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39話(二部開始)
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「――ガリア帝国の国王陛下が、倒れられた……?」
ギルバートの重々しい声が、深夜の執務室に響いた。塔でのピクニックから戻り、寝支度を整えていた俺――ハルは、急な呼び出しに目を丸くする。そこには、旅の汚れに塗れたガリアの特使が、必死の面持ちで跪いていた。
「はい……。陛下は魔力回路の暴走による深刻な不眠に陥り、精神が崩壊寸前です。このままでは、国を覆う猛虎の加護が暴走し、ガリアは灰に還りかねません。どうか、癒やしの香を持つハル様のお力添えを……!」
特使の言葉を聞いた瞬間、隣にいたタイガの肩が、びくりと跳ねた。
「……親父が、そんなにか」
低い声には、いつもの快活さがない。彼がガリア帝国の第一王子であることを、改めて突きつけられた気がした。
俺はそっと、タイガの手の上に自分の手を重ねた。
「タイガさん……」
いつも俺のために一生懸命な彼が、こんなに辛そうな顔をしている。放っておくことなんてできなかった。
「ギルバートさん、お願いです。俺をガリアに行かせてください。タイガさんのお父さんを……救いたいんです」
俺が静かに、けれど真っ直ぐに願い出ると、部屋中の空気が凍りついた。
「ダメだ、ハル。隣国への旅はあまりに危険だ。精霊の一件があったばかりだろう」
ギルバートが断固とした口調で遮る。ジークも眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。
「左様です。隣国の情勢は不安定。ハル様をそのような火中に投じるなど、あり得ません」
「でも、タイガさんの大切な家族なんです。俺、みんなに守られてばかりじゃなくて、力になりたいんです。……本当にお願いします」
俺が頭を下げると、ギルバートは苦しげに顔を歪めた。彼は長い沈黙の後、深く溜息をついた。
「……分かった。ただし、護衛は俺たちが選ぶ。一歩たりともお前から離れぬことが条件だ」
――それから三日後。
出発の朝、王宮の門前に現れた「特使団」を見て、俺は思わず足を止めた。
「あの……ギルバートさん。これ、本当にただの旅なんですよね……?」
そこにあったのは、最新の魔導技術を詰め込んだ超巨大な魔導馬車。そして、フル装備の騎士団を率いるギルバート、ジーク、カイル、影に潜むフェン。さらには「僕も行くよ!」と聞かなかったヨシュアまで揃っていた。
「ハル様、移動中の食事も生活環境も、私が完璧に整えてあります。ご安心ください」
ジークが淡々と準備を進め、カイルは馬車の安全を念入りに点検している。
「ハル、ごめんな……。俺の勝手に付き合わせちまって」
タイガが申し訳なさそうに頭を掻く。俺は微笑んで、彼の腕をそっと叩いた。
「気にしないでください。タイガさんの故郷、俺も見てみたいと思ってたんです」
馬車がゆっくりと動き出す。肩の上では、ポポがやる気満々に鳴いた。
「キュイ~!(ボクが道案内してあげるからね! 安心して!)」
こうして、俺と守護者たちによる「癒やしの隣国外交」が幕を開けた。
ガリア帝国まで、波乱と温かな絆に満ちた旅路が始まる――。
ギルバートの重々しい声が、深夜の執務室に響いた。塔でのピクニックから戻り、寝支度を整えていた俺――ハルは、急な呼び出しに目を丸くする。そこには、旅の汚れに塗れたガリアの特使が、必死の面持ちで跪いていた。
「はい……。陛下は魔力回路の暴走による深刻な不眠に陥り、精神が崩壊寸前です。このままでは、国を覆う猛虎の加護が暴走し、ガリアは灰に還りかねません。どうか、癒やしの香を持つハル様のお力添えを……!」
特使の言葉を聞いた瞬間、隣にいたタイガの肩が、びくりと跳ねた。
「……親父が、そんなにか」
低い声には、いつもの快活さがない。彼がガリア帝国の第一王子であることを、改めて突きつけられた気がした。
俺はそっと、タイガの手の上に自分の手を重ねた。
「タイガさん……」
いつも俺のために一生懸命な彼が、こんなに辛そうな顔をしている。放っておくことなんてできなかった。
「ギルバートさん、お願いです。俺をガリアに行かせてください。タイガさんのお父さんを……救いたいんです」
俺が静かに、けれど真っ直ぐに願い出ると、部屋中の空気が凍りついた。
「ダメだ、ハル。隣国への旅はあまりに危険だ。精霊の一件があったばかりだろう」
ギルバートが断固とした口調で遮る。ジークも眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。
「左様です。隣国の情勢は不安定。ハル様をそのような火中に投じるなど、あり得ません」
「でも、タイガさんの大切な家族なんです。俺、みんなに守られてばかりじゃなくて、力になりたいんです。……本当にお願いします」
俺が頭を下げると、ギルバートは苦しげに顔を歪めた。彼は長い沈黙の後、深く溜息をついた。
「……分かった。ただし、護衛は俺たちが選ぶ。一歩たりともお前から離れぬことが条件だ」
――それから三日後。
出発の朝、王宮の門前に現れた「特使団」を見て、俺は思わず足を止めた。
「あの……ギルバートさん。これ、本当にただの旅なんですよね……?」
そこにあったのは、最新の魔導技術を詰め込んだ超巨大な魔導馬車。そして、フル装備の騎士団を率いるギルバート、ジーク、カイル、影に潜むフェン。さらには「僕も行くよ!」と聞かなかったヨシュアまで揃っていた。
「ハル様、移動中の食事も生活環境も、私が完璧に整えてあります。ご安心ください」
ジークが淡々と準備を進め、カイルは馬車の安全を念入りに点検している。
「ハル、ごめんな……。俺の勝手に付き合わせちまって」
タイガが申し訳なさそうに頭を掻く。俺は微笑んで、彼の腕をそっと叩いた。
「気にしないでください。タイガさんの故郷、俺も見てみたいと思ってたんです」
馬車がゆっくりと動き出す。肩の上では、ポポがやる気満々に鳴いた。
「キュイ~!(ボクが道案内してあげるからね! 安心して!)」
こうして、俺と守護者たちによる「癒やしの隣国外交」が幕を開けた。
ガリア帝国まで、波乱と温かな絆に満ちた旅路が始まる――。
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