【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布

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17話

「――懐かしいですね。まさか、ここに戻ってくることになるとは」

カナデは、馬車から降りて目の前の巨大な建造物を見上げた。そこは、かつて彼が「無能」の烙印を押され、不当に解雇された王立魔導師団の本部だ。
今回の「里帰り」は、魔導師団が隠し持っていたカナデの私物(主に前世の知識を記したノートや、聖獣たちのカルテ)を正式に回収するための公務である。

「カナデ。そんな薄汚い建物を見て、昔の嫌な記憶を呼び覚ますな。不快なら、今すぐこの敷地ごと更地にして、貴様のための『もふもふ公園』に作り変えてやってもいいんだぞ」

隣で軍服の襟を正しながら、ヴォルフガングが物騒な提案をする。彼はカナデがここで受けた仕打ちを一つ残らず聞き出しており、その怒りは未だに沸点を超えたままだ。

「いいですよ、そんなの! 荷物を取りに行くだけですから」

二人が中に入ると、かつての同僚たちが集まってきた。
「お、おい、あれを見ろ。カナデじゃないか?」
「なんだその格好は……。あんな高級な服、どこで盗んだんだ?」

クスクスという卑屈な笑い声。だが、彼らはまだ気づいていなかった。カナデの背後に立つ、マントを翻した男が誰であるかに。

「あら、カナデ。まだ生きていたのね」
現れたのは、かつてカナデを最も扱き使っていた女性魔導師だ。
「せっかく追い出したのに、何をしに来たの? また雑用でもさせてほしいっていうなら、あそこの汚物溜めの掃除でも――」

瞬間。

パキィィィィィィィィン!!

彼女の足元から、黒い氷の棘が爆発的に突き出した。彼女の顎の数ミリ下で止まったその鋭利な氷は、彼女の喉元を物理的に凍りつかせ、悲鳴さえも封じる。

「……貴様。今、私の妃に何と言った?」

ヴォルフガングが、一歩前に出る。その歩みのたびに、廊下の壁がひび割れ、魔導師たちが大切に保管していた魔法具が次々と爆発していった。

「ヴォ、ヴォルフガング騎士団長!? なぜ、閣下がこんな場所に……!」

「私は、我が妻の遺失物を取りに来ただけだ。……だが、予定を変更する。この建物には、有害なゴミが多すぎる。清掃が必要だな」

ヴォルフガングが指をパチンと鳴らすと、騎士団の精鋭たちが一斉に突入してきた。
「魔導師団の全会計帳簿、および研究記録を押収しろ。不正の証拠が見つかり次第、全員を地下牢へ連行する。抵抗する者は、私が直接、氷の彫刻にしてやる」

「そ、そんな!? これは魔導師団の独立権が――」

「独立権など、私の感情一つで踏み潰せる。……カナデに泥を投げたその手、二度と杖が握れぬよう凍らせてやろうか?」

ヴォルフガングの放つ絶望的な威圧感に、魔導師たちは次々と膝を突き、失禁する者まで現れた。
カナデは呆気に取られながら、その光景を眺めていた。

「団長……ちょっとやりすぎじゃないですか?」

「足りないくらいだ。カナデ、貴様のノートはどこだ。私が、純金製のケースに入れて運ばせてやる」

カナデが自分の荷物を見つけると、ヴォルフガングはそれを自ら抱え、さらにはカナデを横抱きにして、かつての敵たちの前を悠々と歩き去った。

「見ていろ。カナデを捨てた代償は、貴様らの組織の崩壊をもって支払ってもらう。……カナデ、帰るぞ。こんな汚れた空気、吸い続けると貴様の魔力が濁る」

「はいはい。……でも、ありがとうございます。ちょっとだけ、胸が空きました」

カナデがヴォルフガングの胸元に顔を寄せると、それまでの「破壊神」のような形相が、一瞬で「メロメロな大型犬」へと溶けていった。

「……ふん。ならば、帰宅したら報酬をもらおう。今夜は、貴様を『清掃』する番だ」

「話が卑猥な方向に逸れるのが早すぎます!!」

こうして、カナデの復讐劇は、ヴォルフガングの圧倒的な暴力と愛によって、一瞬で幕を閉じた。
魔導師団はその後、不正の数々が暴かれ、歴史からその名を消すことになる。

しかし、この一件により「騎士団長が少年に狂っている」という噂は、いよいよ王国の隅々まで知れ渡ることになり、新たな「もふもふ騒動」が巻き起こる予兆となるのであった。
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