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11話
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ルベリス帝国の朝は、鳥たちの囀りと共に穏やかに始まった。
トアは昨日、サフィエルとお茶を飲んだ時に思いついた「ある計画」を胸に、少し緊張しながらグレンディルの執務室を訪れていた。
「……陛下、あの、少しだけお時間をいただいてもいいでしょうか?」
山積みの書類を片付けていたグレンディルが、トアの姿を認めるなり、その表情を劇的に和らげた。
「トアか。どうした? 何か足りないものでもあったか? 宝石か、それとも新しい衣装か?」
「いえ、そんなんじゃなくて……。今日、とってもお天気がいいので。もし皆さんのご都合が良ければ、中庭でお昼ごはんを食べませんか……?」
トアは指先をもじもじさせながら、恐る恐る提案した。
セフィリア王国では、食事は「生きるための義務」であり、家族と同じ食卓を囲むことさえ許されなかったトアにとって、ピクニックは絵本の中の憧れだったのだ。
「中庭で、食事だと?」
「はい……。外の風が気持ちいいので、みんなで一緒に食べられたら楽しいなって」
グレンディルは一瞬、呆気に取られたような顔をしたが、すぐに低い声で笑った。
「……お前の願いが、そんなにささやかなことだとはな。いいだろう。イザークとサフィエルにも声をかけろ。今すぐ準備をさせる」
一時間後。
城の美しい中庭には、大きな白いクロスが敷かれ、そこには色とりどりのサンドイッチや果実、冷えたハーブティーが並べられていた。
「トア殿、場所はこちらでよろしいでしょうか? 日差しが強すぎぬよう、パラソルも用意いたしました」
イザークが、まるで戦場の下見でもするかのように真剣な顔で椅子の位置を調整している。
「ありがとうございます、イザーク様! ……サフィエル様も、お仕事中だったのにごめんなさい」
「いいんだよ、トア。ずっと塔に籠もっていると頭が固くなってしまうからね。君の提案は、僕にとっても最高の特効薬だよ」
サフィエルは軽やかに笑い、トアの隣に腰を下ろした。
青空の下、四人と一匹(キリ)の賑やかな昼食が始まった。
キリは籠に入れられた新鮮なベリーを「キュイキュイ」と鳴きながら器用に食べ、トアはそれを見て楽しそうに笑っている。
「ほら、トア。このお肉も食べなさい。外で食べると、いつもより食が進むだろう?」
グレンディルが自然な動作で、トアの口元に切り分けた料理を運ぶ。
「あ……。はい、あーん……。……ん、おいしいです!」
トアの頬が幸せそうに膨らむのを見て、イザークも満足げに頷く。
「トア殿の食欲が戻ってきたようで、安心いたしました。……そうだ、トア殿。食後は少し、庭を散策しませんか? 向こう側に、今の時期にしか咲かない白い花があるのです」
「行きたいです! イザーク様!」
「……イザーク、先を越すな。散策の先導は私がする」
「陛下、陛下は午後の公務がおありでしょう。ここは私が――」
最強の男たちが、トアとの「お散歩権」を巡って、子供のように真面目に言い合いを始める。
その様子を眺めながら、サフィエルがトアに耳打ちした。
「ふふ、彼らがあんなに必死になるのは、君の前だけだよ。トア、君は本当に魔法使いだね」
トアは顔を真っ赤にしながらも、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
かつて孤独だった少年は、今、自分を心から慈しんでくれる人々囲まれている。
吹き抜ける風が、トアの髪を優しく揺らした。
ただ一緒に食事をする。そんな当たり前の日常が、今のトアにとっては、どんな奇跡よりも輝かしい宝物だった。
トアは昨日、サフィエルとお茶を飲んだ時に思いついた「ある計画」を胸に、少し緊張しながらグレンディルの執務室を訪れていた。
「……陛下、あの、少しだけお時間をいただいてもいいでしょうか?」
山積みの書類を片付けていたグレンディルが、トアの姿を認めるなり、その表情を劇的に和らげた。
「トアか。どうした? 何か足りないものでもあったか? 宝石か、それとも新しい衣装か?」
「いえ、そんなんじゃなくて……。今日、とってもお天気がいいので。もし皆さんのご都合が良ければ、中庭でお昼ごはんを食べませんか……?」
トアは指先をもじもじさせながら、恐る恐る提案した。
セフィリア王国では、食事は「生きるための義務」であり、家族と同じ食卓を囲むことさえ許されなかったトアにとって、ピクニックは絵本の中の憧れだったのだ。
「中庭で、食事だと?」
「はい……。外の風が気持ちいいので、みんなで一緒に食べられたら楽しいなって」
グレンディルは一瞬、呆気に取られたような顔をしたが、すぐに低い声で笑った。
「……お前の願いが、そんなにささやかなことだとはな。いいだろう。イザークとサフィエルにも声をかけろ。今すぐ準備をさせる」
一時間後。
城の美しい中庭には、大きな白いクロスが敷かれ、そこには色とりどりのサンドイッチや果実、冷えたハーブティーが並べられていた。
「トア殿、場所はこちらでよろしいでしょうか? 日差しが強すぎぬよう、パラソルも用意いたしました」
イザークが、まるで戦場の下見でもするかのように真剣な顔で椅子の位置を調整している。
「ありがとうございます、イザーク様! ……サフィエル様も、お仕事中だったのにごめんなさい」
「いいんだよ、トア。ずっと塔に籠もっていると頭が固くなってしまうからね。君の提案は、僕にとっても最高の特効薬だよ」
サフィエルは軽やかに笑い、トアの隣に腰を下ろした。
青空の下、四人と一匹(キリ)の賑やかな昼食が始まった。
キリは籠に入れられた新鮮なベリーを「キュイキュイ」と鳴きながら器用に食べ、トアはそれを見て楽しそうに笑っている。
「ほら、トア。このお肉も食べなさい。外で食べると、いつもより食が進むだろう?」
グレンディルが自然な動作で、トアの口元に切り分けた料理を運ぶ。
「あ……。はい、あーん……。……ん、おいしいです!」
トアの頬が幸せそうに膨らむのを見て、イザークも満足げに頷く。
「トア殿の食欲が戻ってきたようで、安心いたしました。……そうだ、トア殿。食後は少し、庭を散策しませんか? 向こう側に、今の時期にしか咲かない白い花があるのです」
「行きたいです! イザーク様!」
「……イザーク、先を越すな。散策の先導は私がする」
「陛下、陛下は午後の公務がおありでしょう。ここは私が――」
最強の男たちが、トアとの「お散歩権」を巡って、子供のように真面目に言い合いを始める。
その様子を眺めながら、サフィエルがトアに耳打ちした。
「ふふ、彼らがあんなに必死になるのは、君の前だけだよ。トア、君は本当に魔法使いだね」
トアは顔を真っ赤にしながらも、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
かつて孤独だった少年は、今、自分を心から慈しんでくれる人々囲まれている。
吹き抜ける風が、トアの髪を優しく揺らした。
ただ一緒に食事をする。そんな当たり前の日常が、今のトアにとっては、どんな奇跡よりも輝かしい宝物だった。
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