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持つべきものは師である。
せっかく学校に来ているのだから、わからないことを全て教えて貰えばいい。そのために来ているのだからなんら悪いことなどあるわけもない。
あのマンモス学園の教師をしているのだからかよほどお偉いさんなのだろう、と茜は受講している授業で教鞭を振るう教師陣を思い浮かべた。
恥ずかしいとか面倒くさいとか言っている段階はとうに超えているのだ。それに、どれだけ無知を晒そうとリッチェルは記憶がない、ということになっている。それにこれはリッチェルのせいなのだから彼女の評判が地に落ちようと自業自得だと思う。
制服に着替た茜は、確固とした足取りで屋敷を出た。
「おはようございます。……なんだかお久しぶりですね?」
いつもの如くお迎えに来てくれていたアイヴァンの言葉で、茜はここ一週間ほど学校を休んでいたことを思い出した。言わずもがな日記の翻訳にかかりきりになっていたためだ。
あらかじめ休むことは伝えておいだはずだが、とくに理由を伝えたわけではない。所用で家から出られない、ため、と伝えているはずだ。
「ええ、そういえばそうですね。おやすみの間にまた身長が伸びましたね?」
たかが一週間の間にアイヴァンはまた身長が伸びている。リッチェルの身長も低いわけではないが、このままいくとリッチェルの身長などすぐに追い抜いてしまうだろう。
「よくわかりましたね。急に伸びたものだから着れなくなる服が多くて……新しい服を作ってもらっているところなんです」
そう言われれば制服のズボンも心なしか短く感じる。以前は膝小僧の下あたりまであった裾が膝小僧の上にあるのだ。
うーん、これはあれか、フラグか。
これが恋愛小説ならばこのままアイヴァンがリッチェルの身長を抜き去り、いつの間にか大きくなった弟分のアイヴァンのさりげなくない優しさにころりと行ってしまうのが一番妥当だろう。そうして、愛する人のいるこの世界に茜は住むのだ。
そうして結婚式のようなものを挙げて、一姫二太郎を産んで? これは昔の話なのだけれど、とかなんとか言って子供に昔話として自分の元いた世界のことを語って聞かせたりなんかして?
それはそれで一つの幸せな形なんだろうけれども、天涯孤独というわけでもなく幸せいっぱいに育った茜が親孝行も出来ずにこのままリッチェルのふりをして過ごすなんてのは、望んでいない。
眼光鋭くアイヴァンを見つめる。いや、しかし彼にはなんの落ち度もない。ただのいい子なんだ。
「そうなの、新しい服もまたすぐに小さくなってしまうかもしれないわね」
恋愛フラグなどいらぬ。
茜は優しく微笑みを浮かべながら、アイヴァンとの間に立ったフラグを心の中でこてんぱんにやっつけていた。
せっかく学校に来ているのだから、わからないことを全て教えて貰えばいい。そのために来ているのだからなんら悪いことなどあるわけもない。
あのマンモス学園の教師をしているのだからかよほどお偉いさんなのだろう、と茜は受講している授業で教鞭を振るう教師陣を思い浮かべた。
恥ずかしいとか面倒くさいとか言っている段階はとうに超えているのだ。それに、どれだけ無知を晒そうとリッチェルは記憶がない、ということになっている。それにこれはリッチェルのせいなのだから彼女の評判が地に落ちようと自業自得だと思う。
制服に着替た茜は、確固とした足取りで屋敷を出た。
「おはようございます。……なんだかお久しぶりですね?」
いつもの如くお迎えに来てくれていたアイヴァンの言葉で、茜はここ一週間ほど学校を休んでいたことを思い出した。言わずもがな日記の翻訳にかかりきりになっていたためだ。
あらかじめ休むことは伝えておいだはずだが、とくに理由を伝えたわけではない。所用で家から出られない、ため、と伝えているはずだ。
「ええ、そういえばそうですね。おやすみの間にまた身長が伸びましたね?」
たかが一週間の間にアイヴァンはまた身長が伸びている。リッチェルの身長も低いわけではないが、このままいくとリッチェルの身長などすぐに追い抜いてしまうだろう。
「よくわかりましたね。急に伸びたものだから着れなくなる服が多くて……新しい服を作ってもらっているところなんです」
そう言われれば制服のズボンも心なしか短く感じる。以前は膝小僧の下あたりまであった裾が膝小僧の上にあるのだ。
うーん、これはあれか、フラグか。
これが恋愛小説ならばこのままアイヴァンがリッチェルの身長を抜き去り、いつの間にか大きくなった弟分のアイヴァンのさりげなくない優しさにころりと行ってしまうのが一番妥当だろう。そうして、愛する人のいるこの世界に茜は住むのだ。
そうして結婚式のようなものを挙げて、一姫二太郎を産んで? これは昔の話なのだけれど、とかなんとか言って子供に昔話として自分の元いた世界のことを語って聞かせたりなんかして?
それはそれで一つの幸せな形なんだろうけれども、天涯孤独というわけでもなく幸せいっぱいに育った茜が親孝行も出来ずにこのままリッチェルのふりをして過ごすなんてのは、望んでいない。
眼光鋭くアイヴァンを見つめる。いや、しかし彼にはなんの落ち度もない。ただのいい子なんだ。
「そうなの、新しい服もまたすぐに小さくなってしまうかもしれないわね」
恋愛フラグなどいらぬ。
茜は優しく微笑みを浮かべながら、アイヴァンとの間に立ったフラグを心の中でこてんぱんにやっつけていた。
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