歌と友情の調べ

古波蔵くう

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#4.過去からの影

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 2日後、華陽高校1年次教室。俺は頭を抱えてスマホを眺めていた。実は、俺は壮絶な過去があってLEAD恐怖症になっていた。俺は中学時代、スクールカースト上位の人達から酷いいじめを受けていた。不登校の日々が続いた。すると、ソイツらは俺の小学生の頃のダチからLEADを交換して、俺のアカウントを入手して学校に来るよう強要したり、誹謗中傷を投げつけたりと非難を受けていた。そのスクールカーストのリーダーが、今私立の蒼月そうげつ学園に在学している川崎悪徳かわさきあくとく。悪徳は、今も野球部に所属しているだろう。歌が上手いと言う取り柄しかない俺を散々罵倒していた。
《どうやって美咲にメッセージを送れば……仕方ない、先輩に聞くか》
俺は2年次教室へ向かう。
 2年次教室。俺が中学時代の時、塾のバイトをしていた高橋慎太郎たかはししんたろう先輩を探す。慎太郎先輩は、彼女持ちの恋愛マスターと俺は思っている。
「あ! 慎太郎先輩!」
俺は慎太郎先輩を見つけるなり、声をかける。
「あれ? 一年坊主がいるぜぇ?」
不良先輩たちが先に俺に近付いた。
「高橋のダチか? あぁ?」
不良先輩の1人が俺に顔を近付ける。
「僕の可愛い後輩に何する気だ?」
慎太郎先輩が立ちはだかる。
「す、すまねぇ……さぁ、ずらかるぞ!」
不良先輩たちは去っていった。
「2年次教室に来る時は、なるべく大声出さないでくれ……」
慎太郎先輩が呆れた声で言う。
「すいません……先輩、俺先週の合コンで好きな人が出来たんです……ですが、LEAD恐怖症で送れないんです……なんか、メッセージをください」
俺はスマホの画面を見せる。
「その娘のこと、どれぐらい知ってるの?」
慎太郎先輩が、美咲の情報を聞こうとする。
「名前ぐらいだけど……」
俺は美咲の名前しか知らない。
「じゃあ『突然で申し訳ないけど、聞きたい聞いていい?』って送ってみたら? だが、質問する時は自分のことも答えることだ……」
慎太郎先輩は、メッセージの送り方を伝授してくれた。
「ありがとうございます」
俺は、2年次教室を後にした。
 部活時間、カラオケ同好会部室。俺はLEADを開き、美咲にメッセージを送る。
『ユウタ:突然で申し訳ないけど、聞きたいこと聞いていい?』
俺がメッセージを送ると、すぐ既読が付き
『美咲:いいですよ!』
と。返信が来た。俺は誕生日と血液型を聞いた。俺は6月生まれだが、美咲は1月生まれだった。血液型は俺はO型で美咲はB型だった。
 1ヶ月後、下校時。
「今日も、部員0」
俺は、部員が誰も来なくて寂しかった。
「新学期なっても来なかったら、カラオケ同好会廃部だな」
俺がトボトボと下校路を歩いていると、町の掲示板に目をやった。すると
『夏祭り開催!』
と。書いてあった。開催日は、俺の高校が丁度夏休み中。俺は帰宅して、慎太郎先輩のLEADを開いて
『ユウタ:先輩! 好きな人を夏祭りに誘いたいです! 何かアドバイスをください!』
と。送った。すると、既読が付き
『@真Taro:食後の30分後がいいって聞いたけど、他校の娘だろう? 時間割なんて分かるのか?』
慎太郎先輩は、俺の好きな人が他校の女子生徒だと分かっているらしい。
『ユウタ:ちょっと有名なお嬢様学校だから分かるかもしれません』
俺は検索エンジンで星宮女子高校生を調べると保護者用資料のpdfファイルに時間割があった。そして、時間を計算して送ってみることにした。
 華陽高等学校、昼食時間。
《あと、1分で星宮女子校の昼食から30分経つ……》
俺は、LEADを開いて美咲のトークルームにメッセージを書く
『ユウタ:美咲さん。今年の夏休み一緒に行きませんか?』
メッセージを送ると、すぐ既読が付き
『美咲:いいよ! 偶々行く予定だったから!』
と。OKをくれた。
「よっしゃあああ!!」
俺はみんながまだ、昼食を食べている……あるいは談笑している中で喜びを叫んだ。
 夏祭り当日。俺は白のワイシャツに黒のジーンズ、蝶ネクタイという自分ではかっこいいと思うコーデで祭りの出入り口で美咲を待った。
《ちょっと来るの早すぎたかな……だけど、合コンの時は待たせたし……》
一応、俺はあの数合わせのためだけに誘われた合コンでの反省も兼ねて早く来ていた。すると、
「ごめん! 悠太くん……待った?」
空色に花柄の浴衣を着た美咲が来た。
「いや、俺も今来たところ……浴衣可愛いね!」
俺は美咲の服装を褒める。
「ありがとう!」
俺は美咲と祭り会場に足を踏み入れる。その後は、俺と美咲は射撃や金魚すくいなどして、楽しんだ。食べ物は値段高騰で1個700円するお好み焼きしか買えなかった。俺は、夏祭りのスケジュールを確認する。
《えーっと、20時から花火! 3回もするのか! もしかしたら、美咲と手をつなげるかも?》
俺は、花火が見れるところまで美咲を連れて行った。
 19時59分。
「これから、花火が上がるみたいだよ」
俺は美咲に話しかける。
「そうみたいだね」
俺と美咲が夜空を見上げると、大きな花が映し出された。最初の花火が上がったのだ。俺は自然と美咲の手に触れ握った。美咲は花火で、気付いていない。今年の花火は一段と綺麗に見えた。
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