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3.一回目②
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「まさか、伊沢会長のおうちとは思いもしてなくて、びっくりしました」
興奮を隠せずに大樹がみどりに告げると、みどりは笑みを浮かべる。
「西高って聞いた時、もしかして知ってるんじゃないかと思って、あなたに決めたの。熊みたいな人からの応募だったらどうしようと心配だったけど、あなたみたいに可愛い感じのコで良かったわ」
みどりから見れば、大樹は可愛い男子高生に見えるらしい。身近にこんなイケメンがいて毎日見ていれば、そんな感覚になるのかもしれない。
「ねえ。あおは学校ではどんな感じなのかしら。最近はあまり学校の話はしてくれないの」
「めちゃくちゃ女子に人気ありますよ。全校集会では皆、校長の話より会長の方に夢中で」
大樹は思い出して笑う。大樹自身もその一員だ。
「へぇ……そうなの。いいわね。何だか楽しそう」
みどりが呟いた時、大樹の前に伊沢が冷茶の入ったコップを置いた。
「余計なことは言わないでくれないか」
褒めているのに、気に入らないとでもいうような顔で、伊沢が大樹を見る。
「姉さん、俺は二階に上がってるから」
来客の邪魔になると気を利かせた伊沢を、みどりが止める。
「あおは、いつもみたいにソファにいてちょうだい」
「……分かった」
伊沢は躊躇いがちに頷いて、二人から離れソファの方へと移動した。
伊沢が入れてくれたお茶を飲み、大樹は気になっていたことを訊ねてみた。
「あの掲示板の絵は、もしかしてみどりさんが?」
「ええ、そうよ。私、以前は美術部だったの。最近久しぶりに絵を描いてみたのよ。足がこんなだから出来ることも限られてて……」
みどりの表情が少し翳る。
「お上手ですね。じつは俺も中学では美術部だったので、絵は好きっていうか…。描くより見る方が、ですけど」
大樹の言葉に、みどりの表情が明るくなる。
「凄い偶然。ねえ、良かったら今まで描いた絵を見て下さらない? 描いたらやっぱり誰かに見てもらいたいものでしょ」
「いいんですか?」
ちょっと待ってて、とみどりが車椅子を動かしテーブルを離れる。
ちらりと伊沢の方を見ると、ソファに座ったまま落ち着かない様子でこちらを見ていた。
ソファの傍の棚に置いてあったスケッチブックを膝に乗せて、みどりが戻ってくる。
テーブルの上に置かれたスケッチブックを、大樹は捲った。
まず一枚目に描かれていたのは、窓の傍に座る伊沢の横顔だった。
モデルがいいせいもあるが、絵も上手いのでとてもカッコよく描かれている。伊沢の絵だと思うと、一枚欲しいくらいだ。
二枚目三枚目と捲っていくと、やはり伊沢がモデルだった。すべて家の中で描かれたものだ。
数枚捲っていくと、突然絵の内容が変わり、大樹はドキリとする。
それまでは日常を描いたような絵だったが、突然伊沢が裸になっているのだ。
最初はヌードモデルなのかと思ったが、すぐに毛色が変わる。
ソファの上に座り片足をソファの上に乗せ、股間に手を添えている。あるいは、明らかに自慰行為だと分かるようなものまである。
よく分からない寒気のようなものが、大樹の背を走った。
どうかしらと、みどりが訊ねる。
掲示板の投稿内容といい絵といい、何かが異常だと感じた。
大樹は最後の絵までを見終えてから、スケッチブックを閉じた。
「……途中からエロくなっててびっくり。でも、凄く上手いです」
大樹の賛辞に、みどりは素直に喜ぶ。
「ありがとう。これね、途中から普通じゃつまらなくなって、色々試しちゃったの。今日も、いつもと違う絵を描きたくて来てもらったのよ」
みどりの言葉に、やっぱりそうかと内心で思う。
弟に自慰をさせて、それに飽きて今度はフェラチオをされている姿を描こうということなのか。
みどりもおかしいとは思うが、言いなりになっている伊沢もおかしい。
しかし、どうしてその相手が女ではなく男なのかという疑問が生まれる。
「あお」
みどりに呼ばれ、ソファに座る伊沢がぎくりと身じろぐ。
「いつもみたいに脱いで準備してちょうだい」
「姉さん……」
「今日はイツキくんが、口でしてくれるから。イツキくん、よろしくね」
口で、という意味が何を示すのかすぐに分かったのだろう、伊沢は目を瞠る。
みどりはスケッチブックを膝に乗せ、絵を描くための位置へと車椅子を動かした。
伊沢は黙り込み、躊躇いながらもゆっくりと服を脱ぎ出す。
フェラチオをしてお金がもらえると安易に考えていたが、異常な空間に迷い込んでしまった気分だった。
大樹はゆっくりと二人のいるソファへと近づいた。
興奮を隠せずに大樹がみどりに告げると、みどりは笑みを浮かべる。
「西高って聞いた時、もしかして知ってるんじゃないかと思って、あなたに決めたの。熊みたいな人からの応募だったらどうしようと心配だったけど、あなたみたいに可愛い感じのコで良かったわ」
みどりから見れば、大樹は可愛い男子高生に見えるらしい。身近にこんなイケメンがいて毎日見ていれば、そんな感覚になるのかもしれない。
「ねえ。あおは学校ではどんな感じなのかしら。最近はあまり学校の話はしてくれないの」
「めちゃくちゃ女子に人気ありますよ。全校集会では皆、校長の話より会長の方に夢中で」
大樹は思い出して笑う。大樹自身もその一員だ。
「へぇ……そうなの。いいわね。何だか楽しそう」
みどりが呟いた時、大樹の前に伊沢が冷茶の入ったコップを置いた。
「余計なことは言わないでくれないか」
褒めているのに、気に入らないとでもいうような顔で、伊沢が大樹を見る。
「姉さん、俺は二階に上がってるから」
来客の邪魔になると気を利かせた伊沢を、みどりが止める。
「あおは、いつもみたいにソファにいてちょうだい」
「……分かった」
伊沢は躊躇いがちに頷いて、二人から離れソファの方へと移動した。
伊沢が入れてくれたお茶を飲み、大樹は気になっていたことを訊ねてみた。
「あの掲示板の絵は、もしかしてみどりさんが?」
「ええ、そうよ。私、以前は美術部だったの。最近久しぶりに絵を描いてみたのよ。足がこんなだから出来ることも限られてて……」
みどりの表情が少し翳る。
「お上手ですね。じつは俺も中学では美術部だったので、絵は好きっていうか…。描くより見る方が、ですけど」
大樹の言葉に、みどりの表情が明るくなる。
「凄い偶然。ねえ、良かったら今まで描いた絵を見て下さらない? 描いたらやっぱり誰かに見てもらいたいものでしょ」
「いいんですか?」
ちょっと待ってて、とみどりが車椅子を動かしテーブルを離れる。
ちらりと伊沢の方を見ると、ソファに座ったまま落ち着かない様子でこちらを見ていた。
ソファの傍の棚に置いてあったスケッチブックを膝に乗せて、みどりが戻ってくる。
テーブルの上に置かれたスケッチブックを、大樹は捲った。
まず一枚目に描かれていたのは、窓の傍に座る伊沢の横顔だった。
モデルがいいせいもあるが、絵も上手いのでとてもカッコよく描かれている。伊沢の絵だと思うと、一枚欲しいくらいだ。
二枚目三枚目と捲っていくと、やはり伊沢がモデルだった。すべて家の中で描かれたものだ。
数枚捲っていくと、突然絵の内容が変わり、大樹はドキリとする。
それまでは日常を描いたような絵だったが、突然伊沢が裸になっているのだ。
最初はヌードモデルなのかと思ったが、すぐに毛色が変わる。
ソファの上に座り片足をソファの上に乗せ、股間に手を添えている。あるいは、明らかに自慰行為だと分かるようなものまである。
よく分からない寒気のようなものが、大樹の背を走った。
どうかしらと、みどりが訊ねる。
掲示板の投稿内容といい絵といい、何かが異常だと感じた。
大樹は最後の絵までを見終えてから、スケッチブックを閉じた。
「……途中からエロくなっててびっくり。でも、凄く上手いです」
大樹の賛辞に、みどりは素直に喜ぶ。
「ありがとう。これね、途中から普通じゃつまらなくなって、色々試しちゃったの。今日も、いつもと違う絵を描きたくて来てもらったのよ」
みどりの言葉に、やっぱりそうかと内心で思う。
弟に自慰をさせて、それに飽きて今度はフェラチオをされている姿を描こうということなのか。
みどりもおかしいとは思うが、言いなりになっている伊沢もおかしい。
しかし、どうしてその相手が女ではなく男なのかという疑問が生まれる。
「あお」
みどりに呼ばれ、ソファに座る伊沢がぎくりと身じろぐ。
「いつもみたいに脱いで準備してちょうだい」
「姉さん……」
「今日はイツキくんが、口でしてくれるから。イツキくん、よろしくね」
口で、という意味が何を示すのかすぐに分かったのだろう、伊沢は目を瞠る。
みどりはスケッチブックを膝に乗せ、絵を描くための位置へと車椅子を動かした。
伊沢は黙り込み、躊躇いながらもゆっくりと服を脱ぎ出す。
フェラチオをしてお金がもらえると安易に考えていたが、異常な空間に迷い込んでしまった気分だった。
大樹はゆっくりと二人のいるソファへと近づいた。
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