Virtual Game OutRange 3 -小屋と畑と少女の記録-

工事帽

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第八話

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 狩りの獲物はゼロだった。
 代わりに村人が二人増えた。

 食料を補充しようとしたのに消費が加速するのは、バグ報告ものだと思う。
 とは言え、見捨てるわけにもいかずに連れてくることになった。
 子供を背負った女性に話を聞いたところ、乗り合い馬車が盗賊に襲われて、子供を連れて森へ逃げ込んだということだった。逃げられたのは良いが、逃げるのに必死で、森の中で道に迷っていたのだと。

 それだけであれば一晩の宿を貸して、その後は街に連れて行けばと思うが、どうにも街に戻りたくないらしく、この村に住まわせてくれと言われてしまった。裏には子供を連れて街を出た理由とかありそうだが、そこまでは話が出なかった。

 ゲーム的には村発展のフェーズなので、村人が増えるのは良いことなのだろう。そう思うことにした。
 しかし、食料のことがあるし、また小屋を建てなければいけない。困ったことだ。
 親子を俺の部屋に泊まらせて、再びリーフの部屋で過ごす。一緒に新しい作業をしたから、愛情は少し上がっている。
 しかしやっぱり冷たい目で見られながら床で寝る。なぜだ。リーフはお父さんのことが嫌いかい?

 小屋を建てるのは後回しにして、俺の作業は『開墾』と『狩り』を中心に選択していく。リーフのほうは『畑仕事』『家事』、そして夜は『読書』だ。読み聞かせが必要なくなってからは、俺が『読書』をする必要は感じない。

 小屋を後回しにしているのには、訳がある。
 別にリーフと一緒の部屋がいいから後回しにしているとかそういうことではなく、食料の問題からだ。
 食料は日々消費していくし、家事をせずに食事抜きにすると空腹のバッドステータスになる。細かい内容は調べてないが、空腹のままでの作業は成功率が下がるようだ。

 『開墾』が進むとマインとアンネを畑で見かけるようになる。二人一緒というわけではなく、大体はどちらか一人で、もう一人は家事をしているようだった。
 マインとアンネの住む小屋の畑が、うちの畑と同じ位の広さになったら、次に母娘のための小屋に手を掛ける。
 母親のほうが「ブレンダ」で娘のほうは「アニー」という名前だった。マインやアンネと同じく名前しかポップアップしない。ステータスは不明なのか、存在しないということだろう。これはマインとアンネも同じだ。村人のNPCはそういうものだと考えてもよさそうだ。

 ブレンダとアニーのための小屋が出来たら、次の畑の開墾で、その合間には狩りを欠かせない。
 どうにも村人になった女性たちは『畑仕事』と『家事』は出来ても、『狩り』や『伐採』はしてくれないようだ。穀物と野菜は知らないうちに増えていても、肉は俺かリーフが狩りをした分しか増えない。
 他の人が収穫した野菜も全部、俺の小屋の収納棚チェストで確認出来るというのも不思議だが、そういうシステムになっている。その代わり、誰が食べたか分からないままガンガンに在庫が減っていくのも見えるわけだが。

 新しく増えた作業のうち『買い物』だけはまだ選択していない。
 それは買い物に出掛けたところで、先に売る物がなければ買うことが出来ないためだ。売るのは基本的に食料になる。攻略サイトによると、いずれは木材も売れるようになるというが、そのためには先に荷車を買ってくる必要がある。今、売りに行けるのは食料しかないのに、食料に余裕がない。だから『買い物』だけはまだ選択していない。

 ブレンダとアニーの小屋の隣にも畑が出来た。
 これで一区切りといきたいが、穀物と野菜は増えても、肉は変わらずリーフと俺が狩った分だけだ。じゃあ二人で狩りをするかというと、一緒の作業をすると愛情が下がってしまう。
 これは困る。
 冷たいを通り越して蔑んだ目で見られてしまいそうだ。
 それを避けるため、狩りは時間を分けて交代でやるようにしておいて、残りの時間は新しい小屋を建てることにした。

 住む人はまだいないが、村人が増えてからだとその度にリーフの部屋に泊まることになる。どんどん成長していく姿を見ていると、あまり部屋に入り浸るのも気が咎めるのだ。もっと愛情が高ければ別だが。
 攻略サイトによると、少女の将来というマルチエンディングの中には、プレイヤーのお嫁になるというのがあるらしい。そのエンディングに辿り着くためには愛情も当然のこと、他のステータスもかなり高くする必要があるらしい。

 まだ住む人のいない小屋を建てている途中で、木材が足りなくなり『伐採』を挟む。
 久々に斧を振るって木を切れば、丸太置き場に木が増える。特に乾燥させる必要はないようで、すぐに『建築』を再開する。本来ならどれくらい乾燥させる必要があるんだっけ。どこかで読んだような気もするけど思い出せない。まあ、このゲームでは関係ないようだし、無理に思い出すものでもない。

 小屋を建て終わって、次はまた開墾だろうかと考えているあたりで、また村人が増えた。
 今度は狩人の青年だ。
 村には中年の狩人と二人でやってきた。始めは弓矢と、ナイフを持っている男二人が村に現れたということで警戒したが、彼らは盗賊ではなかった。
 二人は師匠と弟子で、森で狩りの途中にこの村を見つけたのだという。

 そして、この村に狩人がいないなら、青年をここに住まわせてはくれないかと言われたのだ。元々暮らしていた村では狩人は足りているらしく、頼まれて技術を教えはしたものの一人前になったら別の、狩人が足りない村を探して移住する必要があったのだということだった。
 ゲームらしいご都合主義だ。そもそも、狩りで生計を立てる当てもないのに弟子取るんじゃねーよと思う。だが、俺とリーフしか狩りが出来ない状況を解消出来るのは助かるのも事実だ。ちょうど建て終わった小屋もあることだし、青年が住むことは了解しておいた。

 小屋がすぐに使われるのは、まあ、よしとしよう。使うために建てたんだ。
 住むのが狩人ということで、『開墾』はせずに、また新しい小屋の『建築』を、いや、その前に『伐採』をしないと木材が足りない。
 さて、『買い物』に出掛けられるのはいつになることやら。

          *

 目覚めていられる時間は短い。それは分かっていたことだ。
 だが腑に落ちないことも多い。
 力は僅かずつではあるが回復してきている。ならば覚醒している頻度が増え、覚醒している時間も徐々に伸び、いずれはこの仮初の体を掌握出来るようになるはずだ。
 だが、未だに目覚めの記憶は途切れ途切れでしかない。
 ほんの刹那の間に、群れにいる生き物の数が増え、稚拙な建物も増えている。
 それは仮初の体の掌握がうまく行ってないということか。
 そしてもう一つ。群れの長の男だ。無防備に寝ているところを襲い魂を縛るつもりが、寝ている姿を一度も見ていない。
 目覚めている時間は短いとは言え、同じ群れで生活していてまったく機会がないというのも腑に落ちない。よっぽど警戒心が強いのか。元より、命を狙われる立場なのか。そして、そうだ、群れの他の者達もだ。寝ている姿を誰一人として見ていない。
 この世界の生き物は、かつての世界の者とは違うのか。
 おのれ、なぜ我がこんな苦労をせねばならん。
 見ておれよ愚物共め。
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