BLショートストーリー

メタボ戦士

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足から始まる

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 ……まさか、こんなことになるなんて…

 あの時の俺は微塵も思っていなかった。


◇◇

「朔、大丈夫…?僕のせいで…」

 青ざめた尚の顔が、目の前にある。  

 雪道のせいでバランスを崩した幼馴染(鈴木尚)を庇って、俺(安西朔)は利き腕を負傷した。

「っ………」

 ……これはやばそうだな……多分折れてるかも……

 でも尚がいるし……平常心平常心……

「朔、本当にごめんね……」
 
「気にするなってこんなの男の勲章だよ。それよりお前に怪我がなくて良かった。」

 笑ってそう言ったのは、本心だった。

 尚が怪我をするより全然マシだと思ったから。


◇◇
 
 翌日、学校に行くと尚が泣きそうな顔で謝ってきた。
 
「本当にごめん…。僕がもっと注意していればこんな三角巾をつけないで済んだのに……」

「昨日も言ったけど気にするなって…尚の怪我がなくて良かったんだから。それに病院に行ってたら、医者に1ヶ月で治るって言われたしノープロブレム♪まぁ俺なら2週間で治せると思うし大丈夫大丈夫…」

 そう笑い返すと、何かを決意したように俺の目を見た。

「あのさ…骨折している間、僕が朔の利き腕の代わりになれないかな?」

「え…?」

「だから…ご飯とか、お風呂とかさぁ…」
 
 そこまで言って顔を赤くした。
  
 ……こいつ、どこまで世話してくれるつもりなんだ?

「悪いって。そこまでしてもらうわけには…」

「僕がしたいんだ。それに朔は一人暮らしでしょ?色々大変じゃん…だからやらせて。」

 尚はそう言って、俺の返事を聞く前に世話をする事を決めてしまった。

 こうして俺の骨折生活は、尚の世話付きで始まった。

 慣れない手つきでご飯を作ってくれたり、洗濯をしてくれたり…本当に至れり尽くせりだった。

 そして…一番困っていた風呂も、尚が手伝ってくれることになった。


◇◇

「朔、背中流すよ?」

「あぁ…悪いな」

 服を脱いで湯船に浸かると、尚が優しく背中を洗ってくれる。

 ……こいつ、本当に優しいな。

「朔、足も洗うよ?」

 そう言って尚が俺の足に触れた瞬間、全身に電流が走った。

「ア…ンゥ…!」

 思わず声が出た。

 ……自分で洗うときには気付かなかったけど、まさか俺の足がこんなに敏感だったなんて。

「え、朔?どうかした?」

 驚いた尚が、心配そうに俺の顔を覗き込む。

「いや、なんでもない。」

 なんとか平静を装ったが、心臓はバクバクしていた。

 それからというもの、尚が俺の足に触れるたびにドキドキするようになった。

 ……俺…変なのかな……尚に触られると反応しちゃうなんて……それとも…もしかして……
 
 そんなことを考えていると、尚が風呂上がりの俺の髪を乾かし始めた。

「朔の髪、サラサラで綺麗だね」

 そう言って、尚が俺の髪を撫でる。

 その優しい手に、またドキッとした。

「尚…」

 思わず名前を呼ぶと、尚が不思議そうな顔をする。

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

 そう言って誤魔化したが、もう誤魔化しきれない。

 ……俺は…たぶん…尚のことが好きだ。
 
 ただの幼馴染だと思っていた。

 ずっと…そう思っていた。

 でも違う。

 こいつの優しさに触れるたびに、こいつの笑顔を見るたびに、俺の気持ちはどんどん大きくなっていった。

 骨折が治ったら、伝えよう…この気持ちを。

 それまではもう少しだけ、尚の優しさに甘えていようと思う。

 終わり
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