可愛すぎる君に、恋をした

古波蔵くう

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第二章:言葉にならない僕の告白

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 翌日、俺は学校に来ている。暑いから第一ボタンは開けている。教室にはエアコンは無いため、四隅に置かれた扇風機をフル稼働させている。それでも暑い。外はセミの大合唱。
《セミうるせぇ……》
今日の朝もコイツらのうるささで目が覚めた。俺が学校にいる理由は夏期講習だ。科目は世界史。特に夏休み中暇だったから、受けてみようと思った。すると、廊下から足音が聞こえてくる。靴の種類はローファーだ。俺が廊下側に目をやると、びっくりした。昨日出会った女の子だった。あの水滴が滴り落ちていた髪はかわいているが、キラキラ光る青い瞳で分かった。俺の通う高校には青い瞳の女子生徒なんて居ないから。その娘は、教室に入ると適当な席に着きライトノベルサイズの本を読み始めた。俺はその娘を観察する。その娘も制服を着ているが、俺の通う高校とデザインが違う。俺の通う高校の女子生徒の制服は蝶ネクタイじゃない。けど、その娘の制服のネクタイは蝶ネクタイだった。その娘は他校の生徒だ。俺は夏期講習の用紙を見てみる。すると
『※他校の生徒も参加可能』
と書いてあった。完全に見落としていた。本校の生徒のみだと思ってた。俺は時計を見る。まだ夏期講習が始まるまで30分ある。俺は席を立ち教室の後ろに回る。その娘の座った席は廊下側の窓際席の後ろから3番目。今、この教室には俺とその娘以外誰もいない。話しかけるチャンスだ。俺はその娘の席に一歩一歩近づく。話題ならある。今、その娘が読んでいるラノベ(ライトノベルの略語)だ。夢中に読んでいるってことはその娘も好きってことだ。俺は普段は本なんて読まないが、どんな話か気になっている本はまだある。特にアニメ原作とか。俺は唇が震える。なんとか声を出さないと、足がガクガク震える。
「あ……あのぉ……」
変な声だ。ヤバい、怪しいって思われてる。その娘は振り返る。青い瞳に汗だくで、背中から滝のように汗が出ている俺を映している。首を傾げるその娘。その仕草も可愛い。俺は次の言葉を発しようとするが唇が震えて上手く言えない。
《口がダメなら……手だ!》
俺は指でその娘の今読んでいるラノベを指差したのだが、その娘は手首に巻いているシュシュだと勘違いしてしまい、
「これ、欲しいの?」
と。聞く。俺は顔が真っ赤に染まり頭が爆発した。俺はその場で気を失った。可愛い女の子に話しかけようとしたら一発KOだ。
 保健室。俺は極度のコミュ障(コミュニケーション障碍)だった。忘れていた。俺は目を覚ますと、知らない天井だった。耳からはセミの大合唱が聞こえる。俺が上体を起こすと
「目が覚めた?」
と可愛い声が聞こえた。俺の目の前には、その娘が立っていた。俺は硬直した。硬直してる俺を見てからその娘は
《もしかして、緊張してる?》
と。思ったのだろうか。俺の緊張をほぐそうとしたのか、猫の『にゃー!』や『がおー!』とか鳴き声で脅かすが、俺は硬直したままだった。可愛い以外の何者でもない。すると、その娘は高校のバッグから鬼のお面を取り出して
「がおー!」
と。驚かせた。俺は恐怖に怯えた表情になる。
「やっと、驚いてくれた!」
その娘は、怖い鬼のお面を着けたまま言った。呆れた口調だ。俺は
「いきなり、脅かすなよ!」
と。眉間に皺を寄せた。これがいわゆるだ。
「だって、突然倒れたから……」
たぶん、今その娘は『むー』とでも言いそうな顔で頬を膨らませているだろう。
「今朝読んでた本はなんなの?」
俺の問いに
「これが欲しいんじゃなかったの?」
その娘は手首に巻いているシュシュを見せつける。ピンク色の可愛いデザインのシュシュ。
「すまん……勘違いさせた」
「えーっと、森奈緒もりなおさんの書いた『雨上がりのシンデレラ』だけど?」
と。ラノベのタイトルを教えてくれた。
「図書室にあったら読もうかな……」
俺が呟くと
「貸そうか?」
と。提案してくれる。
「いいの!?」
「うん、でもちゃんと返してね?」
「分かった!」
ここで、俺は気付いた。今の怖い鬼のお面みたいに顔を覆えば、俺はその娘と話ができると。
「そういや、自己紹介まだだったな……俺は夕河蒼太だ」
「私は、水澄藍みずすみあい
と。俺はこうして、藍と出会った。
 夏期講習(1日目)終了後。俺は目を瞑って、藍から雨上がりのシンデレラを借りた。藍は可愛すぎるから、直視できない。家に帰ってその借りた本を読み進めた。言葉巧みで、感情が分かりやすい。俺は速読の能力を持っているが、それでも早く読めない。なぜなら一文一文読むたびに乙女心のようなの気持ちに何度もなったから。俺は徹夜でその本を全ページあとがきまで全部読んだ。
 翌日、夏期講習(2日目)。俺は目の下にクマが出来ていた。
「にょみきったりょ……きゃしてくりぇて……ありぎゃとう……」
俺は『読み切ったよ……貸してくれて……ありがとう……』と。言ったのだが、藍はうまく発言していない俺を見てクスクス笑っていた。
 夏期講習中。俺は突然痛みに襲われた。目を覚ますと夏期講習が始まっていた。机の上には、チョークがあった。
《先生……俺のつむじ目掛けてチョーク投げたな!》
俺はノートと教科書を出した。
 夏期講習(2日目)終了後。藍は俺の前の席に座って
「この本、どうだった?」
と。聞く。俺は咄嗟に下を向いた。藍が可愛すぎるから。
「……何度も胸がキュンキュンした……続きが気になりすぎて、全ページ読んじゃったよ」
俺はボソボソと呟く。すると、藍は俺の顎を『クイッ!』と上げて
「ちゃんと面と向かって話して?」
と言う。俺は心の中で
《惚れてまうやろ!?》
と。叫んだ。顔がヤカンのように熱くなる。沸騰してる。頭から蒸気のような煙が上がっている。
「これからは、私の顔をちゃんと見て話すこと! 分かった?」
と命令された。俺の返答を待たずに、藍は帰って行った。俺はしばらくの間、フリーズしていた。動画の一時停止でぐるぐる回るやつが画面中心に現れるやつみたいに。俺も帰宅した。
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