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冬
無関心の猟
しおりを挟む真っ暗な空間
何も聞こえない世界
本来賑やかであるはずのリビングは静かで孤独なものだった
「…」
テーブルの上には、ラップしてある蕎麦が置いてある
今日の夕飯かな?
きっと、母が作ってくれたのだろう
「あ、そういや…」
今日、大晦日か
「…」
普通の家庭なら一緒に蕎麦をすするのだろうか?
家族みんなで集まって賑やかなのだろうか?
そんなことを考えながら、俺は小さな溜息をつき、慣れた手つきでラップを外した
まだ器はほんのり暖かい
「…また、か」
俺は思わず苦笑する
俺には妹がいる
まだ幼い、小さな妹だ
きっと、親は、子供を寝かしつけているのだろう
いや…もしかしたら祖母のところだろうか?
…介護、大変だもんな
「……」
俺は一人蕎麦をすする
もう慣れたこの日常
でも、慣れちゃいけない、慣れたくないこの日常
このままだと寂しささえも忘れてしまいそう
「……早く、就職しよ」
そうしたらきっと、母を支えることが出来る
自分の思い描く家庭を築ける
寂しい思いなんて、もうしないで済む
「……いただきます」
俺は、生暖かい蕎麦をすすった
蕎麦は母の好む薄味だった
薄すぎて、正直よく味がわからない
でも不思議だな
「…すごくおいしい」
これが我が家の母の味なのだ
これが…
母から俺への僅かな愛情なのだ
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