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20話
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魔塔の最上階、白銀と漆黒の魔力が渦巻く中、その瞬間は訪れた。
エリオットの苦しげな吐息が、やがて高い産声へと変わる。
「……っ、は、あ……ヴィクトール、様……!」
「よく頑張ったな、エリオット。……見ろ、私たちの新しい希望だ」
ヴィクトールが震える手で抱き上げたのは、透き通るような銀の髪と、父親譲りの紅い瞳を持つ、宝石のように美しい赤子だった。
魔力の結晶から生まれたその子は、誕生した瞬間に周囲の空間を祝福の光で満たした。
エリオットは、力尽きそうな体で、ヴィクトールが差し出した小さな命を腕に抱いた。
温かくて、ひどく柔らかな感触。
かつて戦場で血に塗れた剣を握っていた手で、今、自分と最愛の人を結ぶ命を抱いている。
「……ああ、なんて……愛おしいんでしょう……」
エリオットの目から、大粒の涙が溢れ出した。
国を追われ、力を失い、誰からも必要とされなくなったあの日。
雨の中で死を待っていた自分に、これほどまでに輝かしい未来が待っているとは想像もしていなかった。
ヴィクトールは、エリオットと赤子の二人を、包み込むように大きな腕で抱きしめた。
その光景は、どんな神話よりも尊く、完成された家族の形だった。
「エリオット。お前に出会うまで、私はこの塔でただ時が過ぎるのを待つだけの、空っぽな怪物だった。お前が、私に『愛』という名の命を与えてくれたんだ」
ヴィクトールはエリオットの額に、そして愛しい我が子の額に、慈しみの接吻を落とした。
「約束しよう。この子が成人するまで、いや、私たちが星に還るその日まで。この魔塔はお前たちのための絶対の聖域であり続ける。……誰一人、お前たちの笑顔を奪うことはさせない」
「はい……。私も、ずっと、あなたの側で……この子と一緒に生きていきます」
エリオットは微笑み、ヴィクトールの胸に深く顔を埋めた。
首元の銀の首輪は、今や支配の道具ではなく、三人の魂を繋ぎ止める永遠の絆へと昇華していた。
魔塔の外では、エリオットを捨てた王国が内乱によって滅びの時を迎えていたが、そんな喧騒は結界の向こう側の出来事に過ぎない。
ここでは、世界で最も孤独だった二人が、世界で最も幸せな家族として、新しい朝を迎えようとしていた。
降り注ぐ朝日の中で、銀色の髪がキラキラと輝く。
不遇の騎士の物語は、ここで一度幕を閉じるが、二人の……いや、三人の幸福な物語は、永遠に続いていくのだ。
(完)
エリオットの苦しげな吐息が、やがて高い産声へと変わる。
「……っ、は、あ……ヴィクトール、様……!」
「よく頑張ったな、エリオット。……見ろ、私たちの新しい希望だ」
ヴィクトールが震える手で抱き上げたのは、透き通るような銀の髪と、父親譲りの紅い瞳を持つ、宝石のように美しい赤子だった。
魔力の結晶から生まれたその子は、誕生した瞬間に周囲の空間を祝福の光で満たした。
エリオットは、力尽きそうな体で、ヴィクトールが差し出した小さな命を腕に抱いた。
温かくて、ひどく柔らかな感触。
かつて戦場で血に塗れた剣を握っていた手で、今、自分と最愛の人を結ぶ命を抱いている。
「……ああ、なんて……愛おしいんでしょう……」
エリオットの目から、大粒の涙が溢れ出した。
国を追われ、力を失い、誰からも必要とされなくなったあの日。
雨の中で死を待っていた自分に、これほどまでに輝かしい未来が待っているとは想像もしていなかった。
ヴィクトールは、エリオットと赤子の二人を、包み込むように大きな腕で抱きしめた。
その光景は、どんな神話よりも尊く、完成された家族の形だった。
「エリオット。お前に出会うまで、私はこの塔でただ時が過ぎるのを待つだけの、空っぽな怪物だった。お前が、私に『愛』という名の命を与えてくれたんだ」
ヴィクトールはエリオットの額に、そして愛しい我が子の額に、慈しみの接吻を落とした。
「約束しよう。この子が成人するまで、いや、私たちが星に還るその日まで。この魔塔はお前たちのための絶対の聖域であり続ける。……誰一人、お前たちの笑顔を奪うことはさせない」
「はい……。私も、ずっと、あなたの側で……この子と一緒に生きていきます」
エリオットは微笑み、ヴィクトールの胸に深く顔を埋めた。
首元の銀の首輪は、今や支配の道具ではなく、三人の魂を繋ぎ止める永遠の絆へと昇華していた。
魔塔の外では、エリオットを捨てた王国が内乱によって滅びの時を迎えていたが、そんな喧騒は結界の向こう側の出来事に過ぎない。
ここでは、世界で最も孤独だった二人が、世界で最も幸せな家族として、新しい朝を迎えようとしていた。
降り注ぐ朝日の中で、銀色の髪がキラキラと輝く。
不遇の騎士の物語は、ここで一度幕を閉じるが、二人の……いや、三人の幸福な物語は、永遠に続いていくのだ。
(完)
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