25 / 55
閑話4 運営さんはもどかしい
しおりを挟む
カタカタカタカタ。
カタカタ、ターン。
PCファンのブオーンという低周波の合間から、キーボードを叩く音が聞こえる。
その日は珍しく、電話をしている者も、話し合いをしている者もなく、その部屋は静かだった。
カタカタカタ、ターン!
やがて静寂に耐えかねたのか、一人の男が口を開く。
「班長」
「ん?」
「監視っていつまでやるんすか」
「ああ」
「ああ、じゃねえっすよ。数日って話はどこいったんすか」
夜勤の度についでにやらされる監視作業。始めは数日だけという話だったはずのそれは、二週間を過ぎても続いていた。
「開発チームがなぁ」
「開発チームがなんだっていうんすか」
「新しい街のリソース管理のほうが重要だと言ってきてなぁ」
ターン!
「関係なくないっすか!」
関係なくはない。
NPC殺害が今後の大きな問題になる可能性も、新しい街に関連してリソース不足になる可能性も、現時点ではどちらがより深刻だとは断言出来ない。つまり、開発チームから見ての問題としては同質だ。
そしてリソースの問題は、街の建築が進むにつれてタイムリミットが発生する。
「そんないつまでも監視とか、やってらんないっすよ」
だが、そこには運営チームの『現状維持』への負担は考慮されていなかった。
「開発チームには伝えとくよ」
「伝えとくじゃねえっすよ。いつまでやるんですか」
「ああ」
「ああ、じゃないっすよ、ああ、じゃ。なら監視用に人追加してくださいよ。カメラの数が多すぎるんすよ。どっかでNPCが倒れてても、気づけませんよ。あれ」
「だよなあ」
カタカタカタカタ。
「たのみますよ、本当にもう」
カタカタカタカタ、ターン。
「よし、送った」
「なにをっすか」
「監視しきれないから早急な対応か、人員の増強をお願いしますってメール」
「え?」
「上のやつらも全員CCに入れてやったからな、これで動くんだろ」
「メールで大丈夫なんすか?」
「メールのほうがいいんだよ。聞いてないって言い張るヤツが出るからな」
「そういうもんっすか」
「そういうもんっすよ」
ターン。
カタカタ、ターン。
PCファンのブオーンという低周波の合間から、キーボードを叩く音が聞こえる。
その日は珍しく、電話をしている者も、話し合いをしている者もなく、その部屋は静かだった。
カタカタカタ、ターン!
やがて静寂に耐えかねたのか、一人の男が口を開く。
「班長」
「ん?」
「監視っていつまでやるんすか」
「ああ」
「ああ、じゃねえっすよ。数日って話はどこいったんすか」
夜勤の度についでにやらされる監視作業。始めは数日だけという話だったはずのそれは、二週間を過ぎても続いていた。
「開発チームがなぁ」
「開発チームがなんだっていうんすか」
「新しい街のリソース管理のほうが重要だと言ってきてなぁ」
ターン!
「関係なくないっすか!」
関係なくはない。
NPC殺害が今後の大きな問題になる可能性も、新しい街に関連してリソース不足になる可能性も、現時点ではどちらがより深刻だとは断言出来ない。つまり、開発チームから見ての問題としては同質だ。
そしてリソースの問題は、街の建築が進むにつれてタイムリミットが発生する。
「そんないつまでも監視とか、やってらんないっすよ」
だが、そこには運営チームの『現状維持』への負担は考慮されていなかった。
「開発チームには伝えとくよ」
「伝えとくじゃねえっすよ。いつまでやるんですか」
「ああ」
「ああ、じゃないっすよ、ああ、じゃ。なら監視用に人追加してくださいよ。カメラの数が多すぎるんすよ。どっかでNPCが倒れてても、気づけませんよ。あれ」
「だよなあ」
カタカタカタカタ。
「たのみますよ、本当にもう」
カタカタカタカタ、ターン。
「よし、送った」
「なにをっすか」
「監視しきれないから早急な対応か、人員の増強をお願いしますってメール」
「え?」
「上のやつらも全員CCに入れてやったからな、これで動くんだろ」
「メールで大丈夫なんすか?」
「メールのほうがいいんだよ。聞いてないって言い張るヤツが出るからな」
「そういうもんっすか」
「そういうもんっすよ」
ターン。
0
あなたにおすすめの小説
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる