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冬
まだ知らない初詣
しおりを挟む新年
一月一日
「うぅ…寒い」
扉を開けると肌寒い風が私を包み込んだ
朝も早いせいか、吐く息は白く、まるでその寒さを具現化しているみたいだった
「…」
私はコートを羽織り直すと、ニット帽を被って外に出た
「……行ってきます」
そう、小声で告げた
……返事は帰ってこなかった
・:*+..:+・:*+.:+・:*+..:+・:*+..:+
「一緒に初詣に行こう」
って、誰からともなく言い出した大晦日の夜
私は嬉しかった
家族…ましてや親友と初詣に行くのなんて初めてだったから…
それにね、無性に会いたくなったんだ
イズミくんに…
そして、リョウに…
……なんで会いたくなったのかな?
寂しかったから?
辛かったから?
家に居ずらかったから?
「……全部、かな?」
なんて思いつつ、私は駅までの道のりを一人歩いた
初詣の場所は電車で三つ乗ったところにあるお寺
というわけで、私たちは駅集合だ
しばらく歩いてふと立ち止まって自分の手を見つめる
指先はほんのりと赤くなっていた
「はぁ…手袋…してくればよかった」
私は赤くなった指先を温めるように息を吹きかけた
「……」
その時、ふと思い出したんだ
クリスマスの夜にイズミくんが握ってくれた手の感触を…
「……あったかかったな」
また……触れたいな……
なんて思ってしまって慌てて首を横に振る
「…」
あぁ、だめだ
あの温もりを知ってしまったら
人の温度を知ってしまったら
また、寄り添いたくなってしまう
また、縋りたくなってしまう
「僕が大人になるまで待ってて欲しい」
「大人になったらユミさんにプロポーズします」
あの日のことを
あの言葉を
あの約束を
あの未来を
…期待してしまう
好きかも、なんて、思ってしまう
愛なんて…
まだ、知らないくせに
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