【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布

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13話

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地下工房での事件から数日。魔力を使い果たし、心身ともに消耗したカナデは、ヴォルフガングの徹底的な「過保護」という名の監禁生活を送っていた。

「カナデ、口を開け。これは隣国の聖域でしか採れないという、魔力回復に効く黄金の果実だ」
「団長……さっきからそればっかり。僕、もうお腹いっぱいです……」

ベッドの上で、ヴォルフガングに羽交い締めにされるように抱かれながら、カナデは弱々しく抵抗した。ヴォルフガングは、一度カナデを失いかけた恐怖からか、以前にも増して距離感がバグっている。今や、カナデがトイレに行くのでさえ「私が抱えて運ぶ」と言い出す始末だ。

そんな、甘苦しい(物理的に重い)空気の中、ゼクスが青い顔をして飛び込んできた。

「閣下! 大変です! 表門に『カナデ殿の婚約者』を自称する男が乗り込んできました!」

「…………何?」

ヴォルフガングの周囲の空気が、一瞬でマイナス四十度まで急降下した。
カナデの口に運びかけていた黄金の果実が、パキリと音を立てて凍りつき、粉々に砕け散る。

「婚約者……? カナデ、心当たりは」
「な、ないですよ! 僕、前世でも今世でも、そんな浮いた話一度も……」

「……ならば、その詐欺師を今すぐこの場で粉砕してくれる」

ヴォルフガングはカナデをベッドに縫い付けるように抱きしめ直すと、そのままの勢いで立ち上がり、カナデを肩に担いで表門へと向かった。

---

騎士団の表門前。
そこに立っていたのは、カナデの地味な容姿とは対照的な、宝石を散りばめたような豪華な衣装を纏った美青年だった。
長い銀髪をなびかせ、優雅に扇子を広げるその姿は、どこから見ても異国の貴族だ。

「ああ、私の可愛いカナデ! やっと見つけましたよ。田舎の村で約束した、あの誓いを忘れたわけではないでしょう?」

男はカナデを見るなり、大袈裟に両手を広げて駆け寄ろうとした。
だが、その前にヴォルフガングの放った「氷の壁」が地面から突き出し、男を阻む。

「……一歩でも近づいてみろ。その首を、貴国の国境まで飛ばしてやる」

「おや、恐ろしい。あなたが噂の、カナデを誘拐したという野蛮な騎士団長様ですか? 私は隣国の伯爵家が嫡男、セシル。カナデとは幼少期に、将来を誓い合った仲なのですよ」

セシルと名乗った男は、不敵な笑みを浮かべて一枚の古びた紙を掲げた。そこには確かに、幼い文字で「おおきくなったら、せしるくんのおよめさんになります」と書かれ、カナデの指紋らしき血印まで押されている。

「な……!? それ、僕が五歳の時に、お菓子の家を作ってくれるって言われて書かされたやつじゃ……!」
カナデの記憶が蘇る。近所に住んでいた、やけに顔の綺麗な意地悪なお兄ちゃん。それがセシルだった。

「ほう。……菓子一つで身を売ったのか、カナデ」
ヴォルフガングの声が、地獄の底から響くような低音に変わる。

「違います! あれは、子供の遊びで……!」

「遊びでもなんでも構いません。この証書は有効です。さあカナデ、そんな物騒な男の腕から降りて、私の元へ来なさい。隣国には、もっと素晴らしい『もふもふ』がたくさんいますよ?」

セシルが指を鳴らすと、彼の背後から、見たこともない色鮮やかな「極楽鳥」や、宝石の鱗を持つ「トカゲ」が次々と現れた。

(わあ、珍しい動物……!)
動物好きのカナデの目が、一瞬だけ輝く。

それを見逃すヴォルフガングではなかった。
「……なるほど。貴様は、死にたいようだな」

ヴォルフガングから溢れ出した魔圧が、騎士団の建物をミシミシと軋ませる。
「ゼクス、騎士団全員に告ぐ。今この瞬間から、我が国は隣国と戦争状態に入る。……原因は、私のカナデを狙った不敬罪だ」

「団長! 戦争始めないで!!」
カナデはヴォルフガングの首にしがみつき、必死に彼をなだめた。
「僕はどこにも行きません! 団長のお世話係なんですから! セシルさんも、その証書は無効です!」

「……ふふ、つれないですねカナデ。ですが、あなたのその『器』の力、私の国でも非常に重宝されるのですよ。いずれ、力尽くでも奪い去って差し上げましょう」

セシルは優雅に一礼すると、動物たちを連れて風のように消え去った。
嵐の去った後、残されたのは、これまでにないほど「嫉妬」と「独占欲」でドロドロになったヴォルフガングだった。

「……カナデ。今夜は、一睡もさせんぞ」
「えっ、今からですか!?」

「当たり前だ。貴様の体に、菓子一粒分も、あの男の記憶を残さぬよう……徹底的に、私の愛を刻み込んでやる」

「だから、愛が重いって言ってるじゃないですかーーー!!」

ヴォルフガングに抱えられ、寝室へと強制送還されるカナデ。
隣国の参戦により、カナデを巡る争奪戦は、ついに国家レベルの「重すぎる愛」の戦いへと発展していくのだった。
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