砂漠の夜に刻む誓い 〜考古学者は若き族長に愛でられる〜

たら昆布

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17話

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 あの一夜以来、ザイドの遥希に対する態度は、独占欲はそのままに、驚くほどの慈愛を孕んだものへと変わっていた。

 「遥希、あまり根を詰めるな。砂漠の太陽はお前が思うより過酷だ」

 「大丈夫ですよ、ザイド様。……この文様、やはりあなたの家系に伝わる紋章と一致します」

 宮殿のテラス。資料を広げる遥希の腰を、ザイドは当然のように腕で囲っている。

 触れ合う肌の熱が心地よく、遥希は知らず知らずのうちに微笑んでいた。

 だが、その平穏は、不快なエンジンの音によって破られた。

 宮殿の門前に、数台の大型SUVが砂煙を上げて停車する。車体には、遥希が見慣れた大学のロゴが刻まれていた。

 「……来たか」

 ザイドの瞳が、瞬時に険しい色を帯びる。

 車から降りてきたのは、白髪混じりの髪を整えた、上品だが目の奥が笑っていない初老の男――佐伯教授だった。

 「遥希くん! よく無事でいてくれた」

 教授は芝居がかった仕草で両手を広げ、足早に近づいてくる。

 その後ろには、武装はしていないものの、屈強な体格の「調査員」たちが控えていた。

 「教授……、どうしてこんなに早く」

 「君が心配でね。それに、この遺跡の重要性を再確認したのだよ。……おや、そちらが噂の族長殿かな?」

 教授の視線が、遥希の腰を抱くザイドの手元に注がれる。その瞬間に浮かんだ侮蔑の色を、遥希は見逃さなかった。

 ザイドは遥希を引き寄せ、威圧するように一歩前に出る。

 「俺がこの地の主だ。許可なく踏み込むとは、日本の学者は礼儀を知らんようだな」

 「これは失礼。私は、この若き俊英、瀬戸遥希の保護者代わりでしてね。……遥希くん、こっちへ来なさい。彼のような男に、無理やり従わされているんだろう?」

 教授の言葉に、遥希の身体が強張る。

 かつて、自分を救ってくれたはずの言葉。けれど今の遥希には、それがザイドとの絆を断ち切ろうとする毒のように聞こえた。

 「違います、教授。僕は自分の意思で……」

 「いいや、君は混乱しているだけだ。ストックホルム症候群という言葉を知っているかね? 犯人に情を移すのは、監禁された被害者の典型的な反応だよ」

 「監禁だと……?」

 ザイドの喉の奥から、低いうなり声が漏れる。

 「遥希くん、君の荷物はすでにまとめてある。大学側は正式に政府へ保護要請を出した。……さあ、その男から離れるんだ」

 教授の冷徹な笑みが、黄金のオアシスに暗い影を落とした。
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