1 / 10
第一話
しおりを挟む
プロローグはムービー形式で始まる。
主人公であるプレイヤー視点だが、ナレーションと共に自動で動きストーリーが進んでいく。
ゲームの導入としては少なくない方法ではある。ただ、VRでやられると操り人形になったみたいで少し気持ち悪い。
俺の気持ちを置いてきぼりに、ストーリーは粛々と進んでいく。
戦乱の世、繰り返される戦いに疲れた英雄は軍から身を引く。引き留める声を振り切って街を出た英雄は、森の奥に一人、ひっそりと暮らし始める。
森を切り開き、小さな小屋を建てる。その脇には小さな畑も。
木を切る姿、小屋を建てる姿、土を耕す姿が次々と切り替わり、森の中だった場所に人一人が暮らせるだけの空間が出来上がる。
男がそこで暮らし、季節が一巡した頃、男は森の中で少女を拾う。
小屋に連れ帰り、看病する男。目が覚める少女。だが少女は、記憶を失っていた。
そんなオープニングストーリーが語られて、視界は一度ブラックアウトする。
VR(ヴァーチャル・リアリティ)。その言葉は幾多の娯楽の一つとして生を受けた。
仮想現実とも呼ばれるその虚構の空間に、様々な物語を詰め、その世界でしか通用しないルールで無限の自由を謳歌する。
その娯楽は、ヘッドセットと呼ばれる被る物から始まり、次第にその範囲を映像と音のみならず、臭い、声、そして触覚まで網羅するに従って全身を覆うように進化していった。
VRはその汎用性の高さから、娯楽に限らず、教育にもビジネスにも、そして軍事にもその用途を広げていったが、娯楽は、多くの娯楽がそうであるように、黎明期の起爆剤となったのは、エロであった。
人の三大欲求と呼ばれる、食欲、睡眠欲、そして性欲。
生き物の原始的な欲望であるこれらのうち、食欲、睡眠欲はそれを拒み続けると死に至る。正に、生きていくための根源である。
そして性欲。拒んだとしてもそれ自身が自分の命に関わるわけではない。だが、時代の命に関わる最後の欲求は人類の歴史の重みを持って個人に迫る。
黎明期を遥かに過ぎ、多くの用途でVRが利用されるようになるにつれ、直接的なエロ表現を含まないジャンルへもVRは広がっていく。エロ表現を伴わないコンテンツが増えるに従って、他の娯楽と同様に、エロは害悪とのレッテルを張られ自主規制の枠組みが作られる。
しかし、一方では間接的な表現を含むソフトなエロ表現への需要は根強い。僅かに覗く日焼け跡、下着が見えそうな体勢、至近距離での会話等、日常的な表現の中に入れ込んだ様々なシチュエーションはジャンルを問わず多用され、コンテンツの人気の一端を確かに支えていた。
ナレーションが終わり、視線が切り替わる。
薄暗い小屋の中だ。窓は開け放たれて、そこから外の光が差し込んでいる。それに照らされて、ベットの上に身を起こした少女が見える。
黒髪のショートヘアの少女の体は小さい。どういう環境で育ったのか、栄養に問題があったのかは不明だが、痩せていて、見た目は十歳にも達していないように見える。
ポロンという音と共に、目の前にウィンドウが現れる。
「やあ、目が覚めたかい?」
選択肢はその一つだけ。
会話は選択式で行うらしい。
視線でセリフをターゲットして、頭の中で選択肢をノックする。ウィンドウが消えると、少女は口を開いた。
「ここは、どこですか」
か細い声。
森で倒れていたところを助けてきて、やっと目覚めたというところだろうか。
いくつかのウィンドウを選択して会話が続く。ほとんどのウィンドウには選択肢が一つしかなく、二つある時でも選択によって展開が変わるとは思えないものばかりだ、まだこれはチュートリアルの途中なのだろうか。
そうして会話を続けていくと、今度は入力用のウィンドウが広がる。
「名前を入力してください」
ああ、やっぱりまだチュートリアルの途中だったらしい。
自分の名前と、記憶のない少女の名前を決めて、物語は続く。
「ロックさん……」
『ロックでいいよ』『様をつけろよ』という選択肢から『ロックでいいよ』を選択して、少女、リーフと名付けた少女との二人暮らしが始まった。
主人公であるプレイヤー視点だが、ナレーションと共に自動で動きストーリーが進んでいく。
ゲームの導入としては少なくない方法ではある。ただ、VRでやられると操り人形になったみたいで少し気持ち悪い。
俺の気持ちを置いてきぼりに、ストーリーは粛々と進んでいく。
戦乱の世、繰り返される戦いに疲れた英雄は軍から身を引く。引き留める声を振り切って街を出た英雄は、森の奥に一人、ひっそりと暮らし始める。
森を切り開き、小さな小屋を建てる。その脇には小さな畑も。
木を切る姿、小屋を建てる姿、土を耕す姿が次々と切り替わり、森の中だった場所に人一人が暮らせるだけの空間が出来上がる。
男がそこで暮らし、季節が一巡した頃、男は森の中で少女を拾う。
小屋に連れ帰り、看病する男。目が覚める少女。だが少女は、記憶を失っていた。
そんなオープニングストーリーが語られて、視界は一度ブラックアウトする。
VR(ヴァーチャル・リアリティ)。その言葉は幾多の娯楽の一つとして生を受けた。
仮想現実とも呼ばれるその虚構の空間に、様々な物語を詰め、その世界でしか通用しないルールで無限の自由を謳歌する。
その娯楽は、ヘッドセットと呼ばれる被る物から始まり、次第にその範囲を映像と音のみならず、臭い、声、そして触覚まで網羅するに従って全身を覆うように進化していった。
VRはその汎用性の高さから、娯楽に限らず、教育にもビジネスにも、そして軍事にもその用途を広げていったが、娯楽は、多くの娯楽がそうであるように、黎明期の起爆剤となったのは、エロであった。
人の三大欲求と呼ばれる、食欲、睡眠欲、そして性欲。
生き物の原始的な欲望であるこれらのうち、食欲、睡眠欲はそれを拒み続けると死に至る。正に、生きていくための根源である。
そして性欲。拒んだとしてもそれ自身が自分の命に関わるわけではない。だが、時代の命に関わる最後の欲求は人類の歴史の重みを持って個人に迫る。
黎明期を遥かに過ぎ、多くの用途でVRが利用されるようになるにつれ、直接的なエロ表現を含まないジャンルへもVRは広がっていく。エロ表現を伴わないコンテンツが増えるに従って、他の娯楽と同様に、エロは害悪とのレッテルを張られ自主規制の枠組みが作られる。
しかし、一方では間接的な表現を含むソフトなエロ表現への需要は根強い。僅かに覗く日焼け跡、下着が見えそうな体勢、至近距離での会話等、日常的な表現の中に入れ込んだ様々なシチュエーションはジャンルを問わず多用され、コンテンツの人気の一端を確かに支えていた。
ナレーションが終わり、視線が切り替わる。
薄暗い小屋の中だ。窓は開け放たれて、そこから外の光が差し込んでいる。それに照らされて、ベットの上に身を起こした少女が見える。
黒髪のショートヘアの少女の体は小さい。どういう環境で育ったのか、栄養に問題があったのかは不明だが、痩せていて、見た目は十歳にも達していないように見える。
ポロンという音と共に、目の前にウィンドウが現れる。
「やあ、目が覚めたかい?」
選択肢はその一つだけ。
会話は選択式で行うらしい。
視線でセリフをターゲットして、頭の中で選択肢をノックする。ウィンドウが消えると、少女は口を開いた。
「ここは、どこですか」
か細い声。
森で倒れていたところを助けてきて、やっと目覚めたというところだろうか。
いくつかのウィンドウを選択して会話が続く。ほとんどのウィンドウには選択肢が一つしかなく、二つある時でも選択によって展開が変わるとは思えないものばかりだ、まだこれはチュートリアルの途中なのだろうか。
そうして会話を続けていくと、今度は入力用のウィンドウが広がる。
「名前を入力してください」
ああ、やっぱりまだチュートリアルの途中だったらしい。
自分の名前と、記憶のない少女の名前を決めて、物語は続く。
「ロックさん……」
『ロックでいいよ』『様をつけろよ』という選択肢から『ロックでいいよ』を選択して、少女、リーフと名付けた少女との二人暮らしが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
婚約破棄が聞こえません
あんど もあ
ファンタジー
私は、真実の愛に目覚めた王子に王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言されたらしいです。
私には聞こえないのですが。
王子が目の前にいる? どこに?
どうやら私には王子が見えなくなったみたいです。
※「承石灰」は架空の物質です。実在の消石灰は目に入ると危険ですのでマネしないでね!
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる