転生した先がザマァ返しされた攻略相手の妹だった話

新しい生活 芋むき

まだ星がキラキラと瞬き、
夜の帳が明けきらない頃
白い息を吐きながら通りを歩く

街はまだ寝ている
いつもは人通りの多い道も独りで歩くと別の世界に来たみたいだ。
別の世界だけども‥と、ひとりごつ。


宿屋の裏に回る

やる気の無い男が1人芋の皮むきをしていた
「来たなホラ」
男はナイフを渡し
厨房の端にある長椅子にゴロンと横になって寝始めた。

手渡された剥きかけの芋。
皮にはまだ泥がついていた。
剥いたジャガイモには汚らしく泥が付着している

相変わらず仕事がザツい。

新しく汲んだ水をザーっと注ぐ。
両手から出した超音波振動を意識した、なんちゃって魔法でゴロゴロと芋の泥を落としていく。
超音波の威力は素晴らしく、手で擦ると面白いほど簡単に泥は取れた。


ごごえるように寒いが身体の周りに薄く空気の膜を張っている
水も通さない様にピッチりと‥

空気は最高の断熱材だ

見た目は薄着だが逆に暑くなり過ぎないように調整が必要なぐらい。

せっせと手を動かす。
いつもよりちょっとだけ厚く皮を剥いていた。
この剥いた後の“皮“が仕事の報酬だ。
剥き終わった芋を桶の中の水に漬けていく

ゴロンゴロン

剥くのは早い
前世で死ぬ程剥いた。
若い身体は覚えが早く、古い記憶との馴染みも良い
身体強化をかけると自分が加速されて、周りの時間から取り残された感覚になる。

ゴロンゴロン

単純作業は嫌いでは無い
無我の境地になれる

ゴロンゴロン

眠っていた身体が目覚める様だ。


剥き切って沈んだ芋をゴロゴロと転がす。
新しい水に替えて
古い水の中の澱粉が下に沈むのを待つ間
水瓶の水を交換する
こっちはサービスだ。この仕事が貰えなくなったら困る。

貧民ディナーセットはもうこりごり！


貧民スペシャルディナーの後、夜半に酷い空腹で目が覚めた。
朝まで持たなかったのだ。

空腹に耐えかねて街を彷徨い歩いて見つけた仕事だ。


水瓶内を適当に掴んだ藁でガシガシと洗って中の水を石組の厨房床に流す
モップで外に向かってゴミと共に掻き出す。

暖炉の灰をざっと集めて持って来た桶に入れた。
クッキングコンロも同様に灰を集める。
コンロの中には薪の燃え残りが入っていた。
ありがたく頂く。
軽く内部の煤をこそげ取り周りを軽く拭いて‥

灰は灰で色々使い道がある。
灰を買って回る業者も居るのだとかで量があるに越した事はない。


まだ寝ている男にいとまの挨拶をした。
帰る頃には街は朝靄に包まれていた。