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第四話

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 べったりと抱き着いているレナの頭を撫でながら、とても釈然としない気持ちだ。
 背中に回されたレナの手は、強い力で俺の体を押さえつけていて、しばらくは離れそうにない。
 視界の半分はレナの頭で遮られ、息をする度に甘い匂いが香る。

 近くには棺を肩に担いだまま全身を晒した鬼の幼女のヤセと、金属鎧に巨大な盾を持つ女神官騎士のアヴァロンが居る。
 身動きが取れないのままで、アヴァロンに指示を出してヤセを回復してもらう。
 素っ裸だったヤセの身に、白いさらしと褌が復活し、丸見えだった胸と股間を隠す。

 HPが完全回復しても、元々、さらしと褌しか身に着けていないので、これ以上体を隠すことが出来ない。身に着けている物が少ないから、少しのダメージでさらしは破れるし、褌は落ちる。
 戦い終わった時のヤセはだいたい素っ裸だ。せめて、肩に担いだ大きな棺で体を隠せばいいものを、いつも肩に担いで仁王立ちしている。

 アヴァロンのほうは自分で回復しながら戦う鉄壁の盾役だ。戦闘中も常に回復魔法を使うので、全身を覆う金属鎧が綻びることはまずない。顔も金属の兜で隠れていて、素肌どころか顔を見ることも稀だ。

 抱き着いたままのレナは皮鎧姿で、敵の攻撃はちゃんと回避出来たらしく損傷はしていない。金属鎧のようなゴツさはないが、革の厚みと固さで柔らかさは感じられない。
 やはり釈然としない。
 いや、別に胸の感触とかそういう話ではない。

 今回の戦闘はアイテム集めだった。
 アリスとレナは無事にレベルがカンストしたものの、それで終わりではない。
 キャラそれぞれが装備している武具の強化や、スキルの強化にはアイテムが必要になる。アイテム集め自体は、強化するキャラで行く必要はないので、メインパーティーとの組み合わせのテストを兼ねてメンバーをいじってある。

 出て来る敵は大量の雑魚と、一体だけのボスという構成で、雑魚は弱い攻撃でも一撃で倒せる代わり数が物凄く多い。
 だからメンバーに鉄壁の盾職であるアヴァロンと、回避盾のレナの二枚盾を入れて、大きな武器で薙ぎ払えるヤセをアタッカーに入れた。
 ヤセは巨大な鈍器、という扱いの棺をぶん回して攻撃するため、一度の攻撃で雑魚を何体も倒せるし、鈍器としての特性で、ボスの防御力も半分は無視できる。
 戦い自体は想定通りに進み、ダメージも雑魚の攻撃でヤセのさらしと褌が壊れた程度、ボスの攻撃はアヴァロンが自己回復しながら完封した。

 だが戦闘後、いつもなら背後から抱き着いてくるレナが、抱き着いて来なかった。

 このゲームではキャラ毎に決まった性格がある。親密度で数パターンの行動に切り替わるくらいで、基本的な行動は変わらない。ガチャで引いてすぐに親密度を上げてしまえば、行動パターンは一種類と言って良い。

 それなのに、なぜ今回は抱き着いて来ないのか。
 少し離れた所で睨みつけてくる仕草が、ガチャで引いた直後の仕草と被って見えて、念のためにと親密度を上げるアイテムを使ってみたのだ。
 メニューで取り出した香水のような小さな瓶がかき消えるとすぐに、レナは俺に抱き着いてきた。

 親密度を上げるアイテムで行動が変化した。
 それは親密度が下がっていたという証拠になる。

 それがどうにも釈然としない。今までは親密度が下がるなんてことはなかった。だから最初の面倒さを回避するためにアイテムで親密度を上げるのだ。それに、アイテムを使わなくても、パーティーに入れて戦闘を繰り返しているうちに、親密度は上がる。

 そう、上がるのだ。普通は。
 アイテムを使わなくても、親密度は上がる。

 昨日まではレベル上げで毎日パーティーに入れていたし、今日は今日でアイテム集めのパーティーに入っている。毎日パーティーに入れていたのに、親密度が下がる。
 それは今までのゲームのルールとは違う。
 それが、とても、釈然としない。

 知らない間にゲームのルールが変わったのかとも思ったが、他のキャラに変化はないように思う。いつも通りの行動パターンだし、指示を無視されることもない。
 ならばレナだけがそうなのか。
 相変わらずネットにはレナの情報がない。

 やっと離れたレナの代わりに抱き着いてきたアヴァロンの、金属兜をポンポンと撫でながら、体に食い込む金属鎧の痛みに耐える。相変わらず、肘をガードするパーツが脇腹に食い込んで痛い。

 それが終わった頃には、ヤセはどこから取り出したのか、瓢箪の酒をラッパ飲みしている。鬼だから酒なんだろうけど、俺の胸くらいの背丈しかないぺったん幼女が酒を飲んでプハーとやっているのは、いろいろと微妙だ。
 ちなみに回復しないまま置いておいても、ヤセが酒を飲みだすのは変わらない。全裸のままで瓢箪を煽ることになる。全裸なのにどこから瓢箪を出すのかは分からない。

 いっそ、掲示板にレナのことを書き込んで見ようか。
 俺はそんなことを考えながら、酒を煽るヤセを見る。顔を上にあげて瓢箪を煽ると、自然と胸を張るような体制になるが、ぺったんはぺったんであり、元よりないふくらみが見えるわけではないのだと確認しながら。
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