〜甘い結晶と二人の未来〜

古波蔵くう

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プロローグ:甘い予感と孤独のスタート

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※ この作品の表紙画像(または、使用されている画像)はAI生成ツールを利用して作成されています。
 キャンディコマース商業高校しょうにょうこうこう、職員室。
「部活には入部しないってこと?」
俺は、家庭科担当であり担任の三谷奈緒みたになお先生に睨まれる。
「はい……」
その睨んだ三谷先生の目は鬼のように見えた。瞳の奥に火花が散っていた。
「どうするつもりなの?」
三谷先生は問いかける。
「俺は……部活を設立したいんです!」
俺は自分の思いを伝えた。
「あのね……飴谷あめたにくん? 部活を作るには、最低人数と設立書が必要なんだよ?」
三谷先生が言う。俺は制服のポケットから、とあるものを取り出す。
「俺が作りたい部活の試作品です……」
「これは……キャンディ?」
「俺はキャンディを作る部活を作りたいです! 三谷先生! 顧問になってください!」
俺は三谷先生に顧問になるようにお願いした。これでも、拒否されたら俺は諦める。俺の真剣な眼差しを見て三谷先生は、ため息をつき
「分かったわ……じゃあ、私は設立書の書き方を教えるから……あとは最低人数ね……部活は最低5人だけど、同好会から始めた方が妥当ね」
三谷先生は、パソコンのキーボードを叩く。すると、隣の印刷機から設立書が出てきた。
「同好会だと3人は必要よ……」
三谷先生は、俺に設立書を渡す。
「放課後……家庭科室準備室に来なさい」
三谷先生はそう言って、パソコンに視線を戻した。俺は職員室を出る。
 1年B組。俺は、設立書を眺めていた。
「おい、真斗まさと? 何俯いてんだ?」
ムードメーカーの青年であり、俺の友人杉山陽翔すぎやまはるとが俺の肩を叩く。すると、陽翔も設立書を見て
「真斗……同好会作るんの?」
と。驚いている。
「なんだぁ? 2人共……鳩が豆鉄砲喰らったような顔して……」
手先が器用な俺の友人……大野悠貴おおのゆうきが設立書を見る。
「真斗……誰を入部させんだ? あと2人必要だぞ?」
俺は席を立つ。そして陽翔と悠貴の前に平伏した。
「「どうしたんだ! 真斗!」」
2人はびっくりしている。目を丸くしているだろう。
「陽翔、悠貴……お願い! 入部してくれ! 正式に入部じゃなくてもいい! 仮入部でもいいから!」
俺は陽翔と悠貴にお願いした。
「いや、オレだって塾が……」
「俺だって、見たいアニメが」
「陽翔の見るもんは、週1のアニメだろ!」
2人はブツブツ言っている。
「毎日来なくていい! 時間がある時に来てくれたらいいから!」
俺は2人にお願いした。
「わーった、わーった……入るよ」
「塾の時間なったら帰してよ?」
陽翔と悠貴は了承してくれた。
「で? 真斗はどんな同好会作るんだ?」
陽翔が聞く。設立書にも同好会名を書く欄が設けられている。
「『おもキャンディ同好会』を作る」
俺は同好会名を言った。
「真斗が、キャンディか? しかも想い出って……」
「真斗……お前男だろ? クールな君には似合わないぞ……」
2人は反対した。
「これを見ても同じこと言えるのか?」
俺は三谷先生に見せた試作と同じものを2人に見せる。俺の試作したキャンディは、
繊細なデザインながら、艶のある枠に白や赤などの単色が合わさり、それが果物や動物を表している。一口サイズに均一に切られていて、口に入れたら、フルーツ系の味が口いっぱいに広がり、もっと味わいたいと脳が刺激され自然と次々とそのキャンディを手に取って口に入れてしまう。
専用器具などは使っていないが若干形が歪だが、試作品としてはいいと思う。
「うめぇ……」
「味も悪くねぇ」
陽翔と悠貴も納得した。
「これ、1人で作るの大変だろ?」
「なんか……の袋に小さいのがたくさん入ったキャンディじゃね?」
「言われてみれば……」
2人は俺の試作品を評価した。
 1年後、家庭科調理室。その後、三谷先生の協力の元『想い出キャンディ同好会』が設立された。だが、正式な部員は来なかった。最低でもあと2人は入部してくれないと、部活として認められない。
「高校オリエンテーションの日に、入部を薦める用紙作るべきだった……!」
俺は友達がいるが、不器用だった。というより、自分から話しかけることができなかった。陽翔も悠貴も俺から話しかけて友達になったんじゃない。2人が話しかけてくれたから友達になったんだ。
《一体……どうやったら部員増えるんだ?》
俺が頭を悩ませていると
ーーガラッ!
家庭科調理室の扉が開く。俺が扉に視線を向けると、1人の女子生徒が立っていた。
「どうしたの?」
俺が話しかけると
「入部してもいいですか?」
と。その女子生徒が聞いた。その女子生徒は黒髪でボサボサで下ろしていて、瓶底メガネを着けていて、鼻あたりにそばかすがある。
「何年生?」
俺が聞くと
「1年生です……」
と。答えてくれた。初めての後輩ができた。
「入って……名前とか聞いてもいい?」
蜜村みつむら……静香しずかです……」
俺は少しだけ嬉しかった。自ら足を運んで来てくれたんだ。逃すわけにはいかなかった。
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