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48.未来
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「……で、姉ちゃんてば、蒼一郎の欠点を唯一挙げるなら、俺を選ぶなんていう恋愛センスがないことね、だって。普通そういう場合って、なかなか見る目あるとか、そう言うだろ」
夜、自室のベッドに転がりながら、大樹は伊沢と携帯電話で話をしていた。
さっきから電話の向こうからは笑いを堪えるような声しか聞こえてこないので、大樹ばかりが喋っている。
「俺、今日ほど家族に雑に扱われたことないよ」
大樹は小さく溜め息をついた。
「ははっ。でも、お姉さんとは凄く仲がいいんだろう」
「うん。めちゃくちゃ仲いい」
今日のやり取りも、喧嘩ではなくじゃれ合いのようなものだ。
「せっかく部屋もきれいに掃除して、蒼一郎を連れてきたかったのに」
「また今度、見せてくれ」
後から文句を言われそうだが、今度は姉が留守の時に連れてこよう。母だけなら気を利かせてくれそうだが、姉がいると絶対に部屋まで押しかけてこられる。
「蒼一郎の匂いを、俺の部屋につけたかったな」
「………」
家族がいるのにセックスなんてできるはずはないが、わざとほのめかす。
伊沢が黙り込んでしまった。
きっと頭の中でいやらしい想像をしてしまい、顔を赤くしていそうだ。そう考えただけで、抱き締めたくなった。
しばらくして、伊沢が咳払いをした。
「……大樹も、うちの親に恋人だって紹介されたいか?」
伊沢に静かに問われ、思わずにやけていた顔が止まる。
今日のことで、伊沢は自分も家族に打ち明けるべきかと迷っているのかもしれない。
大樹は伊沢の両親の顔を思い浮かべた。
伊沢姉弟から想像した通り、きっちりとした真面目そうな両親だ。
「どうだろう。うちの家族が緩いだけで、そう歓迎されるとは思わないし」
大樹の家族の場合は、伊沢がカッコいいから歓迎されただけだ。大樹がもしとんでもなく美形だったとしても、伊沢の両親が同じノリとは限らない。
少なくとも、何度も会っている大樹の印象では、同じようなタイプには見えない。
優秀な息子が道を踏み外したと、ショックを受けるのではないだろうか。
「別に、俺もたまたま成り行きだっただけで、元々家族に紹介するつもりなんてなかったし、考え込む必要ないよ」
沈黙の後、そうかと伊沢が返事した。
「……もし、ちゃんと紹介したいと言ったら、その時は会ってくれるか?」
携帯電話から聞こえる真面目な声に、大樹は思わず息を呑んだ。
大樹との関係を真剣に考えてくれていることが分かり、思わず携帯電話を持つ手に力が入った。
みどりの結婚式の日以来、伊沢から二人の関係について前向きな言葉が出てくる。
目先のことばかり考えている大樹に対して、伊沢はその先の未来の話をする。
ずっと一緒に居たいと考えてくれているのだと思うと、たまらなく嬉しかった。
大樹は深呼吸した。
「じゃあ、俺、それまでにちゃんと自信持って彼氏だって名乗れるように、自分を磨く。まずはちゃんと立派な社会人になって、蒼一郎に相応しい男になる」
電話ではなく目を見て伝えたかったな、と大樹は思った。声でしか伝えられないのがもどかしい。
電話の向こう側で、何となく伊沢が微笑んだ気がした。
「大樹は十分、自信持っていい。相応しいとか…そういうのじゃなくて、俺が……好きなんだから」
耳に心地よい、少し照れたような伊沢の声に目を閉じる。
二人で居れたらそれでいい。
お互いに好きで、求めあって、それで十分だ。周りなんてどうでもいい。
大樹がどれほど幸せな気持ちか、伊沢に見せてあげられたらいいのに。
大樹は瞼に伊沢の顔を思い浮かべた。
「俺も、大好き―――」
夜、自室のベッドに転がりながら、大樹は伊沢と携帯電話で話をしていた。
さっきから電話の向こうからは笑いを堪えるような声しか聞こえてこないので、大樹ばかりが喋っている。
「俺、今日ほど家族に雑に扱われたことないよ」
大樹は小さく溜め息をついた。
「ははっ。でも、お姉さんとは凄く仲がいいんだろう」
「うん。めちゃくちゃ仲いい」
今日のやり取りも、喧嘩ではなくじゃれ合いのようなものだ。
「せっかく部屋もきれいに掃除して、蒼一郎を連れてきたかったのに」
「また今度、見せてくれ」
後から文句を言われそうだが、今度は姉が留守の時に連れてこよう。母だけなら気を利かせてくれそうだが、姉がいると絶対に部屋まで押しかけてこられる。
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「………」
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きっと頭の中でいやらしい想像をしてしまい、顔を赤くしていそうだ。そう考えただけで、抱き締めたくなった。
しばらくして、伊沢が咳払いをした。
「……大樹も、うちの親に恋人だって紹介されたいか?」
伊沢に静かに問われ、思わずにやけていた顔が止まる。
今日のことで、伊沢は自分も家族に打ち明けるべきかと迷っているのかもしれない。
大樹は伊沢の両親の顔を思い浮かべた。
伊沢姉弟から想像した通り、きっちりとした真面目そうな両親だ。
「どうだろう。うちの家族が緩いだけで、そう歓迎されるとは思わないし」
大樹の家族の場合は、伊沢がカッコいいから歓迎されただけだ。大樹がもしとんでもなく美形だったとしても、伊沢の両親が同じノリとは限らない。
少なくとも、何度も会っている大樹の印象では、同じようなタイプには見えない。
優秀な息子が道を踏み外したと、ショックを受けるのではないだろうか。
「別に、俺もたまたま成り行きだっただけで、元々家族に紹介するつもりなんてなかったし、考え込む必要ないよ」
沈黙の後、そうかと伊沢が返事した。
「……もし、ちゃんと紹介したいと言ったら、その時は会ってくれるか?」
携帯電話から聞こえる真面目な声に、大樹は思わず息を呑んだ。
大樹との関係を真剣に考えてくれていることが分かり、思わず携帯電話を持つ手に力が入った。
みどりの結婚式の日以来、伊沢から二人の関係について前向きな言葉が出てくる。
目先のことばかり考えている大樹に対して、伊沢はその先の未来の話をする。
ずっと一緒に居たいと考えてくれているのだと思うと、たまらなく嬉しかった。
大樹は深呼吸した。
「じゃあ、俺、それまでにちゃんと自信持って彼氏だって名乗れるように、自分を磨く。まずはちゃんと立派な社会人になって、蒼一郎に相応しい男になる」
電話ではなく目を見て伝えたかったな、と大樹は思った。声でしか伝えられないのがもどかしい。
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「大樹は十分、自信持っていい。相応しいとか…そういうのじゃなくて、俺が……好きなんだから」
耳に心地よい、少し照れたような伊沢の声に目を閉じる。
二人で居れたらそれでいい。
お互いに好きで、求めあって、それで十分だ。周りなんてどうでもいい。
大樹がどれほど幸せな気持ちか、伊沢に見せてあげられたらいいのに。
大樹は瞼に伊沢の顔を思い浮かべた。
「俺も、大好き―――」
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