恋愛ショートストーリー

メタボ戦士

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イヤーホール

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「ほな、そろそろ暗くなるし帰ろか。」

「あぁ…そうやな。」

 部活終わりの帰り道、二人並んで歩き出す。

 ウチと幼馴染の竜次は小学校からの腐れ縁で、高校もたまたま一緒。

 しかも、これまたたまたま同じ文芸部に入っとる。

 普段は部室で小説読んだり、どうでもええ話で盛り上がったり、今日も特に何があったわけでもない平和な一日やった。

「なぁ、時子」

「ん?何?」

 ……なんやろ?また変なこと言い出すんやろか。

 竜次はたまに変なこと言い出すからな…

 ウチは警戒しながら竜次の方を見ると何故か竜次はニヤニヤしてた。

 相変わらず、ちょっとチャラい茶髪に、シンプルなシルバーのピアスがキラリと光っとる。

「じぶん、最近イヤホンよう抜けへん?」

「は?」

 ……なんでそんなこと聞くんやろ。

 確かに最近、お気に入りのイヤホンがポロポロ取れて困ってたんやけど。

「せやで。なんでわかるん?」

「いやな、なんか見てたら、しょっちゅう耳押さえてるやん。『また取れた…』みたいな顔して」

「うっ…」

 ……見られてたんか。ちょっと恥ずかしいな。

「図星やなw」

「まぁそやねん。なんか知らんけどすぐ抜けんねん。」

「ふーん」

 竜次はそう言うと、いきなりウチの顔を覗き込んできた。

「ちょっ……何?顔近いやん。」

 ……ドキッとするんやけど。

 竜次顔だけは無駄にええからな。

 中身が幼稚やからそれで緩和されるけど…

「ちょっと見せてみ?」

「え?何を?まさかウチの耳の中見たいん?嫌なんやけど。」

「別にええやんか…ちょっとだけや。」

「嫌や……」

 そう言って顔を背けたんやけど、竜次は諦めへん。

 ぐいっとウチの肩を掴んで、無理やり顔をこっちに向けさせた。

「ええから見せろって」

 そう言うと、竜次はニヤニヤしながらウチの耳に手を伸ばしてきた。

「ちょ、や…!」

 って拒否する間もなく、竜次の指がウチの耳の穴をまさぐり始めた。

「ん…っ!」

 くすぐったいし、なんか変な感じやし、心臓がドキドキする。

 何より、帰り道とはいえ、人通りがないわけやないから恥ずかしい。

「うわ…ガバガバなイヤーホールやな…。もしかして、あそこもガバガバなんか?時子って意外とビッチっぽいもんな…ふっ…」

「ん…っ」

 ……いきなり耳に息を吹きかけられてゾクッとして変な声が出てもうた。

「なっ…!あんた、ホンマ最低!」

 ウチは堪忍袋の緒が切れて、迷わず渾身の力で竜次の股間を蹴り上げた。

「ぎゃあああああ!」

 竜次は悲鳴を上げて、その場にうずくまった。

 顔面蒼白で脂汗を浮かべてる。

 ざまあみろ!

「もう竜次なんか大嫌いや!絶交や!」

 そう言い捨ててスタスタと歩き出した。

 後ろで竜次がまだ呻いとるのが聞こえるけど、知らんもん!


 しばらく歩いて、やっと冷静になってきた。

 ……あんなことして、ちょっとやりすぎやったかな…。

 でも、あんな酷いこと言われてされたら仕方ないやん。


 次の日の放課後、文芸部の部室に入ると竜次が先に座って本を読んどった。

「うすっ…」

 気まずそうに、竜次はウチに声をかけてきた。

「…ちす」

 気まずい空気が流れる。

「……時子」

「何?竜次?」

「あのな…昨日のことホンマにごめん。言いすぎたしやり過ぎた。あれはほんまは冗談のつもりやったんやけど…」

 竜次はそう言うと、少し申し訳なさそうに顔を人差し指でぽりぽり搔いた。

「…ウチも、金玉蹴ったのはやりすぎたかもしれへん…ごめんな。」

 まさかウチが謝るとは思ってなかったんやろな、竜次は驚いた顔をしとった。

「いや、あれはわてが悪い。ホンマに反省してる。しばらくそういう下品なこと言わへんようにするし、いたずらは控えるわ。」

「……そう。」

 その後また少し沈黙が流れたけど、昨日みたいなピリピリした感じやない。

「なぁ、時子」

 竜次がゆっくりと顔を上げた。

 その目は、いつものふざけた感じやなくて、少し真剣やった。

「何?」

「あの…お前がいつもイヤホン抜けそうで困ってるの、実はずっと見とって気になっとったんや。だから前に電気屋行った時、なんか良さそうなイヤホン見つけてな…」

 そう言いながら、竜次はリュックから小さなピンク色のケースを取り出した。

「え?これ……」

「これよかったら昨日のお詫びや。ホンマは誕生日に渡そう思ったんやけどそれはまた別で渡すな。」

「………」

 驚いて、言葉が出えへんかった。

 まさか、こんなプレゼントを用意してくれるなんて思ってもみなかった。

「もらってくれるか?仲直りの印や。」

「ええの…?こんな高いもん…」

「ええねん…時子がイヤホンのせいで上手く聴かれへんの見てて可哀想やったから。これイヤーピースのサイズ何種類も入ってるみたいやからたぶん時子にも大丈夫なはずやぞ。」

 少し照れながら、竜次はそう言った。

「…ありがとう竜次」

 ウチはやっとの思いでそう言うと、胸の奥が温かい気持ちでいっぱいになった。

 さっきまでの気まずさとかが全部どこかに飛んでいってしまったみたいや。

「どういたしまして」

 竜次は少しはにかみながら笑った。

 夕焼け空の下、新しいイヤホンのケースを握りしめながら、ウチらはまた並んで歩き出した。

 ガバガバなウチのイヤーホールに、この新しいイヤホンはちゃんとフィットするやろか。

 そしてウチと竜次の腐れ縁も、これから少しずつ変わっていくのやろうか。

 まだわからへんけどええ方にいけばええと思うわ…なんてw

 終わり
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