親友と一緒に異世界転生したら俺だけ神獣だった件 ~伝説の召喚術師になったあいつの溺愛が物理的に重すぎます~

たら昆布

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4話

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 恭介が王宮の魔導士たちと難しい会議に出席している間、俺はついに「自由」を手に入れた。

(ふふふ……。恭介のやつ、俺が昼寝してる隙に部屋を出ていきやがって。今こそこの窮屈な客室を抜け出し、王宮探検といこうじゃないか)

 俺はふかふかの特注ベッドから飛び降りると、短い足を器用に動かして、半開きになっていた扉の隙間から廊下へと躍り出た。
 目的地は、部屋の窓から見えていた広大な「王宮庭園」だ。
 あそこなら、恭介にベタベタ触られることもなく、のんびりと日向ぼっこができるに違いない。

 ペタペタ、と肉球が廊下の冷たい石床を叩く。
 時折すれ違うメイドたちが「あら、神獣様お一人?」「なんて可愛らしいお散歩かしら……」と頬を染めて見守ってくれるが、今の俺には「もふらせないオーラ」がある。たぶん。

 迷路のような廊下を抜け、ようやく辿り着いた庭園は、まさに天国だった。
 見たこともない鮮やかな色の花々が咲き乱れ、芝生は手入れが行き届いていて、寝転がってくださいと言わんばかりの弾力だ。

「きゅう~……(最高だな、おい)」

 俺は人目をはばかり、芝生の上でゴロゴロと転がった。
 中身は26歳の男だが、この神獣の身体は、芝生の感触に抗えないようにできているらしい。
 しばらく独りで「犬か狐か判別不能なもふもふの舞」を繰り広げていると、不意に、上から影が落ちてきた。

「……お前、面白い動きをするな」

「きゅっ!?(誰だ!?)」

 跳ね起きると、そこには一人の少年が立っていた。
 年齢は12、3歳くらいだろうか。プラチナブロンドの髪に、吸い込まれそうなほど深い紫色の瞳。
 身につけている服は驚くほど上等で、少年というよりは「美少年の完成形」といった佇まいだ。

(げっ……。お偉いさんの子供か?)

 面倒なことになりそうだ、と俺は退散しようとした。
 しかし、少年は驚くほど素早い動きで俺の前に回り込み、ひょいっと抱き上げた。

「待て。逃げることはないだろう。……ふむ、これが噂の『伝説の神獣』か」

「きゅう、きゅう!(降ろせ少年! 俺はこれでも人生の先輩だぞ!)」

 少年は俺を胸に抱き寄せると、じっと俺の顔を見つめた。
 恭介のような「可愛い!」という全開の溺愛オーラではない。
 何か、得体の知れないものを観察するような、冷静で少し寂しげな視線だ。

「……温かいな。この国の人間は、皆、裏で何を考えているかわからない。だが、お前は……ただの食いしん坊の獣に見える」

「きゅん?(何だと、失礼な。俺は高貴な神獣様だぞ……いや、中身は日本人だけど)」

 少年はふっと口角を上げた。その笑顔には、子供らしからぬ影があった。
 彼はそのまま芝生の上に座り込み、俺を膝の上に乗せた。

「私はレイ。……お前がこの国の『光』だと言うなら、少しの間だけ、私の話し相手になってくれないか?」

 レイと名乗った少年は、俺の背中を、恭介よりもずっと優しく、控えめな手つきで撫で始めた。
 その手が微かに震えていることに気づいたとき、俺の中の「大人(サラリーマン)」の部分が、少しだけ疼いた。

(しょうがねーな。恭介が来るまでの間だけだぞ)

 俺は逃げ出すのをやめ、レイの膝の上で小さく丸まった。
 レイは驚いたように目を見開き、それから本当に嬉しそうに、何度も俺の頭を撫でた。

 ――そんな平和な時間は、背後から飛んできた「ドスの利いた声」によって打ち砕かれた。

「……そこで私の陽太に触れているのは、どこのどなたでしょうか?」

 振り返ると、そこには会議を爆速で切り上げてきたらしい恭介が立っていた。
 笑顔。
 完璧なまでの笑顔だが、その背後には物理的な魔力の圧(プレッシャー)が渦巻いている。

「き、恭介!? 早かったな!」

「レイ様。第一王子である貴方が、他人の契約獣に許可なく触れるのは感心しませんね」

(だい、だいいちおうじぃぃぃ!?)

 俺は心の中で絶叫した。
 膝を貸してもらっている相手が、この国の次期国王候補だったなんて聞いていない。
 恭介はズカズカと歩み寄ると、レイから奪い取るように俺を抱き上げた。

「陽太、勝手に外に出ちゃダメだって言っただろ? 悪い虫がついたらどうするんだ」

「きゅうん(虫じゃない、王子だ!)」

「キョウ殿、そんなに怒るな。私はただ、この神獣と話をしていただけだ」

 レイは涼しい顔で立ち上がったが、その視線はどこか名残惜しそうに俺を追っていた。
 恭介は俺を自分の胸に強く押し付け、レイを牽制するように一歩下がる。

「とにかく、今日の『もふみ補給』が足りません。陽太、帰ってじっくり……そう、じっくりとお仕置き(ブラッシング)ですからね」

(だからお仕置きの内容が甘すぎるんだよ、この変態召喚術師!)

 俺の必死なツッコミは、今日も誰にも届かないまま、俺たちは王子の前を後にしたのだった。
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