砂漠の夜に刻む誓い 〜考古学者は若き族長に愛でられる〜

たら昆布

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19話

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 ザイドによって閉ざされた扉の向こうから、遠くエンジンの音が聞こえていた。

 「……っ、ザイド様、開けてください! 話を聞いて!」

 遥希は何度も扉を叩いたが、外に立つ守衛からの返事はない。

 絶望に身を沈めかけたその時、部屋のバルコニーの影から、イシュマが音もなく姿を現した。

 「……イシュマさん! ザイド様は?」

 「ザイド様は今、教授たちの要求を受け入れ、遺跡の警備を一時的に解かれました。あの方を信じてください、瀬戸様」

 イシュマの目は、悲しげに揺れていた。

 「これを……。ザイド様が貴方に気づかれぬよう、お渡しするようにと」

 手渡されたのは、ザイドが肌身離さず持っていた、古い短剣の鞘だった。その細工を指でなぞった瞬間、遥希は気づいた。

 (これ、裏側に……マイクロチップが……?)

 遥希が慌てて自分のノートパソコンにチップを読み込ませると、そこには教授が提示したデータの「真実」が記録されていた。

 闇取引の写真は、教授の息がかかった傭兵たちが、ザイドの紋章を偽造して行っていたものだった。さらに、教授が連れてきた「調査員」の正体は、遺跡の貴重な鉱物資源を強引に採掘するために雇われた武装集団だったのである。

 「……そんな。教授は、僕を利用して遺跡の入り口を特定させただけだったんだ……」

 自分の純粋さが、最愛の人を窮地に追い込んだ。

 その時、階下から教授の冷ややかな笑い声が聞こえてきた。

 「……そうだよ、遥希くん。この遺跡の下には、貴重な希少金属(レアメタル)が眠っている。歴史などという不確かなものより、金の方がよほど価値があるとは思わないかね?」

 教授はいつの間にか部屋の入り口に立っていた。その背後には、銃を構えた男たちが控えている。

 「ザイド様はどうしたんですか!」

 「彼は今頃、砂漠の真ん中で我がチームの『洗礼』を受けている頃かな。不便な男だよ、一族の誇りなどというものに縛られて」

 「……最低だ」

 遥希は握りしめた短剣の鞘に、指が白くなるほど力を込めた。

 (守らなきゃ。僕が、ザイド様と……この地を……!)

 今まで守られるだけだった遥希の瞳に、かつてないほど強い決意の火が灯る。

 「……教授。あなたは僕の才能を認めたんじゃない。僕の『執着』を利用しただけだ。……でも、今の僕が執着しているのは、研究じゃない」

 遥希は教授を見据え、一歩前に踏み出した。

 「僕が愛した男の、誇りです」
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