砂漠の夜に刻む誓い 〜考古学者は若き族長に愛でられる〜

たら昆布

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18話

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 教授の言葉は、冷たく鋭いメスのように、遥希の心を切り裂いていった。

 「さあ、遥希くん。この報告書を見たまえ。君が『運命』だと信じている男の、本当の姿だ」

 教授が差し出したタブレットには、数枚の衛星写真と、現地の闇取引ルートを示すという地図が表示されていた。

 そこには、ザイドの紋章が入った木箱が、武装した男たちに受け渡される様子が鮮明に映し出されている。

 「これは……、何ですか?」

 「彼はね、この遺跡から出土した黄金を、過激派組織に売り払って武器を調達している。君を監禁したのは、君の鑑定眼を利用して、より価値のある遺物を選別させるためだったんだよ」

 遥希の指先が、ガタガタと震え始める。

 「嘘だ……。ザイド様は、伝承を……この地を守るために……」

 「伝承? 遥希くん、君ほどの大人がそんな御伽噺を信じているのかい? 彼は君の『専門家としてのプライド』を巧みに利用したのさ。君の論文を盗んだあの男たちと同じようにね」

 かつてのトラウマが、鮮烈な痛みを持って蘇る。

 遥希はたまらず、隣に立つザイドを見上げた。

 「ザイド様……。教えてください。これは、何なんですか。……この写真は、嘘なんですよね……?」

 だが、ザイドは否定しなかった。

 その金色の瞳は、教授を、そして揺れ動く遥希を、射抜くような冷たさで見つめている。

 「……俺が何のために戦い、何を守っているか。それを理解できない男に説明するつもりはない」

 「説明できないのさ、遥希くん。後ろ暗いことがあるからね」

 教授が勝ち誇ったように笑う。

 「ザイド様……、一言でいいんです。信じてるって、言わせてください……」

 「遥希。俺を信じるなら、今すぐ俺の背後に回れ。そうでなければ……」

 ザイドの声は、酷く低く、拒絶に近い響きを帯びていた。

 誇り高き族長にとって、心を開いた伴侶から向けられる「疑いの眼差し」は、何よりも耐え難い裏切りだったのだ。

 「……僕は……」

 「答えられないか。ならば、それがお前の答えだ」

 ザイドは遥希の手を乱暴に振り払った。

 触れ合っていた熱が、一瞬で凍りつく。

 「イシュマ! この男たちを客間に案内しろ。……瀬戸遥希は、今日からこの宮殿の自由を禁ずる」

 ザイドは一度も振り返ることなく、大股で去っていった。

 一人残された遥希の視界は、教授の冷徹な笑みと、遠ざかる愛する男の背中で、ぐにゃりと歪んでいった。
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