〜彼女を可愛く育成計画〜

〈６〉育成３

　醜茶を可愛く育成計画３回目は、服装だ。醜茶は制服以外にあの薄汚れた灰色の長袖長ズボンしか無かった。醜い自分に服なんて似合わないと思っているのだろうか。俺は元読者モデルの親友、佐粧礼男さしょうれおに電話をかける。
「もしもし？　礼男？」
『あぁ、そうだ？　久しぶりだな！』
「俺の彼女を可愛くコーデしてくれないか？」
俺は醜茶を『彼女』呼びしてしまう。だが、これは三人称単数の彼女だ。
『分かった』
俺は醜茶を引っ張り、グラマラスワードローブに向かった。
　グラマラスワードローブ、河井区支店。
「お願い！」
俺は醜茶を礼男にお任せのコーデを丸投げた。礼男は、醜茶を頭の先から足のつま先まで観察する。
「ちょっと、観察方が独特……」
醜茶は嫌がっているのだろうか。本人に傷つけないために代わりの言葉を言っているのが分かる。だが、この礼男の観察の仕方はどんな服が似合うかのスキャンみたいなものだ。
「リボン……フワフワ……」
礼男が呟く。
「リボン？　フワフワ？」
俺は礼男の言葉に疑問を感じる。
「この娘こには、リボンとフワフワの着いた服が似合う！」
礼男は、店の中を漁り回す。流石は元読者モデル。店の中で醜茶が合うような服を選んでいる。礼男は胸元にリボンの付いたロングスリープＴシャツ、かわいいフリルの付いたスカート、ルーズソックスなどを醜茶に渡す。
「試着室で着替えてみて！」
礼男が試着室へ案内する。醜茶が着替えている間、俺と礼男は店近くのカフェでコーヒーを飲んでいた。俺は砂糖を多く入れて甘くした。
　数分後。醜茶が着替え終わった頃合いだろうと思い、俺と礼男は店に戻る。
「おぉ！　似合うじゃん！」
礼男が拍手する。
「似合いすぎ……かわいい……好き」
俺はボソッと呟いてしまう。『好き』と。しかし、醜茶には聞こえていなかったらしい。これで『醜茶を可愛く育成計画』は幕を閉じた。醜茶を可愛くできたから。