〜幽霊の記憶〜

古波蔵くう

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2.仲間たちの登場:『共にする冒険』

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 午前4時55分。美咲は、俺に話しかける。
「私の家族はどこなの?」
と。
「俺は知らないよ……ここ、空き家だったし」
俺は答えた。
「そっか……」
美咲は悲しげな口調で返答した。
「あと、その乗り移っているぬいぐるみさ……燃やさないといけないから、そこから出てくれない?」
俺は美咲に提案する。
「でも、憑依先ないよ?」
美咲の憑依先に俺は考え込む。
《幽霊ってスマホに憑依できたっけ? いや、多分無理だな……》
俺は思い切って
「俺に憑依して!」
と。言った。手段が無ければ自分を犠牲にするしかない。
「じゃあ、口開けて待ってて」
美咲は俺に命令する。口から入るみたいだ。俺が口を開けると、美咲は俺に乗り移った。ふわふわが前に倒れる。俺は、チャッカマンに火を灯し燃やす。
「美咲ってさ、どんな姿してるの?」
俺は燃えているぬいぐるみを見ながら、尋ねる。すると、美咲の声が聞こえる。
「洗面台の鏡に立ってみて?」
俺は同じ部屋にある洗面台の鏡を見つめる。すると、俺のはずなのに、鏡に映っているのは全く別人の人物だった。他校の制服を着た可愛い女子高校生、美咲なのだろう。
「鏡に映っているのが、美咲なの?」
俺は鏡の人物に話してみる。
「そうですよ!」
鏡の人物が答える。
「あともう少しで、学校始まるけどどうしよう……」
俺は不安になった。今は夏休み終盤。宿題はほぼ終わらして、親に内緒でこのひとりかくれんぼをやった。
「俺が学校でいると思ったら、極力出ないでね……」
と。いきなり、男が女みたいになったらみんなからドン引きされる。
「うん……もし、出たら誤魔化して」
美咲も賛成した。
 1週間後、昼食時間。
「健太……インスタライブ見たぞ」
悠斗が話しかけてくる。
「え? 見てたの?」
俺は驚く。インスタライブで視聴者は0だったはず。
「視聴者0って表示されていたけど?」
俺は事実を伝えた。
本気マジか?」
悠斗は首を傾げる。
本気マジだ」
俺はホントだと答える。
「実際に、俺に今……霊が取り憑いているし……」
俺は悠斗に伝える。
「ひとりかくれんぼでも、幽霊見れなかったんだろう? じゃあ嘘だな! 非合理的!」
悠斗は俺とは真逆で、オカルトに全く興味がない。なんでも合理的に考える。
「じゃあ、悠斗……俺と一緒に写真撮れよ」
俺が撮影するよう許可する。
「スマホの使用……校内禁止だって……」
悠斗はスマホの使用を拒む。
「周りを見てみろ!」
俺は教室を指差す。ほんの数人程度の生徒がスマホをいじっている。悠斗はスマホを出し、俺とツーショットを撮る。そして、写真を見ると
「え? 健太じゃない!」
悠斗は俺がいるはずの席に、俺と同じポーズをしている別人の女子高校生が写っていた。
「ヤベェんじゃねぇか? 霊媒師に相談しねぇと」
悠斗は電話をかけている。
 下校時、神の屋敷。
「佐藤様、藤井様……お待ちしておりました」
悠斗と共に訪れたのは、神の屋敷と呼ばれる所だ。ここで、霊媒師が来て、幽霊とお話しするらしい。
「わぁ……神秘的……」
俺の口から美咲の声が出てくる。
「美咲……今は出てきちゃダメって!」
俺が小声で呟くと、悠斗が目を丸くしていた。
「ど、どうした? 悠斗」
俺が悠斗に聞くと
「いや、健太が一瞬……女に見えた」
と。言う。
《美咲が乗り移っているせいか?》
俺と悠斗が室内を探索すると
「藤井様……こちらです」
俺はある紫色の扉へ案内された。
「失礼しまーす」
俺が扉を開けると、占い師の格好をした人が座っていた。
「あなたが、藤井健太さん?」
その霊媒師と思われる人は、俺に話しかける。声は女性だ。
「はい……そうです」
俺は、本人だと答えた。
「では、まずあなたの霊の霊力を調べるわ……申し遅れましたが、私は神谷瞳かみやひとみ
霊媒師は、瞳さんという人物らしい。
「んー……そんなに強くないわね、しかし……何か未練があって成仏できないのね」
と。瞳さんは答える。
「美咲に未練があるんですか?」
俺は瞳さんに聞いたのだが
「はい……家族との約束なんです」
と。美咲の声が俺に聞こえた。
「誰か、この藤井さんの住んでいる所に知り合いはいますか?」
瞳さんは美咲に語りかける。
理香りかちゃんがいたはず……」
美咲の知り合いが居るみたいだ。
「その、理香の電話番号とか分かるかしら?」
瞳さんは美咲に質問する。
「LINEのIDなら……フルネームは高橋理香たかはしりかで」
美咲が答えた。高橋理香。俺はスマホに同姓同名が居ないか探した。
「あ! 居た!」
俺はLINEの画面を見せる。LINE名では
『Rika.T』
と。書いてある。
「では、通話を繋いでくれる?」
瞳さんが、俺のスマホを渡すよう促す。俺はLINE通話で繋げて瞳さんに渡す。
「もしもし?」
『もしもし?』
高橋の声が聞こえる。
「私、霊媒師の神谷瞳と申します」
『え? 霊媒師が何の用ですか? あと、誰から私のLINEを知ったのですか?』
高橋は怪しんでいる。1年間同じクラスだったから、知っているはずもないか。
「実は、今あなたの友達である美咲さんと話していまして」
瞳さんが美咲の名前を口にすると
『え? 美咲は1年前に交通事故で亡くなったんじゃ……』
高橋の言葉で俺の頭で何かの映像が流れる。車のブレーキ音と衝突音、フロントガラスの割れる音、人と人がぶつかった鈍い音など。美咲が死ぬ直前の映像だ。
「それで、美咲さんのご家族の約束が果たせなくて成仏できていないらしいんです……美咲さんのご家族の引っ越し先とかわかりますかね?」
『美咲の家族なら、隣町まで行ったと思います……私のご両親とも仲が良かったので』
「ありがとうございます」
瞳はそういい、LINE通話を切った。
「美咲さん……家族に会わせましょう! そして、成仏させます」
瞳さんが宣言する。
「美咲の意見を聞かないで、勝手に決めないでください!」
俺は瞳さんに怒鳴ると
「健太さん……大丈夫です! 私も成仏したいと思っていたので」
と。美咲の声が聞こえる。俺は屋敷内にある鏡で美咲の姿を写す。
「ホントにいいのか?」
俺が再度問うと
「はい……健太さんにご負担をかけたくないので」
美咲は気持ちを変えなかった。俺の身体の心配まで考えてのことらしい。
「あと、瞳さん……隣町まで数時間かかりますけど、大丈夫ですか?」
と。聞くと
「私が車をご用意しますので、問題ありません」
と。答えた。
「いつにしますか?」
俺が瞳さんに問うと
「今年は山の日が振替休日なので、その日に行きましょう……連絡先の交換をお願いします」
瞳さんはあるQRコードを見せてくれる。俺は瞳さんと連絡先交換後、部屋を出た。
「どうだった?」
悠斗が聞いてきた。
「大丈夫だよ……今度の振替休日暇?」
俺は悠斗に問いかける。
「あぁ、別に用事は無いが?」
悠斗はスケジュール帳を持ち歩いている。ポケットに入るサイズで便利なのだろう。
「じゃあその日、同行してくれない? 瞳さんと一緒に隣町に行って美咲を成仏させたいから」
俺が要件を言うと
「分かった……俺も一緒に行く! 暇だし」
俺と悠斗は神の屋敷を出ていく。その時、俺たちは気付いてなかった。もう1人の霊媒師がいたことに
「あの霊力……半端じゃない! 何としても確保しなければ」
その霊媒師の名は月見里響つきみさとひびき
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