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後日談
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魔王レンがこの世界に君臨し、そしてその傍らに「魔王の右腕」にして「魔王城の心臓」と呼ばれる経理部長、カナデが着任してから数年。
魔王城の財務状況は、魔界史上類を見ないほどの超健全経営を続けていた。
「……レン。この『魔界横断・記念公園』の建設プランだが、維持費の計算が甘い。資材の運搬コストを、ゴブリンのボランティアに頼る前提で組むなと言っただろ。マイナス五億ゴールドだ」
執務室に、カナデの冷徹かつ正確な声が響く。
数年前と変わらぬ光景。だが、その空気感は明らかに変化していた。
カナデの着ている事務服の襟元には、レンがかつて贈った魔石のクリップが誇らしげに輝き、執務机の端には、二人で撮った「建国記念パーティー」の魔法写真が、これ以上ないほど目立つ位置に飾られている。
「えぇーっ、いいじゃんカナデ! あそこにはお前との思い出の紅蓮樹も植える予定なんだぜ? 経費じゃなくて、俺の『愛の積立金』から出せねーかな?」
レンはといえば、数年前よりもさらに体つきが逞しくなり、魔王としての風格も増していた。……が、カナデを前にした時のお調子者ぶりと、底なしの過保護さはさらに悪化している。
レンはカナデの背後に回ると、当然のような顔でその肩を抱き寄せ、首筋に顔を埋めた。
「おい……離せ。仕事中だぞ。……それに、最近のお前は体温が高すぎる。俺の眼鏡が曇るだろ」
「いいじゃん、曇ったら俺が拭いてやるよ。……なぁ、カナデ。お前、最近また痩せたんじゃないか? ちゃんとガルムの作った肉食ってるか?」
「……。……食っている。お前が、俺の皿に勝手に自分の分まで盛り付けるから、むしろオーバーカロリー気味だ」
カナデは呆れ顔でため息をつくが、その表情には隠しきれない慈しみが滲んでいた。
かつては「親友」という枠組みから一歩も出ようとしなかったカナデだったが、今ではレンのこうした「過剰な接触」を、文句を言いながらも受け入れるのが日常となっている。
「なぁ、カナデ。今日の夜は、仕事切り上げて、城下で新しくできた『人間界風カフェ』に行こうぜ。お前、あそこのアップルパイが気になってたんだろ?」
「……。……。……調査済みか。……いいだろう。ただし、お前の小遣いから出すならな」
「おう! 任せろ! 俺、この日のためにクロのパシリやって小銭稼いだんだぜ!」
「魔王が部下のパシリをするな……。……。……ふふ」
カナデが不意に、小さく、だが優しく笑った。
その笑みを見た瞬間、レンの顔が真っ赤になり、彼はたまらずカナデを正面からぎゅっと抱きしめた。
「うおぉぉ! カナデ、今の笑い方反則だろ! マイナス一兆ゴールドでもいい、もう一回笑ってくれ!」
「やかましい! 離せ、このバカ魔王!!」
騒がしい執務室。
二人の間にある「愛」は、もはやどんな計算法を用いても算出できないほどの巨大な黒字を叩き出している。
彼らにとってのハッピーエンドは、物語の終わりではなく、こうした騒がしくも温かい日常の「継続」そのものなのだ。
「……来年も、再来年も。お前の予算、俺が管理してやるからな」
「おう! 一生、添い遂げてくれよ、俺の最高の相棒!」
二人の物語の帳簿は、今日も幸せな追記で埋め尽くされていく。
魔王城の財務状況は、魔界史上類を見ないほどの超健全経営を続けていた。
「……レン。この『魔界横断・記念公園』の建設プランだが、維持費の計算が甘い。資材の運搬コストを、ゴブリンのボランティアに頼る前提で組むなと言っただろ。マイナス五億ゴールドだ」
執務室に、カナデの冷徹かつ正確な声が響く。
数年前と変わらぬ光景。だが、その空気感は明らかに変化していた。
カナデの着ている事務服の襟元には、レンがかつて贈った魔石のクリップが誇らしげに輝き、執務机の端には、二人で撮った「建国記念パーティー」の魔法写真が、これ以上ないほど目立つ位置に飾られている。
「えぇーっ、いいじゃんカナデ! あそこにはお前との思い出の紅蓮樹も植える予定なんだぜ? 経費じゃなくて、俺の『愛の積立金』から出せねーかな?」
レンはといえば、数年前よりもさらに体つきが逞しくなり、魔王としての風格も増していた。……が、カナデを前にした時のお調子者ぶりと、底なしの過保護さはさらに悪化している。
レンはカナデの背後に回ると、当然のような顔でその肩を抱き寄せ、首筋に顔を埋めた。
「おい……離せ。仕事中だぞ。……それに、最近のお前は体温が高すぎる。俺の眼鏡が曇るだろ」
「いいじゃん、曇ったら俺が拭いてやるよ。……なぁ、カナデ。お前、最近また痩せたんじゃないか? ちゃんとガルムの作った肉食ってるか?」
「……。……食っている。お前が、俺の皿に勝手に自分の分まで盛り付けるから、むしろオーバーカロリー気味だ」
カナデは呆れ顔でため息をつくが、その表情には隠しきれない慈しみが滲んでいた。
かつては「親友」という枠組みから一歩も出ようとしなかったカナデだったが、今ではレンのこうした「過剰な接触」を、文句を言いながらも受け入れるのが日常となっている。
「なぁ、カナデ。今日の夜は、仕事切り上げて、城下で新しくできた『人間界風カフェ』に行こうぜ。お前、あそこのアップルパイが気になってたんだろ?」
「……。……。……調査済みか。……いいだろう。ただし、お前の小遣いから出すならな」
「おう! 任せろ! 俺、この日のためにクロのパシリやって小銭稼いだんだぜ!」
「魔王が部下のパシリをするな……。……。……ふふ」
カナデが不意に、小さく、だが優しく笑った。
その笑みを見た瞬間、レンの顔が真っ赤になり、彼はたまらずカナデを正面からぎゅっと抱きしめた。
「うおぉぉ! カナデ、今の笑い方反則だろ! マイナス一兆ゴールドでもいい、もう一回笑ってくれ!」
「やかましい! 離せ、このバカ魔王!!」
騒がしい執務室。
二人の間にある「愛」は、もはやどんな計算法を用いても算出できないほどの巨大な黒字を叩き出している。
彼らにとってのハッピーエンドは、物語の終わりではなく、こうした騒がしくも温かい日常の「継続」そのものなのだ。
「……来年も、再来年も。お前の予算、俺が管理してやるからな」
「おう! 一生、添い遂げてくれよ、俺の最高の相棒!」
二人の物語の帳簿は、今日も幸せな追記で埋め尽くされていく。
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