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18話
ゼノスとエリュシオンが蜜月の眠りについていたその時、皇宮の地下深く『深淵の間』から、世界を震撼させるほどの負の魔力が噴出した。
旧王国の生き残りである大魔導師――エリュシオンの父に心酔していた狂信者が、帝国の守護石を汚染し、禁忌の召喚術を起動させたのだ。
「……何だ、この禍々しい気配は」
いち早く異変を察知し、跳ね起きたのはゼノスだった。
毒の余波をエリュシオンの魔力で浄化したばかりの彼は、すぐさま剣を取り、隣で眠る銀髪の恋人を揺り起こした。
「エリュシオン、起きろ! 敵の狙いは、帝都そのものを生贄に捧げる邪神の召喚だ!」
地響きと共に皇宮の壁が崩落し、地下からどす黒い霧が溢れ出す。
その霧に触れた兵士たちは一瞬で石化し、帝都の民は阿鼻叫喚の地獄へと突き落とされた。
「……そんな。僕たちが守りたかったこの場所が……」
エリュシオンは窓から見える絶望的な光景に、瞳を揺らした。
地下から噴き出す魔力は、帝国の魔導士総出でも抑えきれないほど膨大で、もはや皇宮の崩壊は時間の問題だった。
「ゼノス、あなただけは逃げて。……僕なら、この力をすべて解放すれば、あの霧を凍らせて封印できるかもしれない」
「何を言っている、エリュシオン! そんなことをすれば、お前の魔力回路は焼き切れ、命を失うことになるんだぞ!」
ゼノスはエリュシオンの肩を強く掴んだ。だが、エリュシオンの表情には、かつての弱々しさは微塵もなかった。
彼はゼノスの頬にそっと手を添え、寂しげに、しかし慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
「地下牢で死を待っていた僕を、あなたは救ってくれた。……今度は僕が、あなたの愛したこの国と、あなた自身を守る番なの」
「ふざけるな! 俺はお前がいない国など、何の価値も感じん! お前を失うくらいなら、世界ごと滅びればいい!」
ゼノスの咆哮が響くが、エリュシオンは静かに首を振った。
彼は宙に浮き上がり、背中から白銀の翼を最大限に広げた。
その神々しさは、もはや人の域を超え、伝説の「氷晶王朝」の神へと回帰していくかのようだった。
「ゼノス、愛してる。……僕のすべてを、あなたに捧げるよ」
「エリュシオンッ!!」
エリュシオンは皇宮の頂点へと飛び立ち、そこから自らの心臓を媒介にして、全魔力を解き放った。
『――永久凍土の監獄(エターナル・プリズン)!』
空が真っ白に染まり、帝都全域を包み込むような巨大な氷のドームが出現した。
地下から溢れ出していた黒い霧、崩落する瓦礫、そして邪悪な召喚陣までもが、一瞬にして美しいクリスタルの中に閉じ込められていく。
民の叫びが止まり、世界は静寂に包まれた。
だが、その対価として、エリュシオンの身体からは光が失われ、その白い身体は重力に従って真っ逆さまに落ちていく。
「エリュシオン!!」
ゼノスは崩れゆく床を蹴り、空中でエリュシオンを抱きとめた。
腕の中の愛しい人は、氷のように冷たく、呼吸さえも止まっていた。
「目を開けろ……エリュシオン! 俺を置いていくな! お前は俺の所有物だろう! 許可なく死ぬことなど許さん……!」
野獣皇帝の叫びが、氷に閉ざされた静寂の街に虚しく響き渡る。
その時、ゼノスの胸に刻まれた『番の紋章』が、消え入るような光を放ち始めた――。
旧王国の生き残りである大魔導師――エリュシオンの父に心酔していた狂信者が、帝国の守護石を汚染し、禁忌の召喚術を起動させたのだ。
「……何だ、この禍々しい気配は」
いち早く異変を察知し、跳ね起きたのはゼノスだった。
毒の余波をエリュシオンの魔力で浄化したばかりの彼は、すぐさま剣を取り、隣で眠る銀髪の恋人を揺り起こした。
「エリュシオン、起きろ! 敵の狙いは、帝都そのものを生贄に捧げる邪神の召喚だ!」
地響きと共に皇宮の壁が崩落し、地下からどす黒い霧が溢れ出す。
その霧に触れた兵士たちは一瞬で石化し、帝都の民は阿鼻叫喚の地獄へと突き落とされた。
「……そんな。僕たちが守りたかったこの場所が……」
エリュシオンは窓から見える絶望的な光景に、瞳を揺らした。
地下から噴き出す魔力は、帝国の魔導士総出でも抑えきれないほど膨大で、もはや皇宮の崩壊は時間の問題だった。
「ゼノス、あなただけは逃げて。……僕なら、この力をすべて解放すれば、あの霧を凍らせて封印できるかもしれない」
「何を言っている、エリュシオン! そんなことをすれば、お前の魔力回路は焼き切れ、命を失うことになるんだぞ!」
ゼノスはエリュシオンの肩を強く掴んだ。だが、エリュシオンの表情には、かつての弱々しさは微塵もなかった。
彼はゼノスの頬にそっと手を添え、寂しげに、しかし慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
「地下牢で死を待っていた僕を、あなたは救ってくれた。……今度は僕が、あなたの愛したこの国と、あなた自身を守る番なの」
「ふざけるな! 俺はお前がいない国など、何の価値も感じん! お前を失うくらいなら、世界ごと滅びればいい!」
ゼノスの咆哮が響くが、エリュシオンは静かに首を振った。
彼は宙に浮き上がり、背中から白銀の翼を最大限に広げた。
その神々しさは、もはや人の域を超え、伝説の「氷晶王朝」の神へと回帰していくかのようだった。
「ゼノス、愛してる。……僕のすべてを、あなたに捧げるよ」
「エリュシオンッ!!」
エリュシオンは皇宮の頂点へと飛び立ち、そこから自らの心臓を媒介にして、全魔力を解き放った。
『――永久凍土の監獄(エターナル・プリズン)!』
空が真っ白に染まり、帝都全域を包み込むような巨大な氷のドームが出現した。
地下から溢れ出していた黒い霧、崩落する瓦礫、そして邪悪な召喚陣までもが、一瞬にして美しいクリスタルの中に閉じ込められていく。
民の叫びが止まり、世界は静寂に包まれた。
だが、その対価として、エリュシオンの身体からは光が失われ、その白い身体は重力に従って真っ逆さまに落ちていく。
「エリュシオン!!」
ゼノスは崩れゆく床を蹴り、空中でエリュシオンを抱きとめた。
腕の中の愛しい人は、氷のように冷たく、呼吸さえも止まっていた。
「目を開けろ……エリュシオン! 俺を置いていくな! お前は俺の所有物だろう! 許可なく死ぬことなど許さん……!」
野獣皇帝の叫びが、氷に閉ざされた静寂の街に虚しく響き渡る。
その時、ゼノスの胸に刻まれた『番の紋章』が、消え入るような光を放ち始めた――。
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