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王子護衛騎士編
護衛騎士
しおりを挟む<前書き>――――――――――――――――――
本編は第15話までゆっくりと進む展開になっています。
テンポよく物語を追いたい方は、『王子護衛騎士編』の『ここまでの人物紹介』を先に読んでから続きを進めるのがおすすめです。
人物や関係性を把握した状態で読めるので、スムーズに物語に入り込めます。
じっくり読みたい方はそのままどうぞ。お好みのスタイルでお楽しみください!
<前書き>――――――――――――――――――
それから数日後、アレクシスは父王の前に呼び出された。謁見の間は広く、荘厳な装飾が施されているが、その空気はどこか重苦しい。王座に座る父王は、静かにアレクシスを見つめていた。
「アレクシス」
低く、威厳のある声が響く。
「はい、陛下」
アレクシスは一歩前に進み、膝をつく。王はゆっくりと視線を向け、淡々とした口調で言った。
「お前の護衛を、新たに選定することにした」
「……護衛、ですか?」
アレクシスは僅かに眉を寄せた。これまで彼の護衛は、王国でも選りすぐりの者たちが担当してきた。父王の命令とはいえ、新たな護衛をつける理由が分からなかった。
「クレストの新たな戦力――"サーディス"を、お前の専属護衛とする」
その名を聞いた瞬間、アレクシスの胸に僅かな驚きが走る。
(……サーディスを?)
思わず王の顔を見つめた。
武術大会で名を上げた無名の剣士。ゼファルとの死闘を繰り広げ、敗北したものの、その実力は王都中に知れ渡った。クレストへの加入が決まったばかりの彼女を、どうして自分の護衛に。
「彼女は未だ素性がはっきりしない者ではありますが……」
「だからこそ、そなたの側に置くのだ」
「……?」
王の言葉に、アレクシスは僅かに目を細める。
「クレストの中に埋もれさせるより、"監視"する方がいい」
静かに告げられた言葉に、アレクシスは納得した。
(つまり、まだ彼女を完全に信用しているわけではない、ということか)
確かに、"サーディス"には謎が多すぎる。なぜあれほどの実力を持ちながら、これまで名を知られていなかったのか。なぜゼファルに反応を示したのか。なぜクレストへの加入をためらわなかったのか。
そして――彼女は、本当に王に忠誠を誓っているのか?
王は、サーディスの危険性を考慮した上で、最も監視の目が届く場所に配置することを選んだ。
(……だから私の護衛に?)
護衛と称して監視し、同時に信頼を試す。
王らしいやり方だ、とアレクシスは思った。だが、そんな思考とは裏腹に、アレクシスの心には不思議な感覚があった。
(……面白い)
興味が湧いてしまっている自分に気づく。王子の護衛という立場ならば、彼女の素性や目的を探る機会も多くなる。
ゼファルとの間に何があるのか――。
なぜ、彼女はあの剣技を持ちながら、これまで名を伏せていたのか――。
その答えを知ることができるかもしれない。
「分かりました。彼女を受け入れましょう」
そう答えた時、王は満足げに頷いた。
「よい。サーディスにはすでに命じてある。すぐにでもお前の元へ送る」
「かしこまりました」
アレクシスは深く頭を下げながら、心の中で小さく息をついた。
(果たして、彼女はどう動く……?)
王都の風が、冷たく吹き抜けた――。
その風に乗せて、鐘の音が響く。
遠く、誰かが呟いた。
「……嵐の前触れだ」
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