異世界転生した俺のフェロモンが「全種族共通の特効薬」だった件 ~最強の獣人たちに囲まれて、毎日代わりばんこに可愛がられています~

たら昆布

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7話

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お腹も心も満たされたハルは、抗いようのない睡魔に襲われていた。
視界がとろりと揺れ、座っているソファに吸い込まれそうになる。


「……ハル。無理に起きていなくていい。初日の緊張もあっただろう」


ギルバートの低い声が、子守唄のように鼓膜を優しく震わせる。
彼は自然な動作でハルを横抱きにすると、広々とした天蓋付きのベッドへと運んだ。
シーツからは清潔な太陽の匂いがして、ハルは意識を半分手放しながら、その柔らかさに身を沈めた。


だが、ハルが目を閉じる直前、ベッドの両脇で何やら真剣な相談が始まった。


「団長。ハル様は異世界の人間です。夜中に突然体調を崩したり、寂しくて泣き出したりしたらどうするんですか。護衛が必要です」


「珍しくカイルと意見が合ったな。……ああ、その通りだ。ここは俺が側で付き添おう」


「いえいえ! 団長は体が大きすぎてハル様を潰しちゃいます。機動力のある俺こそが添い寝役にふさわしいです!」


(……なんか、賑やかだなぁ……)


ハルは夢うつつに二人の会話を聞いていたが、やがて視界が淡い光に包まれた。
ギルバートとカイルが、ハルを最も効率よく、かつ温かく守るために「獣の姿」に戻ったのだ。


「あ……もふもふ……」


ハルが手を伸ばすと、右側から黄金のタテガミを持つ巨大なライオン(ギルバート)がゆっくりとベッドに乗り込んできた。
彼はハルの体のラインに沿うように、大きな体を「つ」の字に曲げて横たわる。
左側からは、銀色に輝く毛並みの狼(カイル)が潜り込み、ハルの腕の中に自分の頭をすっぽりと収めた。


右にライオン、左に狼。
ハルは、最高級の毛布を二枚重ねにしたような、圧倒的な重量感と温もりに包まれた。


「……あったかい……」


ハルが寝ぼけながらギルバートのタテガミに指を絡め、カイルの背中を抱き寄せると、左右から同時に「ゴロゴロ」「ふんふん」という幸せそうな鼻息が聞こえてきた。


獣人にとって、これほど濃密に「癒やし香」を堪能できる時間は他にない。
ハルから放たれる微かな熱と甘い香りが、二人の強き獣の理性を完全に眠らせ、ただの甘えん坊な動物へと変えていく。


平和な寝息が三つ、静かな寝室に重なる。
だが、その完璧な「守護の陣」の外側、カーテンの影や天井の梁には、密かにハルを見守る者たちがいた。


(……なんと、無防備な寝顔だ……)


窓の外、月明かりを浴びたテラスの影に佇むのは、カイルと瓜二つの顔を持つ銀狼のフェンだ。
彼はカイルのような快活さを削ぎ落とした、鋭利な刃物のような雰囲気を纏っている。
孤高の隠密として知られる彼は、本来誰にも心を開かない。
だが、昼間に感じたハルの香りが忘れられず、気づけば「影」としてその寝室を監視――もとい、警護していた。


(あんな奴らに囲まれて……。俺の方が、静かに守れるというのに……)


フェンは無意識に、自身の胸元を掻きむしる。
ハルの香りを一嗅ぎした瞬間から、彼の内側にある冷たい孤独が、春の雪解けのように溶け始めていたのだ。


そして、ハルの枕元のフード付きパーカーの中。
もぞもぞと動く小さな塊があった。
魔法省の天才児であり、世界最小の獣人種の一人、モモンガのポポである。


(ハル様、あったかい……。ギルバートたちには、ボクの存在はバレてないもんね……)


ポポは、ハルの首筋から漂う香りに酔いしれながら、そっとその頬に小さな手足で抱きついた。
見た目は愛らしいモモンガだが、その小さな瞳には、誰にも渡したくないという深すぎる愛の炎が宿っている。


さらに、扉の隙間からその様子を静かに、かつ執拗に観察していたのは、侍従長のジークだった。
完璧な所作で知られる黒豹の彼は、手にしたハル用の着替えを強く握りしめている。


「……ハル様。その無防備な寝顔は、あまりにも罪深い……」


スゥ、と鼻から熱いものが垂れるのを感じ、ジークは素早くハンカチで顔を覆った。
彼はクールな仮面の下で、ハルという存在に誰よりも強く「萌え」を抱いていたのだ。


夜は深く、静かに更けていく。
最強の獣人たちに四方八方から見守られ、愛されながら、ハルは異世界で初めての、最高の夜を過ごしていた。
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