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しおりを挟む「おい!なにこっちみてんだよババア!」
男の怒鳴り声が聞こえた。
皆驚いて怒鳴った男の方に注目する
自分もその方向に目を向けた
怒鳴ったであろうその男はバスの椅子に座っている。
怒鳴られている相手は白髪混じりの髪の毛をひとつにまとめている品のいいおばあさんで
「そんなことは…」
と目を伏せていて、どうしたらいいのかわからず、困っているようだった。
ごくりと唾を飲んでいきさつを見守っている周囲を見ながら
はぁ、私は小さくため息をついた。
全く、朝からついていないな、面倒臭い、と頭の中で独り言をいいながら、鞄にしまっていたハサミを取り出す。
鞄から取り出したハサミは手で持つ部分が赤く、幼稚園でもらうような何の飾り気のないものだ。
かなりの大きさなものだから取り出すのも一苦労する。
こんなにでかいハサミが私の手に持たれているのにまわりは男とおばあさんのやり取りに夢中で誰も気づいていない。
そして皆、助けようとしない。
まぁ、当たり前か
いつものことだし、と私はまた頭の中で独り愚痴った。
その反応は、頭ではわかっていてもやはり心が明るくなるものではない。
私はまたため息をついた。
取り出したハサミを後ろに隠し、一歩、二歩と音をたてずに男に近づいていく。
男の斜め横らへんに来たところで私は
「ねぇ」
と男に声をかけた。
まわりの視線がサッと私に集まるのがわかった。
そしてハサミを持っていることに周囲をは気づいたのだろうヒッと小さく悲鳴が聞こえた
私が声をかけた男は
「あ?なんだよ?」
と声を荒げていった
私の持っているハサミには気がつかないようだ。
よほど何かに焦っているのか私の顔にぺちょっと男の唾が張りつく。うへぇ汚な
顔をしかめながら
ハサミを持っていないてで顔をぬぐう。
おばあさんは突然のことにどうしたらいいかわからないようだ。
はらはらと視線を泳がせている
まあ当たり前か
私は男の問いかけに答えず、隠していたハサミを男に向かって振りかざした。
皆、一瞬にして時間が止まったかのように固まり、瞬く間もなく青ざめていく。
男もとても驚いたようで顔が青ざめ、つり上げていた眉毛をこれでもかというほど下げて、口元がひきつり、少し涙目になっていた。
「な、なあ悪かったや、やめてくれ」
声をもつらせながら男はいった
あぁ、この反応デジャヴだわ
冷めきった頭と気持ちで思った
持ち上げていた腕に限界がきているのを感じて
はぁ、本日三回目のため息をついた
そして持ち上げていた腕を男にめがけて振り落とす。
ザシュッ。ハサミを男の首らへんにぶつけると男の頭と胴体が切れて頭が足元にゴロンと転がった。
そこから血がプシャーと吹き出てドバァと溢れ出た。
どろどろと流れ出ていて私の足元にまでたどり着いた
キャーキャー
かん高いまわりの叫び声にうんざりする
2秒3秒。
じいっと待っていると男の首と胴体がビデオを巻き戻したように繋がっていく
血も消えていくあんなに煩かったかん高い叫び声も消えた。
ふぅ煩かった。
開きっぱなしの鞄にハサミをしまう。
胴体と顔が繋がった男は自分がハサミで真っ二つにされたことなんてなかったようにむくりと立ち上がった。
そして
「おばあさん、席どうぞ」
とたっていたおばあさんに席を開けた
おばあさんも目の前で人が斬られたことなんてなかったかのように
「あら、どうもありがとう」
と微笑んで男にそういった
まわりも何も気にせず眠たそうにしていたり音楽を聞いていたりしている
私はそんな光景にも驚かず、手すりにつかまる
今起こったようなことは決してはじめてではない
最初はそれなりに驚いて、初めて人を斬ったことに興奮、そして後悔などの感情を抱いたりしたのだがた何度か繰り返していくうちになれてしまった
このハサミは人を切ることはできるが殺すことはできない。
殺す変わりに斬られた人はその時やった行動、言動と逆なことをする。
このハサミを持っている自分はきっと、選ばれた人間だと思う。
上手くこのハサミを使い選択肢を変えて悪のない世界にしろと神様がいっているのだ。
そんな難しいことができるのは私しかいないのだから。
降りるボタンを押して
椅子の背もたれに寄りかかった
外をのぞくと、朝なのに混んでいる道路とその脇に植えてある青々とした木が素早く通りすぎていくのがみえた。
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