ぬか床の妖精

6話 3日目③

　午後の講義を終え、俺は写真部の部室へと足を運んだ。

　今日はアルバイトもないから、カメラを片手にシャッターチャンスを心待ちにする。

　部室のドアを開けると、先輩たちの気さくな声が聞こえてくる。

　部長である関口寛人せきぐちひろと、副部長の安住雅人あずみまさと、そして同期の友人である水川大貴みずかわたいきの姿があった。

　いつも賑やかな部室だが、今日はいつもより少し静かだ。

「すいません、遅れました。」

「岩鬼君、大丈夫だよ。ちょうど月例会が始まるところだったから。」

「そうなんですか···間に合って良かった。今回は自信作が撮れたのでどうしても先輩方に見てもらいたかったので。」

「そっか、それは楽しみだな。」

「はい。」

　関口部長の落ち着いた声に、俺は緊張を解く。

　月例会では部員それぞれが撮影した作品を持ち寄り、互いに鑑賞し合う。

　部員たちの個性あふれる作品を見るのは、俺にとって楽しみな時間だ。

　今回のテーマは「景色」。

　窓の外に広がる夕焼け空を眺めながら、俺はシャッターを切った一枚を思い出す。
　
　順番に作品を発表していく。

　関口部長の作品はまるで絵画のような美しさ。

　特に、朝焼けの空を捉えた一枚は、見る者の心を惹きつける。

　副部長安住の作品は、どこか懐かしい風景を切り取ったものばかり。

　彼の作品からは温かい心が伝わってくる。

　水川の作品はいつもながらユニークだ。

　今回は雲の形が鶏のように見える面白い写真を持ってきた。

　そして俺の番が来た。

　緊張しながら、流れ星を捉えた写真を披露する。

　偶然の産物だが、自分なりに工夫した点などを説明する。

　先輩たちからは、温かいアドバイスをもらった。

　その後、部員全員で近くの公園へ出かけ、写真を撮影した。

　先輩たちの指導を受けながら、俺は写真の技術を磨いていく。

　シャッターを切る度に、心の中に新たな発見がある。
　
　夕焼けが辺りを染める中、今日の部活動は終了した。

　カメラを通して世界を見る喜びを改めて感じ、俺は部室を後にした。