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3話
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王宮での「もふみが魔力の源」発言から数日。
俺と恭介は、王宮騎士団の訓練場へと足を運んでいた。
理由は単純だ。召喚術師としての能力を測るために、恭介がどれほどの魔力を行使できるかテストする必要があるらしい。
(……いや、俺を連れてくる必要あるか?)
俺は今、恭介が特注で作らせた「神獣専用キャリーバッグ(もふもふクッション付き)」の中から、外の様子を眺めていた。
中身が男の俺としては、自分の足で堂々と歩きたいのだが、恭介が「陽太が地面の砂で汚れるなんて耐えられない」と泣いて縋るので、妥協してここに収まっている。
「さて、キョウ殿。まずはあちらの標的に向かって、攻撃魔法を放ってみていただけますか?」
案内役の騎士――名前は確か、バルド……じゃなくて、エドガーと言ったか。
鋼の鎧に身を包んだ厳つい顔の男が、恭介に促す。
「わかりました。……陽太、ちょっと失礼するぞ」
恭介がバッグの中に手を入れ、俺の背中を「撫で、撫で、撫で」と三回、妙に丁寧に撫で回した。
相変わらずこいつの手は温かくて、撫でられると脳がしびれるような快感に襲われる。
「きゅぅ……(ん、あ……何すんだよ)」
「よし、チャージ完了だ」
恭介がキリッとした顔で前方を向く。
彼が指先を標的に向けて軽く振ると、そこから巨大な火球が放たれた。
ドォォォォォン!!
耳を劈くような爆音と共に、頑丈な石造りの標的が粉々に砕け散る。
訓練場にいた騎士たちが、一斉に静まり返った。
「な、なんという威力だ……。詠唱もなしにこれほどとは……」
「ええ。陽太の『もふみ』が、私の魔力を活性化させてくれましたから」
恭介は真面目な顔で、とんでもないデタラメを抜かした。
嘘をつけ。お前、さっきの撫で方はただの趣味だろ。元からチート魔力を持ってた癖に。
だが、騎士たちは「おお……!」「やはり神獣様の毛並みには魔力が……!」と、感銘を受けたように俺を拝み始めている。
(おい、やめろ。そんなキラキラした目で見るな。俺はただの26歳だ)
居心地が悪くなった俺は、バッグの奥に潜り込もうとした。
しかし、そこにエドガーが近づいてくる。
「キョウ殿、失礼ながら……その神獣様に、私も一度ご挨拶をさせていただいても?」
エドガーの顔は相変わらず怖いが、その瞳は期待に満ち溢れている。
恭介は一瞬、独占欲を滲ませるように眉を寄せたが、今後の円滑な関係のためか、渋々と俺をバッグから取り出した。
「……陽太が嫌がらない程度なら」
俺は恭介の手から、エドガーの大きな掌へと移された。
ゴツゴツとした、剣ダコのある騎士の手。
エドガーは、壊れ物を扱うような手つきで俺の頭に指を添えると、おそるおそる撫で始めた。
「……っ!! こ、これは……なんという、至高の触り心地……」
「え、あ、きゅん?(そんなに?)」
「指が吸い込まれるような弾力。それでいて絹のような滑らかさ。心が……私の荒んだ心が洗われていくようだ……!」
エドガーの背後に、騎士たちがワラワラと集まってくる。
皆、普段は魔物と戦っている強面揃いのはずだが、今の彼らの目は完全に「可愛いものに屈した男」たちのそれだった。
「副団長、ずるいですぞ! 私にもその神獣様を!」
「私にももふみを分けてくれ! 昨日の夜勤で疲れてるんだ!」
「わ、わわっ! きゅぅ! きゃうん!(おい、囲むな! 順番を守れ! いや、そもそも触るな!)」
もみくちゃにされかける俺。
だが、屈強な男たちの指先が俺の毛並みを探るたび、神獣の身体は「あ、そこいいかも……」と勝手にリラックスし始めてしまう。
その時だった。
「――そこまでだ、諸君」
冷ややかな、けれど絶対的な拒絶を含んだ声が響く。
恭介だ。
彼はいつの間にか騎士たちの輪を割り込み、俺をエドガーの手からひったくるように奪い返した。
「陽太が困っている。……これ以上の『もふみ』の一般開放は許可できない」
恭介の瞳は笑っていなかった。
執着、というほど重苦しくはないが、大切な宝物を他人に触られた子供のような、むっとした表情。
「あ、キョウ。悪い、怒んなよ。俺は別に平気――」
俺が鳴き声で宥めようとすると、恭介は俺をぎゅっと抱きしめ、自分の鼻先を俺の耳に埋めた。
「……陽太。お前、他の男の匂いがついてるぞ。帰ったらすぐにブラッシングと、最高級の香油で手入れしてやるからな」
「きゃう!?(いや、風呂でよくね!? っていうか近い!)」
騎士たちの羨望の眼差しを浴びながら、俺は恭介に抱えられ、足早に訓練場を後にした。
親友の腕の中は、相変わらず驚くほど落ち着くけれど。
人間の姿に戻った時のことを考えると、今から頭(というか毛並み)が痛くなる陽太だった。
俺と恭介は、王宮騎士団の訓練場へと足を運んでいた。
理由は単純だ。召喚術師としての能力を測るために、恭介がどれほどの魔力を行使できるかテストする必要があるらしい。
(……いや、俺を連れてくる必要あるか?)
俺は今、恭介が特注で作らせた「神獣専用キャリーバッグ(もふもふクッション付き)」の中から、外の様子を眺めていた。
中身が男の俺としては、自分の足で堂々と歩きたいのだが、恭介が「陽太が地面の砂で汚れるなんて耐えられない」と泣いて縋るので、妥協してここに収まっている。
「さて、キョウ殿。まずはあちらの標的に向かって、攻撃魔法を放ってみていただけますか?」
案内役の騎士――名前は確か、バルド……じゃなくて、エドガーと言ったか。
鋼の鎧に身を包んだ厳つい顔の男が、恭介に促す。
「わかりました。……陽太、ちょっと失礼するぞ」
恭介がバッグの中に手を入れ、俺の背中を「撫で、撫で、撫で」と三回、妙に丁寧に撫で回した。
相変わらずこいつの手は温かくて、撫でられると脳がしびれるような快感に襲われる。
「きゅぅ……(ん、あ……何すんだよ)」
「よし、チャージ完了だ」
恭介がキリッとした顔で前方を向く。
彼が指先を標的に向けて軽く振ると、そこから巨大な火球が放たれた。
ドォォォォォン!!
耳を劈くような爆音と共に、頑丈な石造りの標的が粉々に砕け散る。
訓練場にいた騎士たちが、一斉に静まり返った。
「な、なんという威力だ……。詠唱もなしにこれほどとは……」
「ええ。陽太の『もふみ』が、私の魔力を活性化させてくれましたから」
恭介は真面目な顔で、とんでもないデタラメを抜かした。
嘘をつけ。お前、さっきの撫で方はただの趣味だろ。元からチート魔力を持ってた癖に。
だが、騎士たちは「おお……!」「やはり神獣様の毛並みには魔力が……!」と、感銘を受けたように俺を拝み始めている。
(おい、やめろ。そんなキラキラした目で見るな。俺はただの26歳だ)
居心地が悪くなった俺は、バッグの奥に潜り込もうとした。
しかし、そこにエドガーが近づいてくる。
「キョウ殿、失礼ながら……その神獣様に、私も一度ご挨拶をさせていただいても?」
エドガーの顔は相変わらず怖いが、その瞳は期待に満ち溢れている。
恭介は一瞬、独占欲を滲ませるように眉を寄せたが、今後の円滑な関係のためか、渋々と俺をバッグから取り出した。
「……陽太が嫌がらない程度なら」
俺は恭介の手から、エドガーの大きな掌へと移された。
ゴツゴツとした、剣ダコのある騎士の手。
エドガーは、壊れ物を扱うような手つきで俺の頭に指を添えると、おそるおそる撫で始めた。
「……っ!! こ、これは……なんという、至高の触り心地……」
「え、あ、きゅん?(そんなに?)」
「指が吸い込まれるような弾力。それでいて絹のような滑らかさ。心が……私の荒んだ心が洗われていくようだ……!」
エドガーの背後に、騎士たちがワラワラと集まってくる。
皆、普段は魔物と戦っている強面揃いのはずだが、今の彼らの目は完全に「可愛いものに屈した男」たちのそれだった。
「副団長、ずるいですぞ! 私にもその神獣様を!」
「私にももふみを分けてくれ! 昨日の夜勤で疲れてるんだ!」
「わ、わわっ! きゅぅ! きゃうん!(おい、囲むな! 順番を守れ! いや、そもそも触るな!)」
もみくちゃにされかける俺。
だが、屈強な男たちの指先が俺の毛並みを探るたび、神獣の身体は「あ、そこいいかも……」と勝手にリラックスし始めてしまう。
その時だった。
「――そこまでだ、諸君」
冷ややかな、けれど絶対的な拒絶を含んだ声が響く。
恭介だ。
彼はいつの間にか騎士たちの輪を割り込み、俺をエドガーの手からひったくるように奪い返した。
「陽太が困っている。……これ以上の『もふみ』の一般開放は許可できない」
恭介の瞳は笑っていなかった。
執着、というほど重苦しくはないが、大切な宝物を他人に触られた子供のような、むっとした表情。
「あ、キョウ。悪い、怒んなよ。俺は別に平気――」
俺が鳴き声で宥めようとすると、恭介は俺をぎゅっと抱きしめ、自分の鼻先を俺の耳に埋めた。
「……陽太。お前、他の男の匂いがついてるぞ。帰ったらすぐにブラッシングと、最高級の香油で手入れしてやるからな」
「きゃう!?(いや、風呂でよくね!? っていうか近い!)」
騎士たちの羨望の眼差しを浴びながら、俺は恭介に抱えられ、足早に訓練場を後にした。
親友の腕の中は、相変わらず驚くほど落ち着くけれど。
人間の姿に戻った時のことを考えると、今から頭(というか毛並み)が痛くなる陽太だった。
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