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22話
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逃走を図った教授の車は、イシュマたちの手によって完全に包囲されていた。
砂の上に引きずり出された教授は、かつての端正な面影もなく、見窄らしく取り乱していた。
「遥希くん! 助けてくれ、私は君の才能を誰よりも……っ」
「黙ってください」
遥希の声は、自分でも驚くほど冷ややかに響いた。
「あなたは僕の才能を愛したんじゃない。自分の野心を埋めるための道具を探していただけだ。……僕はもう、あなたの操り人形じゃない」
遥希は、手にしていた証拠のデータをザイドの部下へと手渡した。これが公になれば、教授の学者生命は完全に断たれるだろう。
過去の呪縛を、自らの手で断ち切った瞬間だった。
教授が連行されていくのを見届け、砂漠に再び静寂が訪れる。
ザイドが歩み寄り、遥希の肩を抱き寄せた。
「……終わったな、遥希」
「はい。……怖かったです。でも、不思議と後悔はしていません」
遥希が顔を上げると、そこには満天の星空が広がっていた。降るような星の光が、二人の足元を白く照らしている。
ザイドはその場に膝をつくと、遥希の手を取り、その甲に深く口づけを落とした。
「遥希。お前は俺の命を救い、この地の誇りを守った。……俺の『夜の話し相手』などという欺瞞は、今日で終わりだ」
「ザイド、様……?」
「お前を、アスル族の正妃として迎えたい。この砂漠のすべてを、お前と分かち合いたいんだ」
ザイドの瞳には、王としての威厳と、一人の男としての、震えるほどの情愛が宿っていた。
「……日本での生活も、研究者としてのキャリアも、ここにはないかもしれません。それでも……」
「キャリアなら、ここで積めばいい。この遺跡の全容を解明するのは、世界でただ一人、俺の伴侶であるお前だけだ」
ザイドの強引で、けれどこの上なく甘い提案に、遥希の唇からふっと笑みが零れた。
「……ふふ、やっぱりあなたは、どこまでも傲慢ですね」
遥希はザイドの首に腕を回し、自らその唇を重ねた。
「……喜んで。あなたのオアシスに、一生閉じ込めてください」
熱い口づけが交わされる。
それは契約でも、取引でもない。
二つの魂が、砂漠の永遠の中に溶け合うための、真実の誓いだった。
砂の上に引きずり出された教授は、かつての端正な面影もなく、見窄らしく取り乱していた。
「遥希くん! 助けてくれ、私は君の才能を誰よりも……っ」
「黙ってください」
遥希の声は、自分でも驚くほど冷ややかに響いた。
「あなたは僕の才能を愛したんじゃない。自分の野心を埋めるための道具を探していただけだ。……僕はもう、あなたの操り人形じゃない」
遥希は、手にしていた証拠のデータをザイドの部下へと手渡した。これが公になれば、教授の学者生命は完全に断たれるだろう。
過去の呪縛を、自らの手で断ち切った瞬間だった。
教授が連行されていくのを見届け、砂漠に再び静寂が訪れる。
ザイドが歩み寄り、遥希の肩を抱き寄せた。
「……終わったな、遥希」
「はい。……怖かったです。でも、不思議と後悔はしていません」
遥希が顔を上げると、そこには満天の星空が広がっていた。降るような星の光が、二人の足元を白く照らしている。
ザイドはその場に膝をつくと、遥希の手を取り、その甲に深く口づけを落とした。
「遥希。お前は俺の命を救い、この地の誇りを守った。……俺の『夜の話し相手』などという欺瞞は、今日で終わりだ」
「ザイド、様……?」
「お前を、アスル族の正妃として迎えたい。この砂漠のすべてを、お前と分かち合いたいんだ」
ザイドの瞳には、王としての威厳と、一人の男としての、震えるほどの情愛が宿っていた。
「……日本での生活も、研究者としてのキャリアも、ここにはないかもしれません。それでも……」
「キャリアなら、ここで積めばいい。この遺跡の全容を解明するのは、世界でただ一人、俺の伴侶であるお前だけだ」
ザイドの強引で、けれどこの上なく甘い提案に、遥希の唇からふっと笑みが零れた。
「……ふふ、やっぱりあなたは、どこまでも傲慢ですね」
遥希はザイドの首に腕を回し、自らその唇を重ねた。
「……喜んで。あなたのオアシスに、一生閉じ込めてください」
熱い口づけが交わされる。
それは契約でも、取引でもない。
二つの魂が、砂漠の永遠の中に溶け合うための、真実の誓いだった。
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