Beyond Labels 〜ラベルを超えて〜

第２章：出会い

　桜丘中学校さくらがおかちゅうがっこう１年２組。私は中学校に進学した。通常学級でも特別支援学級での自己紹介は終わった。私の通う通常学級には、一風変わった生徒がいた。その人の名は柳沢悠斗やなじざわゆうと。悠斗は暗い表情で眼鏡を掛けていた。一言も喋らず、休み時間も読者やノートをまとめるなどせずただ下を向いていた。私は、変な好奇心が沸いた。
《悠斗を困らせてみたい》
と。私は悠斗の席にそっと近付いて眼鏡を取った。
「何で、これ掛けているの？」
私はその眼鏡が不思議に見えた。悠斗は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をしていた。その眼鏡は視野が広がったりしなかった。悠斗は私を見つめて
「透けない……」
と呟いた。悠斗は予備の眼鏡も用意していた。２個も眼鏡を用意する人なんているのだろうか。掛けてみると、別に度が変わるわけでも無かった。後にそれは伊達眼鏡と知った。初めて知った私は興味津々だった。授業が始まってもその伊達眼鏡ばかり見ていて、内容なんて一言一句覚えていない。
　授業後。
「返せよ……」
悠斗が私に話しかける。けど、私はまだその伊達眼鏡が珍しく眺めている。すると、悠斗が私に取られた伊達眼鏡を取り上げる。
「人のものを勝手に取るんじゃねぇ……」
悠斗はそう言って、自分の席に戻った。私はどうしても、悠斗から目が離せなくなった。一風変わった雰囲気と悠斗の声が私が生きてきた人生で１番かっこいい声だった。興味津々とはまた違う感情が揺れ動いていた。それが何なのか私には分からなかった。