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第1章 乙女ゲーの世界に転生しました
42 恋バナ
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私がこのイベントを消化するわけにはいかない。というか私とデートしたくらいで男子は諦めない。異性の誰かがデート相手でなければ意味がない。できればルーク様とデートに行ってくれるのが望ましいけど、今の二人の関係を考えるとそうなるのは考えにくい。どうにかしてこのイベントが消滅しないように保留しなくては。
「ここで話すのは何ですし、私の部屋に来てくださらない?」
「えっ!? り、リディア様のお部屋にですか!?」
「ええ。詳しい話は人目のないところでしたほうがいいですわ」
「私なんかがお邪魔してもいいのですか?」
「当たり前でしょう。あなたは私のお友達ですもの」
「あ、ありがとうございます! 友達の部屋にお邪魔するなんて初めてです」
「奇遇ですわね。私もお友達を招くのは初めてでしてよ」
「わ、私がリディア様の初めてを……」
クリスタは頬を赤くした。女同士なんだからそんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。それとも今になって恋愛絡みの相談を持ち掛けたのが恥ずかしくなってきたのかな?
「クリスタばかりズルいですわ!」
いつからいたのかアイナがひょっこり顔を出してきた。この子私の感知魔法を掻い潜って近付いて来たんだけど……ゲーム本編で魔法の叡智を極めた魔女の器にされたのは伊達ではないようだ。
「遊ぶためにクリスタを招くわけではなくてよ」
「わかっていますわ。私もリディアお姉様と同じ公爵家の娘です。必ずクリスタの役に立ってみせますわ」
「困りましたわね……クリスタがいいというなら私も構いませんけど」
「大丈夫です。アイナ様もよければ私の相談に乗って下さい」
「決まりですわね! 今日はリディアお姉様のお部屋でお泊り会ですわ!」
「話が終わったら普通に帰ってもらいますわよ?」
こうして私はクリスタとアイナを寮の自室に招くことになった。
△
私の部屋は従者として学院に同行してきたメイドのポーラが掃除をしてくれている。最初は怯え気味だったポーラも今の私と接するのに慣れてきたようで、普通に話をしてくれるようになった。
「それではごゆっくりどうぞ。何かあればお呼びください」
ポーラはテーブルの前に集結した私たちために紅茶を用意してくれた。
「ありがとう、ポーラ。いつも助かるわ」
「勿体ないお言葉。私のすべてはリディア様のためにあります。何なりとお申し付けください」
ポーラは教育が行き届いたメイドさながらにすっと部屋を出て行った。慕ってくれるのは嬉しいけど台詞が重い。
「それで、ラブレターの件でしたわね」
私は場を取りなすように咳をした。
「はい。一応全員にお断りの手紙を返そうかと思っているのですが、正直数が多すぎて……顔を知らない人からの手紙もあってどうしたらいいのか……」
「大した交流もないのに相手の都合を考えず一方的に想いを押し付ける輩に律儀な対応をする必要はありませんわ」
アイナがきっぱりと言い切った。
「私もアイナと同意見ですわ。返事をするのは却下。知らない人からの手紙は未開封のまま捨ててしまいなさい。何が入ってるかわかったものではありませんわ」
鞄がいっぱいになるほどの量だ。一々相手にしていたら切りがない。
「わかりました。手紙はお二人の言う通りに処理します」
「そうしなさい。告白に関しても呼び出しに応じる必要はありませんわ。忙しいと理由を付けるか、その場で断ってしまいなさい」
「そんなことをして大丈夫でしょうか? 怒らせてしまったりとか……」
「そうやって顔色を窺っていたら相手を付け上がらせるだけですわ。強気に対応していれば案外引き下がるものです。害意を向けられるようなら跳ね除けてしまいなさい。あなたにはそれだけの力がありますわ」
クリスタは聖女だ。潜在能力は真なる魔王に並んでいる。今の段階でもそこらの生徒が相手なら撃退できるはずだ。
とは言っても、クリスタは温厚な性格だ。いきなり強気に出ろと言われてすぐに実行するのは難しい。
「そうですわね……強硬手段が苦手ということであれば、他に良い考えもあると言えばありますわ」
「本当ですか?」
クリスタが食い付いてきた。私は一呼吸を置き、こう切り出した。
「誰かに恋人役をお願いしてみるのはどうかしら?」
クリスタに彼氏がいるとわかれば男子たちも諦めるはずだ。何よりここでイベントを発生させ、攻略対象たちの好感度を上げてきてもらいたいところだ。
「恋人役、ですか?」
「ええ。あなたにはお誂え向きに仲の良い殿方がいるではありませんか」
「それってあの三人のことですか?」
「あの三人のことですわ」
王位継承権第一位の王子、将来有望な天才騎士見習い、公爵家の嫡男。皆優良物件だ。ここはトゥルーエンド行きのためにもルーク様を推したいところだが、クリスタの気持ちを蔑ろにするわけにはいかない。
「ち、ちなみにあの三人のことはどう思っていますの?」
「どう、ですか。仲良くしてくれる男の子友達だと思っています」
思い切って訊いてみたけど、どうにも反応が薄い。乙女ゲーの主人公が恋愛に消極的なのはどうなのよ。もっと前のめりに恋していかないと。特にルーク様と。
「り、リディア様はどうなのですか? その、気になる人がいたりとか……」
クリスタがもじもじしながら訊ねてきた。アイナも「是非お聞かせください!」と身を乗り出してきた。私のことじゃなくてクリスタのことが聞きたいんだけどなー……。
「ここで話すのは何ですし、私の部屋に来てくださらない?」
「えっ!? り、リディア様のお部屋にですか!?」
「ええ。詳しい話は人目のないところでしたほうがいいですわ」
「私なんかがお邪魔してもいいのですか?」
「当たり前でしょう。あなたは私のお友達ですもの」
「あ、ありがとうございます! 友達の部屋にお邪魔するなんて初めてです」
「奇遇ですわね。私もお友達を招くのは初めてでしてよ」
「わ、私がリディア様の初めてを……」
クリスタは頬を赤くした。女同士なんだからそんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。それとも今になって恋愛絡みの相談を持ち掛けたのが恥ずかしくなってきたのかな?
「クリスタばかりズルいですわ!」
いつからいたのかアイナがひょっこり顔を出してきた。この子私の感知魔法を掻い潜って近付いて来たんだけど……ゲーム本編で魔法の叡智を極めた魔女の器にされたのは伊達ではないようだ。
「遊ぶためにクリスタを招くわけではなくてよ」
「わかっていますわ。私もリディアお姉様と同じ公爵家の娘です。必ずクリスタの役に立ってみせますわ」
「困りましたわね……クリスタがいいというなら私も構いませんけど」
「大丈夫です。アイナ様もよければ私の相談に乗って下さい」
「決まりですわね! 今日はリディアお姉様のお部屋でお泊り会ですわ!」
「話が終わったら普通に帰ってもらいますわよ?」
こうして私はクリスタとアイナを寮の自室に招くことになった。
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「それではごゆっくりどうぞ。何かあればお呼びください」
ポーラはテーブルの前に集結した私たちために紅茶を用意してくれた。
「ありがとう、ポーラ。いつも助かるわ」
「勿体ないお言葉。私のすべてはリディア様のためにあります。何なりとお申し付けください」
ポーラは教育が行き届いたメイドさながらにすっと部屋を出て行った。慕ってくれるのは嬉しいけど台詞が重い。
「それで、ラブレターの件でしたわね」
私は場を取りなすように咳をした。
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「大した交流もないのに相手の都合を考えず一方的に想いを押し付ける輩に律儀な対応をする必要はありませんわ」
アイナがきっぱりと言い切った。
「私もアイナと同意見ですわ。返事をするのは却下。知らない人からの手紙は未開封のまま捨ててしまいなさい。何が入ってるかわかったものではありませんわ」
鞄がいっぱいになるほどの量だ。一々相手にしていたら切りがない。
「わかりました。手紙はお二人の言う通りに処理します」
「そうしなさい。告白に関しても呼び出しに応じる必要はありませんわ。忙しいと理由を付けるか、その場で断ってしまいなさい」
「そんなことをして大丈夫でしょうか? 怒らせてしまったりとか……」
「そうやって顔色を窺っていたら相手を付け上がらせるだけですわ。強気に対応していれば案外引き下がるものです。害意を向けられるようなら跳ね除けてしまいなさい。あなたにはそれだけの力がありますわ」
クリスタは聖女だ。潜在能力は真なる魔王に並んでいる。今の段階でもそこらの生徒が相手なら撃退できるはずだ。
とは言っても、クリスタは温厚な性格だ。いきなり強気に出ろと言われてすぐに実行するのは難しい。
「そうですわね……強硬手段が苦手ということであれば、他に良い考えもあると言えばありますわ」
「本当ですか?」
クリスタが食い付いてきた。私は一呼吸を置き、こう切り出した。
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クリスタに彼氏がいるとわかれば男子たちも諦めるはずだ。何よりここでイベントを発生させ、攻略対象たちの好感度を上げてきてもらいたいところだ。
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