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44.愛してる③
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いつも求めるのが自分ばかりなことや、伊沢が間違って大樹と付き合っているかと不安になったけれど、伊沢も同じように想ってくれていると実感した。
そもそも、思い込んでいるだけなのか本当に好きなのかなんて、判別のしようがない。
きっかけはどうであれ、伊沢は今、大樹のことを好きでいてくれる。
気付かなかっただけで、自分が思っているよりも、大樹は伊沢に愛されている。
「不安、なくなった。俺、思ったより愛されてる?」
自信を持っていいんだよね、と確認するように伊沢に問う。
「だから、そう言ってる。……好きでなければ、男に抱かれるなんてことできるわけがないだろう」
伊沢が呆れた。
大樹の勘違いで伊沢の人生を狂わせてしまっていたのだったらと不安になったが、心底ほっとした。
「ん……っ」
大樹が腰を緩やかに動かし始めたので、伊沢が甘い声を漏らす。
「だ、大樹……」
伊沢に名前を呼ばれる。
整えた髪はすっかりくしゃくしゃに乱れている。そんな伊沢を見ながら、せっかくの高級ホテルなのだから、まだしたことがない風呂の中でするのも良かったかもしれないと、考えながらも腰を動かすのを止めない。
この後、伊沢の中に出したものを掻き出してあげながら、一緒に風呂に入ろうと考えた。
「……就職して落ち着いたら、一人暮らししようかと、思ってる。そしたら……んっ」
快感に流されないよう、耐えるように伊沢が言葉を紡ぐ。
「その……。人目を気にせず、もっと、会えるから……」
伊沢の言葉に思わず動きを止める。
大樹は目を瞠り、伊沢を見た。
「蒼一郎……」
伊沢だって、二人のことをちゃんと考えてくれている。
じんわりと胸が熱くなった。
同時に、打ちのめされたような気持ちになった。
信用されていないのかと伊沢が言ったが、その通りだった。
不安になったのは、伊沢の気持ちを信じていなかったからだ。
みどりに付き合えと言われたとして、ホモは嫌だと言っていた男が四年も男と付き合えるはずがないのに。
大樹はみどりの言葉を勘違いしてしまったが、伊沢はそうではなかったとしたら。
迷っていたら導いてあげてと、みどりは言った。
もし、迷う気持ちをみどりに後押しされて、自分の意志で大樹を選んでいたのだとしたら―――。
「―――…」
馬鹿な自分が情けない。
伊沢の四年間の想いを疑うなんて、なんて酷いことを考えたのだろう。
「なんで、そんな顔してる? ……今にも泣きそうだぞ」
伊沢が少し不安そうに訊ね、伸ばされた手が大樹の頬にそっと触れる。
「ごめん……」
何故謝られたのか伊沢は分からず、戸惑うように大樹を見上げた。
伊沢の気持ちが紛い物だったらと大樹が考えていたなんて思いもせず、いつものように伊沢は優しい。そんな伊沢を、不安な気持ちにさせたくはない。
触れた伊沢の手を握り、大樹はそっと笑った。
「―――うれしいんだ」
そもそも、思い込んでいるだけなのか本当に好きなのかなんて、判別のしようがない。
きっかけはどうであれ、伊沢は今、大樹のことを好きでいてくれる。
気付かなかっただけで、自分が思っているよりも、大樹は伊沢に愛されている。
「不安、なくなった。俺、思ったより愛されてる?」
自信を持っていいんだよね、と確認するように伊沢に問う。
「だから、そう言ってる。……好きでなければ、男に抱かれるなんてことできるわけがないだろう」
伊沢が呆れた。
大樹の勘違いで伊沢の人生を狂わせてしまっていたのだったらと不安になったが、心底ほっとした。
「ん……っ」
大樹が腰を緩やかに動かし始めたので、伊沢が甘い声を漏らす。
「だ、大樹……」
伊沢に名前を呼ばれる。
整えた髪はすっかりくしゃくしゃに乱れている。そんな伊沢を見ながら、せっかくの高級ホテルなのだから、まだしたことがない風呂の中でするのも良かったかもしれないと、考えながらも腰を動かすのを止めない。
この後、伊沢の中に出したものを掻き出してあげながら、一緒に風呂に入ろうと考えた。
「……就職して落ち着いたら、一人暮らししようかと、思ってる。そしたら……んっ」
快感に流されないよう、耐えるように伊沢が言葉を紡ぐ。
「その……。人目を気にせず、もっと、会えるから……」
伊沢の言葉に思わず動きを止める。
大樹は目を瞠り、伊沢を見た。
「蒼一郎……」
伊沢だって、二人のことをちゃんと考えてくれている。
じんわりと胸が熱くなった。
同時に、打ちのめされたような気持ちになった。
信用されていないのかと伊沢が言ったが、その通りだった。
不安になったのは、伊沢の気持ちを信じていなかったからだ。
みどりに付き合えと言われたとして、ホモは嫌だと言っていた男が四年も男と付き合えるはずがないのに。
大樹はみどりの言葉を勘違いしてしまったが、伊沢はそうではなかったとしたら。
迷っていたら導いてあげてと、みどりは言った。
もし、迷う気持ちをみどりに後押しされて、自分の意志で大樹を選んでいたのだとしたら―――。
「―――…」
馬鹿な自分が情けない。
伊沢の四年間の想いを疑うなんて、なんて酷いことを考えたのだろう。
「なんで、そんな顔してる? ……今にも泣きそうだぞ」
伊沢が少し不安そうに訊ね、伸ばされた手が大樹の頬にそっと触れる。
「ごめん……」
何故謝られたのか伊沢は分からず、戸惑うように大樹を見上げた。
伊沢の気持ちが紛い物だったらと大樹が考えていたなんて思いもせず、いつものように伊沢は優しい。そんな伊沢を、不安な気持ちにさせたくはない。
触れた伊沢の手を握り、大樹はそっと笑った。
「―――うれしいんだ」
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