〜幽霊の記憶〜

古波蔵くう

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3.月見里響の災い:『試練の旅路』

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 山の日の振替休日。神の屋敷前。俺と悠斗が再び訪れると、屋敷の前に黒い霊柩車が止まっていた。運転席には瞳さんがいた。
「藤井様、佐藤様……乗ってください」
瞳さんが言う。
「俺は無理だな……霊柩車って2人までだし」
悠斗が諦めようとすると
「いえいえ……霊柩車に見えますが、これはハリボテです、後ろに席がございます」
悠斗は後ろに座席があることが分かり、後ろの扉から上斜めの席に座わる。俺は瞳さんの助手席に乗る。
「今から、隣町に行きますよ」
瞳さんは霊柩車に模した車を走らせた。
 1時間後。かれこれ車を走らせて、かなり時間が経った。
「かなり入り組んで無いですか?」
俺が瞳さんに聞くと
「ナビでは、ここで合っていますけど」
瞳さんはナビ通りに車を走らせている。すると突然、車の走りがおかしくなる。なぜか、ガクガクと音がする。
「瞳さん? なんか車がおかしいので停めてみませんか?」
俺は提案すると。
「ええ、一旦停止します」
瞳さんは車を停める。俺と瞳さんが霊柩車から降りると、全部のタイヤがパンクしていた。
「スペアタイヤ4つありますか?」
俺が瞳さんに聞くと
「ええ、一応」
瞳さんはスペアタイヤを取り出す。
 10数分後。
「なんとか、タイヤの問題は解決した」
俺は車に乗り込むと
「バッテリーが上がっている」
瞳さんはまた霊柩車から降りる。俺は悠斗の乗っているところにある修理具を持ってくる。
 さらに10数分後。
「やっと、直った……」
瞳さんは、車の修理点検が無いのだろう。1つ直すたびに次の欠陥が見つかるというループだった。
「残り2時間……早く急ごう」
瞳さんは、再び霊柩車を走らせる。
 1時間後。ナビでは、あともう1時間で隣町に着く。
「なんで車が劣化したんだ?」
俺は、考え込んでいると。瞳さんが泣き出した。
「ひ、瞳さん! ど、どうしたんですか?」
俺は突然の事で、分からなかった。霊柩車がグラグラ揺れている。これじゃあ事故に遭ってしまう。すると、瞳さんは
「まんま」
などと言い始めた。知能が乳幼児になってしまった。
《ど……どうゆうことだ?》
俺は無免許だが、瞳さんが赤ちゃんの知能になった以上仕方が無いが運転するしかない。
「なんか、車が劣化した時から気配を感じる」
美咲が喋り出す。
「どういうこと?」
俺が問いかけると
「なんか、強力な何かの力で災いが起こっているみたい」
美咲が意味深なことを言う。
「それは非合理的すぎではないか?」
悠斗もいつの間にか起きていた。
 1時間後。
「あと、もう少し!」
俺はゲームで車を運転していたのか、事故に遭うことなく走行できていた。すると、
「うわぁ! やめろやめろ!」
悠斗が突然叫び出した。俺は徐行し悠斗の方を見る。
「悠斗! どうした!」
悠斗の席には、何もいない。なのに、悠斗は何かに怯えている。
「俺に近づくな! 消えろ!」
悠斗には、何か恐ろしいものが見えているみたいだ。
「金やるから許してくれ!」
悠斗は半狂乱に陥ったのだろうか。
「車の劣化、瞳さんの知能低下、悠斗の半狂乱……一体何が起きているんだ?」
俺は今までの負のスパイラルは何が原因か分からない。すると
「健太さん! 前見て!」
美咲が突然、叫ぶ。俺は急ブレーキを踏んだが
ーーキィィィー!
ーーガコン!
事故を起こしてしまった。霊柩車を道路標識にぶつけてしまった。車を降りて見てみると、黄色で『!』のついている道路標識だ。『その他注意』の看板で、よく心霊スポットなどに建てられている。
「とりあえず、後何歩か歩けば隣町に着くはず……」
俺は車から降りて、赤ちゃんになった瞳さんと半狂乱の悠斗を放って歩いて行った。
 隣町、入口。俺が目にした景色はまるで東京のような高層ビルが立ち並ぶ正に『ザ・都会』を思わせる風景だった。
「えーっと、確か瞳さんの荷物に地図があったはず」
俺は瞳さんの荷物から地図を取り出す。
「隣町の端……隣町3丁目のバス停」
俺は、隣町3丁目のバス停まで歩くことにした。
 隣町3丁目バス停。俺は歩き疲れて、バス停のベンチで一回休むことにした。
「ここのバス停に屋根があって良かった」
俺はバス停のすぐ横に自販機があったため、炭酸飲料を買って飲んだ。
「美咲、通行人に知っている人いるかな? この近くに桜井家があるみたいだけど」
俺は美咲が目を光らせるように体勢を変えると
「あれ、お母さんだ!」
美咲が喋る。丁度、向かいの道路に美咲の母親らしき人物が見えた。俺はその人を目で追いながら尾行する。すると、ピンク色の三角屋根の家に入って行った。
「あそこじゃね?」
俺は美咲に聞く。
「うん、目を凝らして表札を見てみて?」
美咲に言われた通りに、柵にかけられた表札を見ると
『SAKURAI』
と。ローマ字で書かれていた。俺は車が一台も通らない道路を渡り、桜井家にアポ無しで訪れてみた。
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