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24話
広場の中央では、色鮮やかな衣装を纏った大道芸人たちが火を操り、空中を舞う精霊のようなパフォーマンスで観客を沸かせていた。
トアは初めて見る光景に、「わぁ……っ!」と声を上げて拍手を送る。
「トア殿、あちらに珍しい露店が出ています。ルベリスの守護石を使った、小さな細工物のようです」
イザークが、人混みを優しく分けながらトアを導いた。
その露店には、夜空の欠片を切り取ったような、深い紺色の石を使ったストラップやチャームが並んでいた。
店主の老人が、トアの姿を見て温かく微笑む。
「いらっしゃい、可愛いお兄さん。それは『絆の石』と言ってね。大切な人と持てば、離れていても心が繋がると言われているよ」
絆の石。
その言葉に、トアの胸がトクンと跳ねた。
トアは、並んでいる石の中から、形がよく似た四つの小さなチャームをじっと見つめた。
「あの……。これ、四つください」
トアが自分の小さな財布を取り出そうとすると、またしても左右から手が伸びる。
「トア、私が出そう」
「いえ、ここは魔法的な鑑定が必要な品ですから、私が」
いつもの「お支払い競争」が始まろうとしたその時、トアは二人を制するように、ふわりと微笑んだ。
「……これは、僕が僕のお金で買いたいんです。僕が、皆さんとお揃いで持っていたいから」
トアの真っ直ぐな言葉に、グレンディルとサフィエルは動きを止めた。
トアは、市場でもらったお小遣いを大切に貯めていた中から、自分自身の手で代金を支払った。
「はい。これ、皆さんに……」
トアは、小さな紺色のチャームを、三人に一つずつ手渡した。
「陛下、イザーク様、サフィエル様。……これを付けていたら、もし僕がいなくなっちゃっても、すぐに見つけてくれますか?」
ふとした拍子にこぼれた、トアの心の奥にある小さな不安。
けれど、それを聞いたグレンディルの答えは力強かった。
「馬鹿なことを。いなくなることなど許さんし、万が一のことがあれば、地の果てまで追いかけて、この石の光よりも速くお前を抱きしめに行く」
「私も同じです、トア殿。……この石は、私の命と同じ重さで預かりましょう」
「ふふ、僕もだよ。この石に強力な追跡魔法……あ、いや、守護魔法を上書きしておこうかな」
サフィエルは危ない言葉を飲み込みつつ、愛おしげに石を指先で転がした。
トアは自分の分を、イザークからもらった銀の腕輪に結びつけた。
四つの『絆の石』。
それは、ただの露店の品物以上に、彼らの心を強く、優しく結びつける確かな鎖(くさり)となっていた。
「さあ、次はあそこの灯籠流しを見に行きましょう! キリも、行こう?」
「キュイッ!」
トアは、三人の手を代わる代わる握りながら、光溢れる広場をさらに奥へと進んでいく。
自分から誰かを「繋ぎ止めたい」と願えるようになったトアの背中は、いつの間にか、少しだけ頼もしく見えていた。
トアは初めて見る光景に、「わぁ……っ!」と声を上げて拍手を送る。
「トア殿、あちらに珍しい露店が出ています。ルベリスの守護石を使った、小さな細工物のようです」
イザークが、人混みを優しく分けながらトアを導いた。
その露店には、夜空の欠片を切り取ったような、深い紺色の石を使ったストラップやチャームが並んでいた。
店主の老人が、トアの姿を見て温かく微笑む。
「いらっしゃい、可愛いお兄さん。それは『絆の石』と言ってね。大切な人と持てば、離れていても心が繋がると言われているよ」
絆の石。
その言葉に、トアの胸がトクンと跳ねた。
トアは、並んでいる石の中から、形がよく似た四つの小さなチャームをじっと見つめた。
「あの……。これ、四つください」
トアが自分の小さな財布を取り出そうとすると、またしても左右から手が伸びる。
「トア、私が出そう」
「いえ、ここは魔法的な鑑定が必要な品ですから、私が」
いつもの「お支払い競争」が始まろうとしたその時、トアは二人を制するように、ふわりと微笑んだ。
「……これは、僕が僕のお金で買いたいんです。僕が、皆さんとお揃いで持っていたいから」
トアの真っ直ぐな言葉に、グレンディルとサフィエルは動きを止めた。
トアは、市場でもらったお小遣いを大切に貯めていた中から、自分自身の手で代金を支払った。
「はい。これ、皆さんに……」
トアは、小さな紺色のチャームを、三人に一つずつ手渡した。
「陛下、イザーク様、サフィエル様。……これを付けていたら、もし僕がいなくなっちゃっても、すぐに見つけてくれますか?」
ふとした拍子にこぼれた、トアの心の奥にある小さな不安。
けれど、それを聞いたグレンディルの答えは力強かった。
「馬鹿なことを。いなくなることなど許さんし、万が一のことがあれば、地の果てまで追いかけて、この石の光よりも速くお前を抱きしめに行く」
「私も同じです、トア殿。……この石は、私の命と同じ重さで預かりましょう」
「ふふ、僕もだよ。この石に強力な追跡魔法……あ、いや、守護魔法を上書きしておこうかな」
サフィエルは危ない言葉を飲み込みつつ、愛おしげに石を指先で転がした。
トアは自分の分を、イザークからもらった銀の腕輪に結びつけた。
四つの『絆の石』。
それは、ただの露店の品物以上に、彼らの心を強く、優しく結びつける確かな鎖(くさり)となっていた。
「さあ、次はあそこの灯籠流しを見に行きましょう! キリも、行こう?」
「キュイッ!」
トアは、三人の手を代わる代わる握りながら、光溢れる広場をさらに奥へと進んでいく。
自分から誰かを「繋ぎ止めたい」と願えるようになったトアの背中は、いつの間にか、少しだけ頼もしく見えていた。
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