわかる気合いの入った服の子ばかりだ。

土曜日の朝ならば、お祈りがあるんだろう。

履きやすいズボンと、シャツに、ごついブーツを履いて薄汚れたような高い古された帽子を目深に被ったわたしは浮いている。

誰にでも開かれているお祈りだが、教会に若くて優しい見目のいい神父が派遣されてくるとその顔見たさに若い女の子が殺到している。

今日も皆教会に行くとは思えないほどにかわいらしく着飾り、あわよくば神父様とお話ししたいという下心を隠しもせずに教会にお祈りに行っている。

アリアは若い女の子でごった返している教会の横の道を通り、森へと続く道へと入って行く。

「アリア」

名前を呼ばれたので、誰が友達が教会に来ていたのかもしれないと、振り返った。

「……神父さま」

そこには、いつも通りの清潔そうな服を着たヨシュアが立っていた。

「そろそろお祈りが始まるのでは?」

教会の見やすい大きな時計の針はすでに真上から少し右側にずれている。
先程までたくさんいた娘たちの姿はすでに教会の中へと消えている。

「ええ、でも、窓からあなたの姿が見えたので」

ヨシュアは妙に嬉しげな顔をしている。めったにお祈りに参加しない私の姿が見えたからだろう。

「そうですか。今日は私お祈りに来たんじゃないんですよ」

「……狩りですか?」

私の格好を見てわかったのか、ヨシュアは少しばかり声を硬くしながら言う。

「ええ、まぁ」

「一人で?」

「いつものことなので。私結構強いですし……」

「一人でなんて……森はなにがあるかわからないですし、心配です」

「心配なんて……ちょっとウサギを狩るぐらいですから」

すでにうさぎ用の罠は仕掛けてあるため、罠にうさぎかかっていないか見に行くだけだった。
肉と一緒にふわふわなファーも取れれば一石二鳥だ。

「……これを」

端正な顔を少し曇らせたヨシュアは、ポケットから小さな小瓶を取り出したそれは容量が200mlのもので、クリスタルのような円柱状になっている。

「なんですか、これ」

「聖水です。瀕死でもこれを飲めばたちまち元気になります」


効果を聞いて私は目を剥いた。

「いやいや、こんな高価なものいただけませんッ!」

どこに人の目があるがならないため、私は敬語を使い続ける。
というかいきなりこんな規格外のシロモノを手渡されて私は恐れ慄いている。なんだこれ、どこから手に入れたんだかわからないが、こんなもの王様とかそういう偉い人が持ってる秘宝レベルのものだ。

どこから手に入れたんだ。いや、入手先を知りたいわけじゃない。このままなにも知らないままでいさせて欲しい。

「でも心配なので」

「いや、でもこんな……高価なもの……」

持ってるだけで怖い……
何かの拍子に瓶が割れてしまったらどうする。

「しかし心配なので」

ヨシュアは壊れたようにそれしか言わない。
どうやっても引く気はなさそうだ。

「……わかりました、なにごともなく無事に帰ってきたらお返ししますからね!!!」

「そうですね、それがいいです。そうすればあなたが元気かどうか確認出来ますしね」

神父さまはちょっと過保護だな。
こんなの、うちの弟でも一人で行けるって言うのに。

すでに皆は集合しているだろうに、ヨシュアはわたしが森の中に入って見えなくなるまでじっと見送ってくれていた。

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