【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布

文字の大きさ
17 / 20

17話

しおりを挟む
「――懐かしいですね。まさか、ここに戻ってくることになるとは」

カナデは、馬車から降りて目の前の巨大な建造物を見上げた。そこは、かつて彼が「無能」の烙印を押され、不当に解雇された王立魔導師団の本部だ。
今回の「里帰り」は、魔導師団が隠し持っていたカナデの私物(主に前世の知識を記したノートや、聖獣たちのカルテ)を正式に回収するための公務である。

「カナデ。そんな薄汚い建物を見て、昔の嫌な記憶を呼び覚ますな。不快なら、今すぐこの敷地ごと更地にして、貴様のための『もふもふ公園』に作り変えてやってもいいんだぞ」

隣で軍服の襟を正しながら、ヴォルフガングが物騒な提案をする。彼はカナデがここで受けた仕打ちを一つ残らず聞き出しており、その怒りは未だに沸点を超えたままだ。

「いいですよ、そんなの! 荷物を取りに行くだけですから」

二人が中に入ると、かつての同僚たちが集まってきた。
「お、おい、あれを見ろ。カナデじゃないか?」
「なんだその格好は……。あんな高級な服、どこで盗んだんだ?」

クスクスという卑屈な笑い声。だが、彼らはまだ気づいていなかった。カナデの背後に立つ、マントを翻した男が誰であるかに。

「あら、カナデ。まだ生きていたのね」
現れたのは、かつてカナデを最も扱き使っていた女性魔導師だ。
「せっかく追い出したのに、何をしに来たの? また雑用でもさせてほしいっていうなら、あそこの汚物溜めの掃除でも――」

瞬間。

パキィィィィィィィィン!!

彼女の足元から、黒い氷の棘が爆発的に突き出した。彼女の顎の数ミリ下で止まったその鋭利な氷は、彼女の喉元を物理的に凍りつかせ、悲鳴さえも封じる。

「……貴様。今、私の妃に何と言った?」

ヴォルフガングが、一歩前に出る。その歩みのたびに、廊下の壁がひび割れ、魔導師たちが大切に保管していた魔法具が次々と爆発していった。

「ヴォ、ヴォルフガング騎士団長!? なぜ、閣下がこんな場所に……!」

「私は、我が妻の遺失物を取りに来ただけだ。……だが、予定を変更する。この建物には、有害なゴミが多すぎる。清掃が必要だな」

ヴォルフガングが指をパチンと鳴らすと、騎士団の精鋭たちが一斉に突入してきた。
「魔導師団の全会計帳簿、および研究記録を押収しろ。不正の証拠が見つかり次第、全員を地下牢へ連行する。抵抗する者は、私が直接、氷の彫刻にしてやる」

「そ、そんな!? これは魔導師団の独立権が――」

「独立権など、私の感情一つで踏み潰せる。……カナデに泥を投げたその手、二度と杖が握れぬよう凍らせてやろうか?」

ヴォルフガングの放つ絶望的な威圧感に、魔導師たちは次々と膝を突き、失禁する者まで現れた。
カナデは呆気に取られながら、その光景を眺めていた。

「団長……ちょっとやりすぎじゃないですか?」

「足りないくらいだ。カナデ、貴様のノートはどこだ。私が、純金製のケースに入れて運ばせてやる」

カナデが自分の荷物を見つけると、ヴォルフガングはそれを自ら抱え、さらにはカナデを横抱きにして、かつての敵たちの前を悠々と歩き去った。

「見ていろ。カナデを捨てた代償は、貴様らの組織の崩壊をもって支払ってもらう。……カナデ、帰るぞ。こんな汚れた空気、吸い続けると貴様の魔力が濁る」

「はいはい。……でも、ありがとうございます。ちょっとだけ、胸が空きました」

カナデがヴォルフガングの胸元に顔を寄せると、それまでの「破壊神」のような形相が、一瞬で「メロメロな大型犬」へと溶けていった。

「……ふん。ならば、帰宅したら報酬をもらおう。今夜は、貴様を『清掃』する番だ」

「話が卑猥な方向に逸れるのが早すぎます!!」

こうして、カナデの復讐劇は、ヴォルフガングの圧倒的な暴力と愛によって、一瞬で幕を閉じた。
魔導師団はその後、不正の数々が暴かれ、歴史からその名を消すことになる。

しかし、この一件により「騎士団長が少年に狂っている」という噂は、いよいよ王国の隅々まで知れ渡ることになり、新たな「もふもふ騒動」が巻き起こる予兆となるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

処理中です...