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41話
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ガリア帝国の首都、鋼鉄の都。
そこは騎士の国であるギルバートたちの故郷とは異なり、無骨な石造りの建物と、荒々しい獣人たちの熱気が渦巻く場所だった。
「――タイガ第一王子殿下、並びに特使一行のご入城!」
重厚な正門が開かれる。出迎えたのは、ガリアが誇る最強の猛虎重装兵団だった。彼らは本来、他国の者には牙を剥く冷徹な兵たちだが、馬車から降り立ったハルの一歩ごとに、その殺気が霧散していく。
「(……なんだ、この陽だまりのような温かさは……)」
「(これほどまでの浄化の魔力、伝説の聖者様か?)」
ざわめく兵たちの間を、ハルは少し緊張した面持ちで、けれど穏やかに微笑みながら進む。その左右をギルバートとカイルが鉄壁の構えで護衛し、背後からはジークが冷徹な視線で「ハル様に不敬を働く者」をチェックしていた。
「みんな、あまり怖い顔をしないで。……タイガさん、大丈夫?」
ハルが隣を歩くタイガに小声で尋ねる。タイガは、かつて自分が飛び出したはずの城を見上げ、短く息を吐いた。
「……おう。親父の気配が、ここからでも分かる。かなり荒れてやがるな」
案内されたのは、城の最上階にある国王の寝所だった。
扉を開けた瞬間、雷鳴のような咆哮が響き渡る。
「誰も入れるなと言ったはずだ! 俺を……眠らせろ!!」
部屋の中は、暴走した魔力によって家具がなぎ倒され、ベッドの上では巨大な虎の姿をした国王が、苦痛にのた打ち回っていた。不眠による狂気が、国一番の猛者をここまで変えてしまったのだ。
並み居る将軍たちが恐怖で近づけない中、ハルは迷うことなくその嵐の中に足を踏み入れた。
「ハル、危ない!」
ギルバートの手が伸びるが、ハルはそれを制した。
「大丈夫です。……苦しいよね、今、楽にしてあげますから」
ハルが膝をつき、荒れ狂う虎の頭をそっと抱きしめる。その瞬間、ハルの体から溢れ出した「癒やし香」が、部屋中の刺々しい魔力を一気に塗り替えた。
まるで嵐の後に虹がかかるように、猛烈な殺気が穏やかな春風へと変わっていく。
「……あ……ああ……」
国王の瞳から狂気が消え、巨体から力が抜けていく。彼はハルの膝を枕にするようにして、数週間ぶりに深い、深い眠りへと落ちていった。
「嘘だろ……。あの『狂王』状態の陛下を、一瞬で寝かしつけちまったのか?」
「(……なんて優しい魔力だ。俺まで眠くなってきやがった……)」
見守っていたガリアの重臣たちが、次々とその場に膝をつき、感極まったように頭を垂れる。
「キュイッ!(ボクが一番いい枕を教えてあげたからね!)」
ポポが国王の鼻先に乗って誇らしげに鼻を鳴らす。
ガリアの危機を救ったのは、伝説の武器でも強大な魔術でもなく、一人の青年の優しさと、小さな相棒の存在だった。
だが、安堵したのも束の間。眠る国王の髪を優しく撫でるハルを見て、同行していた守護者たちの瞳に「別の火」が灯った。
「(……親父相手とはいえ、ハルの膝枕だと?)」
タイガが顔をひきつらせ、ギルバートとカイルの周囲には、別の意味で物騒な魔力が渦巻き始める。
どうやら国王が目覚める前に、守護者たちの「独占欲」という名の新たな嵐が巻き起こりそうだった。
そこは騎士の国であるギルバートたちの故郷とは異なり、無骨な石造りの建物と、荒々しい獣人たちの熱気が渦巻く場所だった。
「――タイガ第一王子殿下、並びに特使一行のご入城!」
重厚な正門が開かれる。出迎えたのは、ガリアが誇る最強の猛虎重装兵団だった。彼らは本来、他国の者には牙を剥く冷徹な兵たちだが、馬車から降り立ったハルの一歩ごとに、その殺気が霧散していく。
「(……なんだ、この陽だまりのような温かさは……)」
「(これほどまでの浄化の魔力、伝説の聖者様か?)」
ざわめく兵たちの間を、ハルは少し緊張した面持ちで、けれど穏やかに微笑みながら進む。その左右をギルバートとカイルが鉄壁の構えで護衛し、背後からはジークが冷徹な視線で「ハル様に不敬を働く者」をチェックしていた。
「みんな、あまり怖い顔をしないで。……タイガさん、大丈夫?」
ハルが隣を歩くタイガに小声で尋ねる。タイガは、かつて自分が飛び出したはずの城を見上げ、短く息を吐いた。
「……おう。親父の気配が、ここからでも分かる。かなり荒れてやがるな」
案内されたのは、城の最上階にある国王の寝所だった。
扉を開けた瞬間、雷鳴のような咆哮が響き渡る。
「誰も入れるなと言ったはずだ! 俺を……眠らせろ!!」
部屋の中は、暴走した魔力によって家具がなぎ倒され、ベッドの上では巨大な虎の姿をした国王が、苦痛にのた打ち回っていた。不眠による狂気が、国一番の猛者をここまで変えてしまったのだ。
並み居る将軍たちが恐怖で近づけない中、ハルは迷うことなくその嵐の中に足を踏み入れた。
「ハル、危ない!」
ギルバートの手が伸びるが、ハルはそれを制した。
「大丈夫です。……苦しいよね、今、楽にしてあげますから」
ハルが膝をつき、荒れ狂う虎の頭をそっと抱きしめる。その瞬間、ハルの体から溢れ出した「癒やし香」が、部屋中の刺々しい魔力を一気に塗り替えた。
まるで嵐の後に虹がかかるように、猛烈な殺気が穏やかな春風へと変わっていく。
「……あ……ああ……」
国王の瞳から狂気が消え、巨体から力が抜けていく。彼はハルの膝を枕にするようにして、数週間ぶりに深い、深い眠りへと落ちていった。
「嘘だろ……。あの『狂王』状態の陛下を、一瞬で寝かしつけちまったのか?」
「(……なんて優しい魔力だ。俺まで眠くなってきやがった……)」
見守っていたガリアの重臣たちが、次々とその場に膝をつき、感極まったように頭を垂れる。
「キュイッ!(ボクが一番いい枕を教えてあげたからね!)」
ポポが国王の鼻先に乗って誇らしげに鼻を鳴らす。
ガリアの危機を救ったのは、伝説の武器でも強大な魔術でもなく、一人の青年の優しさと、小さな相棒の存在だった。
だが、安堵したのも束の間。眠る国王の髪を優しく撫でるハルを見て、同行していた守護者たちの瞳に「別の火」が灯った。
「(……親父相手とはいえ、ハルの膝枕だと?)」
タイガが顔をひきつらせ、ギルバートとカイルの周囲には、別の意味で物騒な魔力が渦巻き始める。
どうやら国王が目覚める前に、守護者たちの「独占欲」という名の新たな嵐が巻き起こりそうだった。
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