1 / 29
1話
「エルヴィン・ラングリス。君との婚約を破棄させてもらう。……その、薄気味悪い『魔力供給体』という体質も、僕には不快でしかないんだ」
きらびやかな夜会の中心で、元婚約者の第一王子は冷酷に言い放った。
周囲からは失笑と蔑みの視線が突き刺さる。実家の公爵家からも見捨てられ、僕はそのまま、魔物が跋扈(ばっこ)するという国境の森へと放り出された。
(……よっしゃあああああ! 自由だ! 最高だ!)
森の冷たい風に吹かれながら、僕は内心でガッツポーズを決めていた。
あんな傲慢な王子と結婚しなくて済むなら、魔物の餌になった方がマシだ。
僕の『魔力供給体』という体質は、他人に魔力を分け与えるだけの、この国では「歩く魔力タンク」と蔑まれるだけのもの。
でも、ここなら誰にも縛られずに生きていける。
そう思った、矢先だった。
「……なんだ。こんな場所に、極上の『獲物』が落ちているとはな」
背後から響いたのは、地響きのような低く、心地よいバリトンボイス。
振り返ると、そこには漆黒の鎧を纏った、とてつもなく体格の良い男が立っていた。
夜の闇よりも深い黒髪に、燃えるような紅い瞳。
見上げるほどの長身。その男から放たれる圧倒的な威圧感に、僕は息を呑む。
「あんた……誰……?」
「この国の住人ではないな。……香るぞ。お前から、甘い魔力の匂いが」
男――隣国の魔王ゼノスは、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
逃げようとした僕の細い手首を、熱を帯びた大きな掌が容易く掴んだ。
「ひっ……!」
「黙れ。……少し、食わせろ」
抵抗する暇もなかった。
強引に顎を押し上げられ、熱い唇が重なる。
――ん……っ!?
深い口づけと共に、僕の体の中からドロドロとした熱い魔力が吸い出されていく。
今までの王子たちへの供給とは、比べものにならないほど強烈な衝撃。
脳が痺れ、膝の力が抜けていく。
「ふ、あ……、はぁっ……」
ようやく唇が離れたとき、僕はゼノスの腕の中に崩れ落ちていた。
ゼノスは満足げに唇を拭うと、琥珀色の瞳を潤ませる僕を冷たく、だが独占欲を孕んだ目で見下ろした。
「決めた。お前は今日から、俺専用の『食事』だ。魔王城へ連れて行く」
自由を満喫するはずが、どうやらとんでもない「捕食者」に捕まってしまったらしい。
きらびやかな夜会の中心で、元婚約者の第一王子は冷酷に言い放った。
周囲からは失笑と蔑みの視線が突き刺さる。実家の公爵家からも見捨てられ、僕はそのまま、魔物が跋扈(ばっこ)するという国境の森へと放り出された。
(……よっしゃあああああ! 自由だ! 最高だ!)
森の冷たい風に吹かれながら、僕は内心でガッツポーズを決めていた。
あんな傲慢な王子と結婚しなくて済むなら、魔物の餌になった方がマシだ。
僕の『魔力供給体』という体質は、他人に魔力を分け与えるだけの、この国では「歩く魔力タンク」と蔑まれるだけのもの。
でも、ここなら誰にも縛られずに生きていける。
そう思った、矢先だった。
「……なんだ。こんな場所に、極上の『獲物』が落ちているとはな」
背後から響いたのは、地響きのような低く、心地よいバリトンボイス。
振り返ると、そこには漆黒の鎧を纏った、とてつもなく体格の良い男が立っていた。
夜の闇よりも深い黒髪に、燃えるような紅い瞳。
見上げるほどの長身。その男から放たれる圧倒的な威圧感に、僕は息を呑む。
「あんた……誰……?」
「この国の住人ではないな。……香るぞ。お前から、甘い魔力の匂いが」
男――隣国の魔王ゼノスは、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
逃げようとした僕の細い手首を、熱を帯びた大きな掌が容易く掴んだ。
「ひっ……!」
「黙れ。……少し、食わせろ」
抵抗する暇もなかった。
強引に顎を押し上げられ、熱い唇が重なる。
――ん……っ!?
深い口づけと共に、僕の体の中からドロドロとした熱い魔力が吸い出されていく。
今までの王子たちへの供給とは、比べものにならないほど強烈な衝撃。
脳が痺れ、膝の力が抜けていく。
「ふ、あ……、はぁっ……」
ようやく唇が離れたとき、僕はゼノスの腕の中に崩れ落ちていた。
ゼノスは満足げに唇を拭うと、琥珀色の瞳を潤ませる僕を冷たく、だが独占欲を孕んだ目で見下ろした。
「決めた。お前は今日から、俺専用の『食事』だ。魔王城へ連れて行く」
自由を満喫するはずが、どうやらとんでもない「捕食者」に捕まってしまったらしい。
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
妹を侮辱した馬鹿の兄を嫁に貰います
ひづき
BL
妹のべルティシアが馬鹿王子ラグナルに婚約破棄を言い渡された。
フェルベードが怒りを露わにすると、馬鹿王子の兄アンセルが命を持って償うと言う。
「よし。お前が俺に嫁げ」
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
「レジ袋はご利用になりますか?」
すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。
「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。
でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。
天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。