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番外編
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あの大乱から一年。
アスル族の聖域である遺跡の入り口には、最新の観測機材と、それらに囲まれて熱心に土を払う遥希の姿があった。
今の彼は、この地で唯一の「王宮専属考古学者」であり、そしてザイドの正妃として、部族の者たちからも深く慕われている。
「――遥希。また昼食を忘れて没頭しているな」
背後から響いたのは、深く、心地よい低音。
振り返る間もなく、遥希の身体は逞しい腕に抱き上げられた。
「あ、ザイド様! 降ろしてください、まだ作業の途中……」
「ならん。お前のその熱心さが、たまに俺への関心を追い越すのが気に入らない」
ザイドは拗ねたような笑みを浮かべ、遥希の耳たぶを甘く噛んだ。一年前と変わらぬ、剥き出しの独占欲。けれど今の遥希には、それが愛おしくてたまらない。
「……意地悪。あなたのことは、四六時中考えてますよ」
「ほう、口が上手くなったな。……だが、身体の方はどうだ?」
ザイドの指先が、作業着の隙間から滑り込み、遥希の肌を熱くなぞる。
かつては恐怖で震えていたその愛撫も、今では遥希の奥底を甘く疼かせる魔法だ。
二人は遺跡の影、涼しい風が吹き抜ける天幕へと移動した。
そこには贅沢な絨毯が敷かれ、冷えた果実とワインが用意されている。
ザイドは遥希を自身の膝の上に乗せ、ぶどうのひと粒を口に含んで、それを口移しで遥希に与えた。
「ん、……ふ……っ」
甘い果汁とザイドの熱い舌が絡み合い、遥希の脳裏がとろけていく。
「来月、日本の学術会議から招待状が届いた。お前の論文が、正式に最高賞を受賞したそうだ。……どうする、一度戻るか?」
ザイドの問いに、遥希は一瞬だけ瞳を揺らしたが、すぐに首を振ってザイドの胸に顔を埋めた。
「授賞式には代理を立てます。……僕がいたい場所は、もうここしかないから」
「……よく言った」
ザイドは満足げに喉を鳴らし、遥希の髪に何度も口づけを落とす。
かつては「囚われの学者」だった。
けれど今は、この広大な砂漠と、一人の傲慢な王の心を支配する「愛の主」となったのだ。
「一生、逃がさないぞ」
「ええ。一生、あなたのオアシスで甘やかしてください」
砂漠の太陽よりも熱い視線を交わし、二人は再び、甘い吐息の中に溶けていった。
アスル族の聖域である遺跡の入り口には、最新の観測機材と、それらに囲まれて熱心に土を払う遥希の姿があった。
今の彼は、この地で唯一の「王宮専属考古学者」であり、そしてザイドの正妃として、部族の者たちからも深く慕われている。
「――遥希。また昼食を忘れて没頭しているな」
背後から響いたのは、深く、心地よい低音。
振り返る間もなく、遥希の身体は逞しい腕に抱き上げられた。
「あ、ザイド様! 降ろしてください、まだ作業の途中……」
「ならん。お前のその熱心さが、たまに俺への関心を追い越すのが気に入らない」
ザイドは拗ねたような笑みを浮かべ、遥希の耳たぶを甘く噛んだ。一年前と変わらぬ、剥き出しの独占欲。けれど今の遥希には、それが愛おしくてたまらない。
「……意地悪。あなたのことは、四六時中考えてますよ」
「ほう、口が上手くなったな。……だが、身体の方はどうだ?」
ザイドの指先が、作業着の隙間から滑り込み、遥希の肌を熱くなぞる。
かつては恐怖で震えていたその愛撫も、今では遥希の奥底を甘く疼かせる魔法だ。
二人は遺跡の影、涼しい風が吹き抜ける天幕へと移動した。
そこには贅沢な絨毯が敷かれ、冷えた果実とワインが用意されている。
ザイドは遥希を自身の膝の上に乗せ、ぶどうのひと粒を口に含んで、それを口移しで遥希に与えた。
「ん、……ふ……っ」
甘い果汁とザイドの熱い舌が絡み合い、遥希の脳裏がとろけていく。
「来月、日本の学術会議から招待状が届いた。お前の論文が、正式に最高賞を受賞したそうだ。……どうする、一度戻るか?」
ザイドの問いに、遥希は一瞬だけ瞳を揺らしたが、すぐに首を振ってザイドの胸に顔を埋めた。
「授賞式には代理を立てます。……僕がいたい場所は、もうここしかないから」
「……よく言った」
ザイドは満足げに喉を鳴らし、遥希の髪に何度も口づけを落とす。
かつては「囚われの学者」だった。
けれど今は、この広大な砂漠と、一人の傲慢な王の心を支配する「愛の主」となったのだ。
「一生、逃がさないぞ」
「ええ。一生、あなたのオアシスで甘やかしてください」
砂漠の太陽よりも熱い視線を交わし、二人は再び、甘い吐息の中に溶けていった。
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