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秋
劣等生の話
しおりを挟む本格的な寒さの秋になった
俺たちの日常は変わらない
変わったことといえば、前よりもずっと、イズミと俺が仲良くなったくらいだ
もう三年の俺達は、進路に向けて今更ながら悩み始めていた
いや…
俺達
じゃなくて
俺、か
「…なぁなぁ、ユミは進路どうするの?」
「んー、私はやっぱ演技続けたいなって思うから専門学校とかかなぁ…」
ユミは演劇部にすごくやりがいを感じている
人との付き合いが苦手なユミだが、引退した今も演劇部に顔を出すほど演劇部が…
演じることが好きなんだろう
「専門か…」
「ん、それか、養成所でもいいかなって」
ユミは授業はサボってばっかりいるようだったけど、意外とちゃんと考えていた
将来の夢もちゃんとある
俺はなんだかユミが羨ましかった
「イズミは?」
「僕は普通に大学行こうかなぁって」
そう言って出されたのは難関大学の資料で俺は苦笑した
「いやぁ、さすがだわ…」
「でも、僕はユミさんみたいにこれといった夢がないので…」
「…そっか」
俺はユミのような夢もなければ
イズミのような学力もない
「…」
なんとなく、二人と同じ進路に進めたらなとか思ってた
それで、ずっと一緒にいられたらって…
…でも、あまかった
「俺、まだ全然決まってないんだよなー!」
そう言って俺は笑った
久しぶりの作り笑顔
でも二人はそんなこと知る由もない
ただ、俺の笑顔に釣られて微笑み、「大丈夫だよ」「まだまだこれからだよ」って励ましてくれた
二人の優しさが眩しかった
本当はすごく胸が苦しかった
でも、見せない、悟らせない
「いやぁー!持つべきものは友だな!」
「ほんと!ありがとな」
そう言って俺は明るくおちゃらけて見せた
二人は全然気づいてないみたいだったけど本当は…
劣等感に押しつぶされそうだった
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