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23.異世界少女は姿を見せる
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それから数日、工事は更に進む。村が街へと変貌していく。
新しく出来た外壁の上には、出来たばかりの可愛らしい石像が設置され、それは夜の職人がいない時間に、仮初の従者へと変わる。
アリスの生活は平和そのものだった。
夜になる度に石像を仮初の従者に変え、昼間は屋敷でお菓子を食べては、屋台まで出掛けていって食事を取る。
屋台では日毎に会ったことのない料理人が増えたりもしたが、それでも大半はクエストを手伝った相手だ。毎日のように料理を買っていくこともあり、新作料理があると声を掛けられる程度には、親しくなっていた。
その合間には、屋敷の入場制限の仕掛けを解読したり、プレイヤーの魔法、彼らはスキルと呼んでいたが、のマナの動きを調べたりもした。
プレイヤーの使う魔法は単純なものがほとんどだった。それでも、中には収納のようなマナの量から見て「割に合わない」ものや、何をしているのか分からないものもある。端的に言うならば、アリスの常識に当てはまらない使い方だ。
今まで会ったプレイヤーの魔法は、彼らが「魔法」と呼んでいる手段は、総じて稚拙だ。
それなのに、アリスですら苦労するような魔法を、スキルやメニューと呼んで、なんの苦労もなく使うことがある。
そんな歪さは魔法道具についても同じだ。
水を作り出す魔法道具はあっても、お湯を作り出す魔法道具はない。それは屋敷を建てたときにクラフトが言っていたことだ。作り出す水の温度を変えることが、そんなに難しいわけはない。それが難しいというのであれば、水を作れること自体がおかしい。難易度は作り出すことのほうがよっぽど上だ。
ついでに言えば、料理を作り出す魔法道具もない。
魔物から手に入れた素材をプレイヤーが加工して、料理は作られる。それは刃物で切ったり、火で熱を通したりと、いくつもの手順がある。しかし、一方では、短縮のスキルがある。プレイヤーがそう呼ぶスキルであれば、手順を飛ばして「料理」が出来上がる。
魔物も、魔物の素材だって、マナの塊に変質させることは可能だ。スキルの説明はそれで済む。それなら、マナから水を作り出すことと大差ない。それなのに、料理を作り出す魔法道具は存在しないらしい。
「アリスさん、新作の焼き串があるよ」
「あら、頂くわ」
「毎度」
顔見知りの屋台で焼き串を買う。
このやり取りにも慣れたものだ。
焼き串にかかっている茶色いソースは、プレイヤーたちの間では一般的なものらしいが、詳しくは知らない。割とよく出会う味だ。
串を口に入れて、一口分を咀嚼する。
弾力のあるそれは、少し固い。しかし、弾力があるのは表面だけだ。歯が食い込むと、中身はあっさりと噛み切れる。この歯ごたえには覚えがある。
「シー・スラッグかしら」
「ご名答。建材用に沢山狩られてるからな。肉のほうも安く手に入るのよ」
「あと十本頂ける?」
「あいよ」
コロンにはお菓子を貰ってばかりだから、たまには料理の差し入れをしてあげましょう。
(あら?)
屋台区画を見下ろす建物の一つ。そこの屋上にマナの塊があることに気づく。
前に握りつぶした塊と同じように、目で見える物体に込められているわけではない、マナだけの塊だ。
屋上から屋台区画を見下ろすようにあるマナは、随分と傲慢だ。
すぐに握り潰したくなるが、今度は調べることにしたことを思い出す。
だが、今は昼間。屋上に立って調べるには、少しばかり目立ち過ぎる。
(夜にしましょうか)
*
屋台区画は、夜でも街灯が灯り、少なくないプレイヤーがたむろしている。
日が暮れて作業を止めた職人たちが、食事を片手に話をしている。それは単なる雑談のこともあれば、仕事の手順の確認だったり、素材の融通だったりと様々だ。
それが出来るのは、屋台区画に多く灯されている灯りあってのこと。
屋台を上から照らす数多くの街灯の下は、昼間のように賑わっている。
ただし、それは街灯の下だけだ。
街灯よりも上には光は届かない。
真っ暗な夜空に紛れるように、アリスは建物の屋上にいた。
目的はマナの塊。
何もない空中に、留まったままのマナだ。
それがどんなものなのかを調べるためだ。
アリスが作る仮初の従者は、石像にマナの経路を作り、魔石を中心に据えることで動作する。
プレイヤーの作る魔法道具も、基本的には似たようなものだと思う。
魔物素材を組み合わせて、マナの方向性を決める。それが出来るのは、付術師や、その上位職の付与使い、だと言うが、変なルールだ。好きに作ればいい。それに、料理人と同じように、付術師になるにも付与が出来てからでなければ転職出来ないという。矛盾している。
では付与を覚えてから料理人になったらどうなるかと聞けば、付与が使えなくなるという。意味が分からない。
ともあれ、アリスが使う付与も、プレイヤーが使う付与も、どちらも物体をベースにしたものだ。
不可視のマナそのものは、同じ場所に留まるものではない。
物体に定着させることで、安定する。そうでなければ、術者が操り続けるか。
屋上にあるのはマナの塊だけだ。
術者の姿は見えない。
当然のことだと思う。操り続ける? 夜になるまでずっと? 現実的ではない。それに以前に潰したマナの塊も、術者の姿はなかった。
ゆっくりと、慎重に。マナの塊に影響を与えないように、調査を開始する。
目的は二つ。
このマナの塊は何をするためのものなのか。そして、どうやって維持しているのか。
ぐしゃりと握りつぶした。マナの残滓が震えるように消えていく。
調査で分かったのは、ラインがこの世界ではないどこかへ繋がっているということ。そして、マナの塊には仮初の従者に仕込んであるのと同じような、映像と記録の機能が仕組んであるということだった。
ラインは維持するためのものだと思えたが、映像と記録の機能がある以上は、映像と記録を伝達するラインでもあるのだろう。
アリスも各所に仮初の従者を配置している。
見知らぬ世界で無防備でいることは出来ない。
別荘を手に入れたのなら、それ相応の防備が必要だ。
だが、だからと言って、見知らぬ他人に見られるのを良しとはしない。
見られるということは、情報を盗まれるということだ。
見るということは、情報を手に入れるということだ。
見る者が有利になり、見られる者は不利になる。
だから残すつもりはなかった。
問題があるとすれば……
(気づかれたかしらね)
マナの塊の機能は映像と記録だ。
その映像には、マナの塊を調べているアリスの姿が映っていただろう。
壊した今となっては、記録を取り出すことは出来ないが、直接見られていた可能性は残る。
記憶にあるのは、アリスの屋敷の前でマナの塊を設置していた二人組。仮初の従者が見た映像だけでは、相手の素性など分かるはずもない。
この世界は夜。視界は暗く、見えるのは街灯に照らされた屋台の様子程度。
見ていない可能性は高いようにも思える。だが、ラインが世界の外に繋がっているのが気にかかる。
(まあ、べつにいいわ)
知られたら知られたまでのことだ。
*
「また消えてる!」
朝の静かな時間。出社して黙々と仕事の準備をする者が多いものの、それなりに挨拶はある。それでもボソボソという挨拶だけでは、パソコンのファンの音のほうがよほどうるさい。
特にここに置かれているのは開発用の高スペックのパソコンばかりだ。そこらで「ビジネス用」なんて名前で売られている、ブラウザとメールソフトしかまともに動かないパソコンとは違う。スペックに見合った強力なファンで冷やし続けないと、すぐに熱暴走を起こす。
そして、パソコンのファンは、起動直後が一番うるさい。
かくして、その声はファンの音を乗り越えたことで、他の社員の注目を集めることになった。
「どうしたよ」
「まただよ。またゲーム内のカメラ映像がいかれた」
「ああ?」
「この前もあっただろ。赤い眼の幽霊が出たやつ」
「ああ、お前が一人で椅子から転げ落ちてたやつな」
「そっちはどうでもいいんだよ」
見ればディスプレイに並んだウィンドウの一角だけ何もない。
残っている九個のウィンドウと同じものが、ピッタリはまりそうな隙間だけが残っている。
「ここにあったんだよ。帰る前に確認したんだから」
「つっても、残ってないんだったら、今からじゃ記録も取り出せないだろ」
カメラ映像といっても、リアルタイムで監視していては、本来の開発の仕事が出来なくなってしまう。だからカメラには数日の記録が出来るストレージも備えていた。
元々、各地にカメラを仕掛けたのはNPC破壊の理由を調べる手段の一つだった。それだけで手がふさがってしまっては、他の、NPCにログを仕込むなどの作業が出来なくなってしまう。
だが、カメラが無くなってしまったのであれば、ストレージの映像を引き出すことも出来ない。
「なんかバグあんのかな」
「いや絶対幽霊だよ。あの赤眼」
「でも記録はないんだろ?」
「いやいやいや。こんなこともあろうかと!」
そう言って、やけに嬉しそうにタスクバーからウィンドウを広げる。
広げたのは、キャプチャーソフトのウィンドウだった。
「?」
「キャプチャーしてたの、このディスプレイの表示を。これでカメラが壊れた瞬間が分かるぞ」
男はキャプチャーを停止して、保存されているファイルの再生を始める。
記録は男が昨日退社するところから、十個のウィンドウには、遠くにプレイヤーとNPCが映るだけの映像が続き、そのうちゲーム内では夜になった。そして……
「来た」
夜空を背景に、赤い眼が浮かぶ。
何度か、赤い眼の少女がカメラの前を横切る。そして白い手によって、ウィンドウが消滅した。
「ほらあ」
「ほら、じゃねえよ。あのカメラって、ゲーム内じゃ見えないはずだろ。なんで壊せるんだよ。それにあの場所どこだよ。街の中に見えたぞ」
「……あ」
プレイヤーには見えないように設定されているカメラ、街の中という攻撃禁止区域でそれが壊された。
赤い眼の少女。その名前はNPC破壊の容疑者として、開発チームに共有されることになった。
新しく出来た外壁の上には、出来たばかりの可愛らしい石像が設置され、それは夜の職人がいない時間に、仮初の従者へと変わる。
アリスの生活は平和そのものだった。
夜になる度に石像を仮初の従者に変え、昼間は屋敷でお菓子を食べては、屋台まで出掛けていって食事を取る。
屋台では日毎に会ったことのない料理人が増えたりもしたが、それでも大半はクエストを手伝った相手だ。毎日のように料理を買っていくこともあり、新作料理があると声を掛けられる程度には、親しくなっていた。
その合間には、屋敷の入場制限の仕掛けを解読したり、プレイヤーの魔法、彼らはスキルと呼んでいたが、のマナの動きを調べたりもした。
プレイヤーの使う魔法は単純なものがほとんどだった。それでも、中には収納のようなマナの量から見て「割に合わない」ものや、何をしているのか分からないものもある。端的に言うならば、アリスの常識に当てはまらない使い方だ。
今まで会ったプレイヤーの魔法は、彼らが「魔法」と呼んでいる手段は、総じて稚拙だ。
それなのに、アリスですら苦労するような魔法を、スキルやメニューと呼んで、なんの苦労もなく使うことがある。
そんな歪さは魔法道具についても同じだ。
水を作り出す魔法道具はあっても、お湯を作り出す魔法道具はない。それは屋敷を建てたときにクラフトが言っていたことだ。作り出す水の温度を変えることが、そんなに難しいわけはない。それが難しいというのであれば、水を作れること自体がおかしい。難易度は作り出すことのほうがよっぽど上だ。
ついでに言えば、料理を作り出す魔法道具もない。
魔物から手に入れた素材をプレイヤーが加工して、料理は作られる。それは刃物で切ったり、火で熱を通したりと、いくつもの手順がある。しかし、一方では、短縮のスキルがある。プレイヤーがそう呼ぶスキルであれば、手順を飛ばして「料理」が出来上がる。
魔物も、魔物の素材だって、マナの塊に変質させることは可能だ。スキルの説明はそれで済む。それなら、マナから水を作り出すことと大差ない。それなのに、料理を作り出す魔法道具は存在しないらしい。
「アリスさん、新作の焼き串があるよ」
「あら、頂くわ」
「毎度」
顔見知りの屋台で焼き串を買う。
このやり取りにも慣れたものだ。
焼き串にかかっている茶色いソースは、プレイヤーたちの間では一般的なものらしいが、詳しくは知らない。割とよく出会う味だ。
串を口に入れて、一口分を咀嚼する。
弾力のあるそれは、少し固い。しかし、弾力があるのは表面だけだ。歯が食い込むと、中身はあっさりと噛み切れる。この歯ごたえには覚えがある。
「シー・スラッグかしら」
「ご名答。建材用に沢山狩られてるからな。肉のほうも安く手に入るのよ」
「あと十本頂ける?」
「あいよ」
コロンにはお菓子を貰ってばかりだから、たまには料理の差し入れをしてあげましょう。
(あら?)
屋台区画を見下ろす建物の一つ。そこの屋上にマナの塊があることに気づく。
前に握りつぶした塊と同じように、目で見える物体に込められているわけではない、マナだけの塊だ。
屋上から屋台区画を見下ろすようにあるマナは、随分と傲慢だ。
すぐに握り潰したくなるが、今度は調べることにしたことを思い出す。
だが、今は昼間。屋上に立って調べるには、少しばかり目立ち過ぎる。
(夜にしましょうか)
*
屋台区画は、夜でも街灯が灯り、少なくないプレイヤーがたむろしている。
日が暮れて作業を止めた職人たちが、食事を片手に話をしている。それは単なる雑談のこともあれば、仕事の手順の確認だったり、素材の融通だったりと様々だ。
それが出来るのは、屋台区画に多く灯されている灯りあってのこと。
屋台を上から照らす数多くの街灯の下は、昼間のように賑わっている。
ただし、それは街灯の下だけだ。
街灯よりも上には光は届かない。
真っ暗な夜空に紛れるように、アリスは建物の屋上にいた。
目的はマナの塊。
何もない空中に、留まったままのマナだ。
それがどんなものなのかを調べるためだ。
アリスが作る仮初の従者は、石像にマナの経路を作り、魔石を中心に据えることで動作する。
プレイヤーの作る魔法道具も、基本的には似たようなものだと思う。
魔物素材を組み合わせて、マナの方向性を決める。それが出来るのは、付術師や、その上位職の付与使い、だと言うが、変なルールだ。好きに作ればいい。それに、料理人と同じように、付術師になるにも付与が出来てからでなければ転職出来ないという。矛盾している。
では付与を覚えてから料理人になったらどうなるかと聞けば、付与が使えなくなるという。意味が分からない。
ともあれ、アリスが使う付与も、プレイヤーが使う付与も、どちらも物体をベースにしたものだ。
不可視のマナそのものは、同じ場所に留まるものではない。
物体に定着させることで、安定する。そうでなければ、術者が操り続けるか。
屋上にあるのはマナの塊だけだ。
術者の姿は見えない。
当然のことだと思う。操り続ける? 夜になるまでずっと? 現実的ではない。それに以前に潰したマナの塊も、術者の姿はなかった。
ゆっくりと、慎重に。マナの塊に影響を与えないように、調査を開始する。
目的は二つ。
このマナの塊は何をするためのものなのか。そして、どうやって維持しているのか。
ぐしゃりと握りつぶした。マナの残滓が震えるように消えていく。
調査で分かったのは、ラインがこの世界ではないどこかへ繋がっているということ。そして、マナの塊には仮初の従者に仕込んであるのと同じような、映像と記録の機能が仕組んであるということだった。
ラインは維持するためのものだと思えたが、映像と記録の機能がある以上は、映像と記録を伝達するラインでもあるのだろう。
アリスも各所に仮初の従者を配置している。
見知らぬ世界で無防備でいることは出来ない。
別荘を手に入れたのなら、それ相応の防備が必要だ。
だが、だからと言って、見知らぬ他人に見られるのを良しとはしない。
見られるということは、情報を盗まれるということだ。
見るということは、情報を手に入れるということだ。
見る者が有利になり、見られる者は不利になる。
だから残すつもりはなかった。
問題があるとすれば……
(気づかれたかしらね)
マナの塊の機能は映像と記録だ。
その映像には、マナの塊を調べているアリスの姿が映っていただろう。
壊した今となっては、記録を取り出すことは出来ないが、直接見られていた可能性は残る。
記憶にあるのは、アリスの屋敷の前でマナの塊を設置していた二人組。仮初の従者が見た映像だけでは、相手の素性など分かるはずもない。
この世界は夜。視界は暗く、見えるのは街灯に照らされた屋台の様子程度。
見ていない可能性は高いようにも思える。だが、ラインが世界の外に繋がっているのが気にかかる。
(まあ、べつにいいわ)
知られたら知られたまでのことだ。
*
「また消えてる!」
朝の静かな時間。出社して黙々と仕事の準備をする者が多いものの、それなりに挨拶はある。それでもボソボソという挨拶だけでは、パソコンのファンの音のほうがよほどうるさい。
特にここに置かれているのは開発用の高スペックのパソコンばかりだ。そこらで「ビジネス用」なんて名前で売られている、ブラウザとメールソフトしかまともに動かないパソコンとは違う。スペックに見合った強力なファンで冷やし続けないと、すぐに熱暴走を起こす。
そして、パソコンのファンは、起動直後が一番うるさい。
かくして、その声はファンの音を乗り越えたことで、他の社員の注目を集めることになった。
「どうしたよ」
「まただよ。またゲーム内のカメラ映像がいかれた」
「ああ?」
「この前もあっただろ。赤い眼の幽霊が出たやつ」
「ああ、お前が一人で椅子から転げ落ちてたやつな」
「そっちはどうでもいいんだよ」
見ればディスプレイに並んだウィンドウの一角だけ何もない。
残っている九個のウィンドウと同じものが、ピッタリはまりそうな隙間だけが残っている。
「ここにあったんだよ。帰る前に確認したんだから」
「つっても、残ってないんだったら、今からじゃ記録も取り出せないだろ」
カメラ映像といっても、リアルタイムで監視していては、本来の開発の仕事が出来なくなってしまう。だからカメラには数日の記録が出来るストレージも備えていた。
元々、各地にカメラを仕掛けたのはNPC破壊の理由を調べる手段の一つだった。それだけで手がふさがってしまっては、他の、NPCにログを仕込むなどの作業が出来なくなってしまう。
だが、カメラが無くなってしまったのであれば、ストレージの映像を引き出すことも出来ない。
「なんかバグあんのかな」
「いや絶対幽霊だよ。あの赤眼」
「でも記録はないんだろ?」
「いやいやいや。こんなこともあろうかと!」
そう言って、やけに嬉しそうにタスクバーからウィンドウを広げる。
広げたのは、キャプチャーソフトのウィンドウだった。
「?」
「キャプチャーしてたの、このディスプレイの表示を。これでカメラが壊れた瞬間が分かるぞ」
男はキャプチャーを停止して、保存されているファイルの再生を始める。
記録は男が昨日退社するところから、十個のウィンドウには、遠くにプレイヤーとNPCが映るだけの映像が続き、そのうちゲーム内では夜になった。そして……
「来た」
夜空を背景に、赤い眼が浮かぶ。
何度か、赤い眼の少女がカメラの前を横切る。そして白い手によって、ウィンドウが消滅した。
「ほらあ」
「ほら、じゃねえよ。あのカメラって、ゲーム内じゃ見えないはずだろ。なんで壊せるんだよ。それにあの場所どこだよ。街の中に見えたぞ」
「……あ」
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