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17話
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「……ヴォルフ、様……?」
視界を埋め尽くしていた眩い光が収まったとき、僕は冷たい石の床に倒れ込んでいた。
ハルの呪詛は消え、広間には静寂が満ちている。
けれど、僕を抱きしめていたはずの腕に、力がない。
「陛下……? 嘘、でしょう……?」
目を開けると、僕のすぐそばでヴォルフ陛下が横たわっていた。
彫刻のように美しい顔は蒼白で、あんなに猛々しかった魔力の波動が、消え入りそうなほど弱まっている。
魂の契約を通じて、彼は自分の命そのものを僕に流し込み、僕の魂を繋ぎ止めたのだ。
その代償として、彼は今、深い闇の底へ落ちようとしていた。
「ク……ククク……ハハハ! 見ろ、狂犬皇帝が力尽きたぞ!」
血を吐きながら壁際で笑っているのは、ハルだった。
術の反動で彼もボロボロだが、その瞳には狂ったような歓喜が宿っている。
「ユキ……。兄さんは僕の道連れだ。ヴォルフがいなければ、お前はもう呼吸すらできないはずだ。……さあ、その絶望した顔で、僕と一緒に教国へ戻るんだ」
エドワード王子も、勝ち誇ったように剣を抜き、僕たちに歩み寄ってくる。
騎士たちが、倒れた皇帝を捕らえようと包囲を狭めてきた。
(……嫌だ。……そんなの、絶対に嫌だ)
僕の胸の奥で、何かがパチンと弾けた。
今まで、僕は自分を「無能」だと思い、陛下に守られるだけの「器」だと思って生きてきた。
けれど、今、僕の体の中を流れているのは、彼が命を削って与えてくれた、彼の愛そのものだ。
「……陛下に、……触れるな」
「あ?」
エドワード王子が足を止めた。
僕はゆっくりと立ち上がる。
不思議と、足取りは軽かった。
陛下からもらった魔力が、僕の指先まで満ち溢れ、これまで感じたことのない力が漲っている。
「陛下に……触れるなと言っているんだ!!」
僕が叫んだ瞬間、僕を中心に、目も眩むような黄金の光が爆発した。
「な……っ!? この魔力、なんだ!?」
「神の核は砕けたはず……! なぜ、これほどの出力が……っ!」
ハルが驚愕に目を見開く。
砕けたはずの結晶は、陛下の魔力と混ざり合い、僕自身の真の力として「再構築」されていたのだ。
僕はもう、吸い取るだけの器じゃない。
陛下からもらった愛を、自分の力に変えて放つことができる――。
「……ハル。君が僕の光だと思っていたのは、間違いだった」
僕は、自分と同じ顔をした弟を、毅然と見据えた。
「僕の光は、ヴォルフ陛下だ。……彼が僕を、人間として愛してくれたから、僕は今ここに立っている」
僕の手のひらに、光の刃が形を成す。
それは、誰かを傷つけるためのものではなく、大切な人を守り抜くための、純粋な意志の輝き。
「下がれ、教国の亡者たち。……陛下を傷つける者は、僕が一人残らず焼き尽くす」
「ひ、ひいいっ!」
僕の放つ圧倒的な威圧感に、エドワード王子は剣を放り出し、腰を抜かして後退した。
騎士たちも、見たこともない聖なる光の奔流に怯え、次々と武器を捨てて逃げ出していく。
「馬鹿な……。不全だったはずの兄さんが……『神』を超えたというのか……っ」
ハルは絶望に顔を歪め、力なく床に伏した。
僕は、逃げる彼らには目もくれず、すぐに陛下の元へ駆け寄り、その身体を抱き上げた。
重い。温かい。……まだ、間に合う。
「陛下……今度は、僕があなたを救う番です」
僕は、自分の胸元に集まった黄金の魔力を、惜しみなく彼の胸へと注ぎ込んだ。
僕の魔力は、かつて陛下が僕にしてくれたように、彼の冷え切った魂を優しく、力強く包み込んでいく。
「……ん……っ……」
ヴォルフ陛下の睫毛が、微かに震えた。
その瞬間、僕は世界で一番幸せな涙を流した。
視界を埋め尽くしていた眩い光が収まったとき、僕は冷たい石の床に倒れ込んでいた。
ハルの呪詛は消え、広間には静寂が満ちている。
けれど、僕を抱きしめていたはずの腕に、力がない。
「陛下……? 嘘、でしょう……?」
目を開けると、僕のすぐそばでヴォルフ陛下が横たわっていた。
彫刻のように美しい顔は蒼白で、あんなに猛々しかった魔力の波動が、消え入りそうなほど弱まっている。
魂の契約を通じて、彼は自分の命そのものを僕に流し込み、僕の魂を繋ぎ止めたのだ。
その代償として、彼は今、深い闇の底へ落ちようとしていた。
「ク……ククク……ハハハ! 見ろ、狂犬皇帝が力尽きたぞ!」
血を吐きながら壁際で笑っているのは、ハルだった。
術の反動で彼もボロボロだが、その瞳には狂ったような歓喜が宿っている。
「ユキ……。兄さんは僕の道連れだ。ヴォルフがいなければ、お前はもう呼吸すらできないはずだ。……さあ、その絶望した顔で、僕と一緒に教国へ戻るんだ」
エドワード王子も、勝ち誇ったように剣を抜き、僕たちに歩み寄ってくる。
騎士たちが、倒れた皇帝を捕らえようと包囲を狭めてきた。
(……嫌だ。……そんなの、絶対に嫌だ)
僕の胸の奥で、何かがパチンと弾けた。
今まで、僕は自分を「無能」だと思い、陛下に守られるだけの「器」だと思って生きてきた。
けれど、今、僕の体の中を流れているのは、彼が命を削って与えてくれた、彼の愛そのものだ。
「……陛下に、……触れるな」
「あ?」
エドワード王子が足を止めた。
僕はゆっくりと立ち上がる。
不思議と、足取りは軽かった。
陛下からもらった魔力が、僕の指先まで満ち溢れ、これまで感じたことのない力が漲っている。
「陛下に……触れるなと言っているんだ!!」
僕が叫んだ瞬間、僕を中心に、目も眩むような黄金の光が爆発した。
「な……っ!? この魔力、なんだ!?」
「神の核は砕けたはず……! なぜ、これほどの出力が……っ!」
ハルが驚愕に目を見開く。
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僕はもう、吸い取るだけの器じゃない。
陛下からもらった愛を、自分の力に変えて放つことができる――。
「……ハル。君が僕の光だと思っていたのは、間違いだった」
僕は、自分と同じ顔をした弟を、毅然と見据えた。
「僕の光は、ヴォルフ陛下だ。……彼が僕を、人間として愛してくれたから、僕は今ここに立っている」
僕の手のひらに、光の刃が形を成す。
それは、誰かを傷つけるためのものではなく、大切な人を守り抜くための、純粋な意志の輝き。
「下がれ、教国の亡者たち。……陛下を傷つける者は、僕が一人残らず焼き尽くす」
「ひ、ひいいっ!」
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「馬鹿な……。不全だったはずの兄さんが……『神』を超えたというのか……っ」
ハルは絶望に顔を歪め、力なく床に伏した。
僕は、逃げる彼らには目もくれず、すぐに陛下の元へ駆け寄り、その身体を抱き上げた。
重い。温かい。……まだ、間に合う。
「陛下……今度は、僕があなたを救う番です」
僕は、自分の胸元に集まった黄金の魔力を、惜しみなく彼の胸へと注ぎ込んだ。
僕の魔力は、かつて陛下が僕にしてくれたように、彼の冷え切った魂を優しく、力強く包み込んでいく。
「……ん……っ……」
ヴォルフ陛下の睫毛が、微かに震えた。
その瞬間、僕は世界で一番幸せな涙を流した。
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