砂漠の夜に刻む誓い 〜考古学者は若き族長に愛でられる〜

たら昆布

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20話

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 「――行かせろ! さもなくば、このデータを今すぐ世界中のメディアへ送信する!」
 
 遥希はノートパソコンを掲げ、教授を真っ直ぐに睨みつけた。
 
 指先は震えていたが、その眼差しだけはザイドに教えられた強さを宿している。
 
 「……ふん。その程度の脅しが通用すると? 遥希くん、君を殺してパソコンを奪えば済む話だ」
 
 教授が冷酷に手を挙げ、背後の男たちが銃口を向ける。
 
 その瞬間、部屋の照明が音を立てて弾け、暗転した。
 
 「なっ、何だ!?」
 
 「瀬戸様、こちらです!」
 
 闇に紛れ、イシュマが遥希の腕を掴んでバルコニーへと引き寄せる。宮殿の配電盤を落としたのは彼だ。
 
 二人は夜の宮殿の壁を伝い、待機していた古いジープへと滑り込んだ。
 
 「イシュマさん、ザイド様はどこに!?」
 
 「北の聖域……。教授の傭兵たちが、ザイド様を『処刑』という名目で連れ出しました。急がねばなりません!」
 
 ジープが猛然と砂を蹴り、漆黒の砂漠へと踊り出る。
 
 遥希は助手席で、ザイドから預かった短剣を胸に抱きしめていた。
 
 (待っていて、ザイド様……! あなたを疑った僕を、どうか……助けさせて……っ!)
 
 月明かりの下、砂丘を越えた先。
 
 数台のライトが一点を照らし出しているのが見えた。
 
 そこには、両手を縛られ、跪かされたザイドの姿があった。
 
 周囲を取り囲む武装集団。リーダー格の男が、ザイドの頭に銃口を突きつける。
 
 「誇り高き族長も、死ねばただの肉塊だ。最期に遺言はあるか?」
 
 「……ふん。貴様らごときに、俺の魂は売らん」
 
 ザイドは死を目前にしてもなお、傲岸不遜なほどに美しく、不敵に笑っていた。
 
 「――やめろぉぉぉっ!!」
 
 砂煙を上げ、ジープがライトの中に突っ込む。
 
 遥希は車が止まるのも待たず、ドアを蹴り開けて外へと飛び出した。
 
 「遥希!? 貴様、なぜ……っ」
 
 驚愕に目を見開くザイドの目の前で、遥希は銃を持つ男の前に立ちはだかった。
 
 「ザイド様を、殺させない……! 彼は、僕が……僕のすべてを懸けて愛した男だ!」
 
 銃口の冷たい感覚が額に触れる。
 
 けれど、遥希は一歩も退かなかった。
 
 その瞬間、ザイドの金色の瞳に、かつてないほどの激しい情熱と「生」への渇望が爆発した。
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