異世界転生した俺のフェロモンが「全種族共通の特効薬」だった件 ~最強の獣人たちに囲まれて、毎日代わりばんこに可愛がられています~

たら昆布

文字の大きさ
39 / 61

39話(二部開始)

しおりを挟む
「――ガリア帝国の国王陛下が、倒れられた……?」

ギルバートの重々しい声が、深夜の執務室に響いた。塔でのピクニックから戻り、寝支度を整えていた俺――ハルは、急な呼び出しに目を丸くする。そこには、旅の汚れに塗れたガリアの特使が、必死の面持ちで跪いていた。

「はい……。陛下は魔力回路の暴走による深刻な不眠に陥り、精神が崩壊寸前です。このままでは、国を覆う猛虎の加護が暴走し、ガリアは灰に還りかねません。どうか、癒やしの香を持つハル様のお力添えを……!」

特使の言葉を聞いた瞬間、隣にいたタイガの肩が、びくりと跳ねた。
「……親父が、そんなにか」
低い声には、いつもの快活さがない。彼がガリア帝国の第一王子であることを、改めて突きつけられた気がした。

俺はそっと、タイガの手の上に自分の手を重ねた。
「タイガさん……」
いつも俺のために一生懸命な彼が、こんなに辛そうな顔をしている。放っておくことなんてできなかった。

「ギルバートさん、お願いです。俺をガリアに行かせてください。タイガさんのお父さんを……救いたいんです」

俺が静かに、けれど真っ直ぐに願い出ると、部屋中の空気が凍りついた。

「ダメだ、ハル。隣国への旅はあまりに危険だ。精霊の一件があったばかりだろう」
ギルバートが断固とした口調で遮る。ジークも眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。
「左様です。隣国の情勢は不安定。ハル様をそのような火中に投じるなど、あり得ません」

「でも、タイガさんの大切な家族なんです。俺、みんなに守られてばかりじゃなくて、力になりたいんです。……本当にお願いします」

俺が頭を下げると、ギルバートは苦しげに顔を歪めた。彼は長い沈黙の後、深く溜息をついた。

「……分かった。ただし、護衛は俺たちが選ぶ。一歩たりともお前から離れぬことが条件だ」

――それから三日後。
出発の朝、王宮の門前に現れた「特使団」を見て、俺は思わず足を止めた。

「あの……ギルバートさん。これ、本当にただの旅なんですよね……?」

そこにあったのは、最新の魔導技術を詰め込んだ超巨大な魔導馬車。そして、フル装備の騎士団を率いるギルバート、ジーク、カイル、影に潜むフェン。さらには「僕も行くよ!」と聞かなかったヨシュアまで揃っていた。

「ハル様、移動中の食事も生活環境も、私が完璧に整えてあります。ご安心ください」
ジークが淡々と準備を進め、カイルは馬車の安全を念入りに点検している。

「ハル、ごめんな……。俺の勝手に付き合わせちまって」
タイガが申し訳なさそうに頭を掻く。俺は微笑んで、彼の腕をそっと叩いた。
「気にしないでください。タイガさんの故郷、俺も見てみたいと思ってたんです」

馬車がゆっくりと動き出す。肩の上では、ポポがやる気満々に鳴いた。

「キュイ~!(ボクが道案内してあげるからね! 安心して!)」

こうして、俺と守護者たちによる「癒やしの隣国外交」が幕を開けた。
ガリア帝国まで、波乱と温かな絆に満ちた旅路が始まる――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

塩対応だった旦那様が記憶喪失になった途端溺愛してくるのですが

詩河とんぼ
BL
 貧乏伯爵家の子息であったノアは家を救うことを条件に、援助をしてくれることとなったラインドール公爵家の若気当主のレオンに嫁ぐこととなった。  塩対応で愛人がいるという噂のレオンやノアを嫌う義母の前夫人を見て、ほとんどの使用人たちはノアに嫌がらせをしていた。  そんな中、レオンが階段から転落し、レオンは記憶を失ってしまう。すると――

『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。 チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。 
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。 ……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ? 
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――? 見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。 同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨

【完結】みにくい勇者の子

バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……?     光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。  攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。

強面若頭は、懐っこいナースの献身に抗えない ―極道、はじめての恋を処方される―

たら昆布
BL
ウブで堅物な極道若頭×明るいわんこ系看護師

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

俺の居場所を探して

夜野
BL
 小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。 そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。 そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、 このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。 シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。 遅筆なので不定期に投稿します。 初投稿です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...